そしてその領収書の束を見つけた若い女性店員は、束をパラパラとめくりながら以前の客に対して切られた領収書のカーボンコピーに目を通していた。店員:「えー、あ、はい、ではお書きします。お宛名書きはいかがいたしましょうか?」 私:「あ、じゃあ『上』でお願いします」 店員:「えっえっ? 『上出(うえで)』さまでよろしかったでしょうか?」 私:「??、は? 何ですか? 上ですよ う・え・」 店員:「は? お名前じゃないのですか? お名前以外はかけませーん」 不安はほぼ的中した。私はこの店員さんには申し訳ないが彼女に当たったことがハズレだったと確信した。そしておそらくこれからもっとややこしくなりそうだなという嫌な予感も湧いてきた。だいたい「宛名書きはいかがいたしましょうか?」と聞いてくること自体、選択の自由度は高いと言う前提になる。それなのに「名前でなくてはならない」と限定するなら「宛名書きのお名前を伺います」と聞かなくてはならない。最初の聞き方からして間違っているのだ。「いかがいたしましょうか?」という曖昧な聞き方をしていながら顧客の回答を取捨選択するのは反則である。