小学校の時に警察で少年柔道をやっていた。中学生の先輩で「体落とし」の切れる人がいた。正月の鏡開きの大会では7~8人抜きをしたと記憶している。しかもわずか1分もたたないうちに相手を体落としでふわりと投げ飛ばすのはとても格好良かった。しかしもっと格好よかったのは顔色一つ変えず事も無げに開始線まで戻ってくるのがゾクゾクしたのである。つまり「そうするように」と柔道のマナーとして教えられていたのであろうが、しかしそれは「このぐらいの相手ではなんともないよ」と暗に段違いの実力を示しているようにも見えたのである。後年、勝ってガッツポーズをして喜びを表に出す人はきっと「ようやく何とか勝った」程度の実力であることを自分で白状しているように見えたのである。この時から自分は相手に対するリスペクトと言う意味よりも、ただ単に「このぐらい別に・・・」という意味で、だまって表情変えずに開始線に戻ってくるのが正しいあり方と思っていた。でもまあ目的は違えてもマナーは間違ってはいないのでましである。