Sightsong

自縄自縛日記

2012年9月、ジャカルタ

2012-10-07 22:10:14 | 東南アジア

ジャカルタは自動車の渋滞がひどく、中心部はビルばかりで歩いている人はあまりいない。ショッピングセンターに入ると東京よりも立派で、ヘンなDVDか文房具でも買おうかというアテがはずれた。つまり散歩していてもあまり楽しくないのであって、必然的にスナップの意欲が薄れていく。

ただ、それは仕事で余裕がなく、真ん中しか知らないからだろうね。

カフェ・バダヴィアは、オランダ植民地時代の古い建物を改装したカフェレストランで、かなりオシャレだ。壁やトイレには古い写真や映画スターのピンナップがぎっしりと飾られている。メニューは柱の写真を外すと裏に書かれているという趣向。

観光客も多い。ひとり座っていた日本人女性(らしき人)は、坂口恭平『独立国家のつくりかた』を読んでいた。近くのテーブルで、英語と日本語をなにやら喋っていて、旅の興がそがれたかもしれない。申し訳ない(が、仕方がない)。

もうちょっと、周辺をうろうろしたかった。


ナシゴレン


壁に写真がぎっしり


観光客


高い天井の下でランチ

※写真はすべて、Pentax LX、FA28mmF2.8、Fuji Pro 400

●参照
2012年7月、インドネシアのN島(1) 漁、マングローブ、シダ
2012年7月、インドネシアのN島(2) 海辺
2012年7月、インドネシアのN島(3) 蟹の幾何学、通過儀礼
2012年7月、インドネシアのN島(4) 豚、干魚、鶏


金芝河のレコード『詩と唄と言葉』

2012-10-07 15:06:17 | 韓国・朝鮮

金芝河(キム・ジハ)が自らの詩を吹き込んだEPレコード、『詩と唄と言葉』が、手元にある。

A面では、かつて農村から身を売られていく女性を唄った「ソウルへの道」と、閉塞した想いや鬱屈した火花を唄ったのだろう「うつろな山」が、韓国語によって朗読されている。大江健三郎は、この「ソウルへの道」をそらんじていたという。

そしてB面には、死刑判決後、1975年に一時釈放されたときの日本人記者との対談が収録されている。

金芝河は、1961年に朴正熙政権が登場して以来、政権批判を行っていた。朴政権の弾圧は苛烈なもので、獄中生活は7年にも及んだ。その罪状は、このレコードでも述べられているように、「共産主義」だと決めつけられたことによった。当時の韓国では、「アカ」とされることは死を意味していたことを、多くの人が報告している。

このレコードがいま何の意味を持つのか。歴史を知ること、それは当然だ。それともうひとつ、人間活動としての政治という問題である。状況が異なるとはいえ、日本において、アートと政治とが手を結ぶことを邪道だとみなす底の浅さをも撃つものではないか。もちろんそれは、文学にはとどまらない。(安世鴻写真展をめぐるニコンサロン問題はその典型だ。)

「金芝河さんが行われている活動は、文学者としての活動なのか、政治的な活動なのか、その点を。」
「(略)私はこれに対して決定的な回答を得たように思います。監獄が私を助けた。
 この点で私は、朴正熙氏に感謝します。
 (略)
 私にとって政治と芸術とは折衷ではなく、始めから同じ問題であります。」

●参照
徐京植『ディアスポラ紀行』
T・K生『韓国からの通信』、川本博康『今こそ自由を!金大中氏らを救おう』
四方田犬彦『ソウルの風景』
金浩鎮『韓国歴代大統領とリーダーシップ』
安世鴻『重重 中国に残された朝鮮人元日本軍「慰安婦」の女性たち』
安世鴻『重重 中国に残された朝鮮人元日本軍「慰安婦」の女性たち』第2弾、安世鴻×鄭南求×李康澤
新藤健一編『検証・ニコン慰安婦写真展中止事件』


『Interpretations of Monk』

2012-10-07 13:02:38 | アヴァンギャルド・ジャズ

改めて、『Interpretations of Monk』(DIW、1981年録音)を4枚通して聴いてみる。昔から欲しい欲しいと思っていて、昨年だったか、ようやく入手した。

Muhal Richard Abrams (p) <1>
Barry Harris (p) <2>
Anthony Davis (p) <3>
Mal Waldron (p) <4>
Don Cherry (tp)
Steve Lacy (ss)
Charlie Rouse (ts)
Roswell Rudd (tb)
Richard Davis (b)
Ed Blackwell (ds) <1, 2>
Ben Riley (ds) <3, 4>

これは、セロニアス・モンクが亡くなる前年に、ニューヨークで行われたコンサートを記録した作品である。

コンサートセットによって、モンク役のピアニストを入れ替えるという趣向で、それも、ムハール・リチャード・エイブラムス、バリー・ハリス、アンソニー・デイヴィス、マル・ウォルドロンと錚々たるピアニストばかり。フロントは、モンクの音楽に傾倒していたスティーヴ・レイシードン・チェリー、モンク後期のパートナーだったチャーリー・ラウズ、それにラズウェル・ラッドと申し分ない。ベース、ドラムスも好みだ。さらに、アミリ・バラカのポエトリー・リーディングまである。

各ソロイストの良い演奏には、ときどきはっとさせられる。しかし・・・、漫然と流して聴くことくらいしかできないのである。単に長いから、ではない。

要するに、権威を身にまとったジャズフェスティヴァルなのだ。ナット・ヘントフやスタンリー・クラウチなどによる前フリも、権威をさらに上塗りしている。企画ではなく、一騎当千の音楽家それぞれが思いを持って集まってそれを形にしていたなら、どんなによかっただろう。

とは言っても、今後も聴き続けるのではあるが。

●参照
ローラン・ド・ウィルド『セロニアス・モンク』
『失望』のモンク集
セロニアス・モンクの切手
ジョニー・グリフィンへのあこがれ
『セロニアス・モンク ストレート、ノー・チェイサー』
ジョルジォ・ガスリーニ『Gaslini Plays Monk』


張芸謀『HERO』、『紅夢』

2012-10-07 00:19:13 | 中国・台湾

張芸謀(チャン・イーモウ)の作品を2本続けて観た。『HERO』は中古500円コーナーにあった。また、『紅夢』は数年前に中国のどこかで20元くらい(約250円)で買ってそのまま積んでいた。

■ 『HERO』(2002年)

ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイーという豪華俳優陣にまずは圧倒されるが、ワイヤーアクションの面白さにも目が釘付けになる。決闘シーンはやや不自然なのだが(ウルトラマンのように刀を持って飛んでいく)、何しろバカバカしくて良い。数千本もの矢が飛んでくる屋敷の前に待ち構えて、マギー・チャンとジェット・リーが凄まじい速度でそれらを叩き落していくなんて最高だ。

彼らは秦王(のちの始皇帝)への刺客であり、何とか近づいて亡き者にしようとする。しかし、戦乱の世を憂い、に中国を統一してもらうために、義侠心から殺すのをやめる。何のことはない、国造り物語だった。

本作が大ヒットしたために同路線の次作『LOVERS』(>> リンク)を撮ったのだろうね。張芸謀がこのようなハッタリ映画に狂っていてはいけない。いやいけないこともなくて面白いのだが、張芸謀のきめ細やかな演出が活きる映画のほうが嬉しい。

■ 『紅夢』(1991年)

主人公(コン・リー)は、富豪の第四夫人として嫁ぐ。そこは古いしきたりにがんじがらめになった牢獄のような家だった。狭い世界の中で、他の夫人や使用人との憎悪と嫉妬が渦巻く。

旧弊を体現するような固定したカメラ、女性だけに特化した視線。初期の張芸謀作品ながら、既に演出の天才ぶりは明らかだ。

ロケは、山西省の平遥(>> リンク)近くにある清時代の旧家で行われている。一度訪れたことがある場所だが、あれがこうなるのかと思うと、また行きたくなってくる。

●参照
張芸謀『初恋のきた道』(1999年)
張芸謀『LOVERS』(2004年)
張芸謀『単騎、千里を走る。』(2006年)
北京五輪開会式(張芸謀+蔡國強)(2008年)
平遥