リーマン・ショックの傷もようやく癒えてきたと思ったら、EU欧州連合のギリシャ危機で世界経済は右往左往しています。
そもそも、財政状態にバラツキがある各国が、共通通貨ユーロに参加するために、財政健全化の基準がありましたが、ギリシャはこれを粉飾していたという前科があります。そして今、デフォルト寸前のソブリン危機を引き起こして、世界中を振り回しています。
過去にもデフォルトと言ってもいい債券免除のようなことを何度も引き起こしているらしいですが、そのギリシャの内実が、国民の4人に1人が公務員で、定年後も働いている時と同じくらいの年金をもらえるという公務員天国と聞けば、真面目にEUを支えるドイツなどが面白いはずがありません。
ということで、肝心要のドイツが抵抗したことから、世界の株式相場や為替市場、世界経済まで相当な動揺がありました。しかし、そういう国家ごとの部分最適を考えるだけでは結局、欧州連合のみならず世界経済全体という全体利益を損ない、巡り巡って自分自身の利益を損なうことから、ようやくギリシャ支援の合意がまとまりました。
これで、何とかソブリン危機の沈静化と思っていたら、何と驚いたことに、ギリシャのパパンドレウ首相が、ギリシャ支援策の是非を問う国民投票を実施すると発表し、世界を驚愕と奈落の底に突き落としました。
ギリシャ支援策には、当然のことながら財政健全化を求める公務員削減など、ギリシャにも痛みを求める施策が入っています。支援を受けるのだから当然です。しかし、それを巡って、ギリシャ国内で激しいデモ、暴動が起きているのは、ご承知の通りです。そんなところで国民投票をし、否決され、総選挙などをしていたら、ますます混迷は深まるばかりです。そんなことをしている暇はありません。
「ならず者国家」とは、かつては独裁政権で軍事的脅威を与える国家のことを指しましたが、今では、ギリシャのような小国が全世界を振り回し、新たな経済的「ならず者国家」になりつつあります。自分たちの利益を要求するのもいいですが、その利益が他国の協力の下に成り立っているという自覚を持ち、「ならず者国家」などと言われない矜持を持ってほしいものです。