南アフリカ出身のピアニスト、ベキ・ムセレクが2008年に亡くなったと知ったのは、没後1年くらい経ってのことだった。デビューの頃は「スイングジャーナル」誌などで持て囃しておきながら、ずいぶん冷淡なものだと思った。
『Beauty of Sunrise』(Verve、1995年録音)も、すでに日本盤は出なくなってからの作品だが、かなり好きな作品だった。
Bheki Mseleku (p, vo)
Graham Haynes (cor, flh)
Ravi Coltrane (ts)
Michael Bowie (b)
Elvin Jones (ds)
with
James Spaulding (fl) <1>
Ralph Peterson (ds) <4,5,8,9>
Daniel Moreno (conga) <4,5,9>
何が素晴らしいかと言うと、まずはエルヴィン・ジョーンズのドラムスである。特に2曲目や3曲目では、独特の、空いたボディにずどどっと入るドラミングに文字通り煽られて、グレアム・ヘインズが受けて立つようにスタイリッシュなコルネットを吹く。そしてムセレクは、普段は多才ゆえサックスなどにも手を出すのだが、ここではピアノに絞り、確実に色を付けていく。
3曲だけ、ラルフ・ピーターソンがエルヴィンに代わって叩く。しかし、人間扇風機は斧を完璧にコントロールするエルヴィンに到底勝てず、如何に勢いがあろうとも、パルスが空しく空中に飛び去っていく(いや、嫌いではないのだが)。
全てムセレクの手による、ちょっとモーダルな感覚があるイケイケの曲も格好良い。
活躍の期間が短かったことが惜しい。