処分しようと古い大学ノートをめくっていたら、下の歌が書かれてあった。なんで又という思いがある。
かにかくに渋谷村は恋しかり おもいでの山おもいでの川 啄木
石川啄木の「一握の砂」にある有名な句、中学時代「かにかく」つて何?と思いながらも諳んじていた。この歌が好きだという友達の影響を受けている。
内容的にはなんでもない望郷の歌のように思えるが、とにかく「かにかく」が効いている。意味は「あれこれと。何かにつけて。」
「かにかく」といえば、京都祇園を愛してやまなかった吉井勇を偲んで、京都では「かにかく祭」なるものが催されるそうだが、勇の句碑に舞妓さんがお詣りするのだそうな。
それこそ一昨日のブログ「徒然なかはなし」にあった「だらりの帯の家紋」の舞妓さんたちが沢山集われたのだろう。京都の文化は豊かで羨ましい。
かにかくに祇園は恋し寝る時も 枕の下を水の流るる 勇
こちらの「かにかく」は啄木とは随分様子を異にしている。啄木は苦学生、勇は華族さま、しかし二人は同時代の人で啄木が命尽きる迄のわずかな時期、大変親しかったという。
また、勇が通ったという「喫茶ソワレ」には、店先に彼の歌が表示されているそうだ。
珈琲の香にむせびたるゆうべより 夢みるひととなりにけらしな 勇
これはもう10年以上前、ご厚誼いただいていたがお会いした事のないY氏が奥様と京都を旅し「ここを訪ねてひと時を過ごしてきました」とメールをいただき、そのことを知った。
良いご趣味だ。某藩主家の御一族だと御見受けした。
10年前のニュースだから確認してみると、まだ営業を続けて居られるらしい。文学趣味の方で大賑わいのお店らしい。