八代亜紀がついにジャズ・アルバムを出すというので、ひたすら楽しみにしていた。タイトルはなんと『夜のアルバム』(Emarcy、2012年)。そうきたか!
昨日入手し、帰宅してから繰り返し聴いている。もう三回転目だ。
八代亜紀 (vo)
有泉一 (ds)
河上修 (b)
香取良彦 (p, vib)
田辺充邦 (g)
岡淳 (as, ts)
山木秀夫 (ds) <9>
渡辺等 (b) <3>
江草啓太 (p) <12>
布川俊樹 (g) <5>
田ノ岡三郎 (accordion) <6>
木村 "キムチ" 誠 (perc) <4,7,9>
松島啓之 (tp) <8>
織田祐亮 (tp) <12>
藤田淳之介 (as) <12>
石川善男 (fh) <12>
CHIKA STRINGS (strings) <4,9>
小西康陽がプロデュース、編曲、日本語詞の作詞なども手掛けていて、さらにこのサイドメン。真っ当なジャズ作品にしようとの気合が入っている。
これが良いのだ。亜紀ちゃんの、文字通りシルクのようなハスキーヴォイス、ヴィブラート、微妙にシフトする母音、ささやき、含み。何ちゅう声か。さらに、英語と日本語を混ぜてくるなど快感というほかない。
「Fly Me to the Moon」では、後半の日本語詞になった途端、テンションが一段上に上がり、ベースも亜紀ちゃんも乗ってくると同時に、音楽に命が吹き込まれる。「Cry Me a River」は、以前に『一枚のLP盤』に吹き込んでいたが、どうも試行的だった。これは立派。愛の唄「Johnny Guitar」(邦題を「ジョニー・ギター」でなく「ジャニー・ギター」としたところがイイね)は、沁みてくる。「五木の子守唄」と「いそしぎ」をメドレーでつなぐなんて見事。「Summertime」では、香取良彦がピアノからヴァイブにきりかえて、布川俊樹のギターとともに気持ちよく変化をつける。「枯葉」ではアコーディオンが入り、いかにも「ベタ」ではあるが、この世界は全部が「ベタ」だからその気で聴けば良いのだ。
後半になると、突然、ジャズスタンダードから昔の日本の流行歌になる(知らないし)。りりィの「私は泣いています」、松尾和子の「再会」、誰が唄ったのやら「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」や「ただそれだけのこと」。こうなると、もうしっとりとして情も涙も後悔もある場末の夜になってしまい、心がどこかに彷徨い出す。岡淳の歌伴サックスも板についている。
そして最後は、「Over the Rainbow」。
最高。最高の最高。
●参照
○八代亜紀『一枚のLP盤』