加賀藩の史実に基づいた「武士の家計簿」は、今を時めく磯田道夫氏の出世作ともいえる著作である。私も買って読んだのだが、中々面白かったが映画の方は見ていない。これも今を時めく俳優・堺雅人をつかって鬼才・故森田芳光が撮って評判となった。
今度はこれも加賀藩の史実による、勘定方ならぬ料理方を取り上げた「武士の献立」が出来上がったらしい。主演の高良健吾は熊本出身だし、女優上戸彩とどう演じるのか興味深い。
加賀藩の料理方と云うと、私は香蘭女子短期大学の橋爪信子氏著の 「料理方秘」について を思い出す。
現在熊本城などでふるまわれている「本丸御膳」等のベースに成っているようだ。一品/\はともかく、あの豪華なお料理を殿様が毎日食べておられたかのような取り扱いは噴飯ものである。細川家の食事の質素さは色々な史料でうかがい知ることが出来る。
この「料理方秘」の所在は何故か東京都立中央図書館の加賀文庫である。享和三年に「御料理頭村中乙右衛門」が秘かに書写したものとある。
加賀文庫に所蔵されているという事は、加賀藩の御料理の情報も多く取り入れられているのではないか・・・・
熊本市の某ホテルで出されている細川家にちなんだ御料理は、データ―の出所を異にしているらしい。
細川家には「料理仕法書」なるものであり、護貞様の御著「魚雁集」に「宝暦の料理 p216」として紹介されている。
この料理の仕法の儀、御台所、古来より作法にて候、料理の品により、相違の儀もこれあり候を、
宝暦年中、佐藤嘉大夫・江藤武助両人へ承るただし記し置き候。この余の繁多これを略し候、後
年に至り批判これあるまじき也
天明四甲辰年閏正月
御著によると料理の数は201に及ぶという。橋爪氏はどうやらこの資料の存在をご存知ではなかったらしく、まったくこれには触れられていない。
「料理仕法書」を読んでみたいと思うのだが、所在がよく判らない。
「武士の献立」は加賀前田藩の料理人・舟木伝内包早による「ちから草」による脚本と思われる。 加賀藩料理人舟木伝内編著集 という本が出ている。

料理人の世界がどのようなものであったのか、興味深い。