エレニ・カラインドルーの曲を演奏したコンサートを収めたDVD、『Elegy of the Uprooting』(ECM、2005年録画)を観る。カラインドルーもピアノで参加している。
曲の大部分は、『霧の中の風景』、『蜂の旅人』、『こうのとり、たちずさんで』、『ユリシーズの瞳』 、『永遠と一日』、『エレニの旅』など、テオ・アンゲロプロスの映画音楽だ。当然ながら、オーボエ、ハープ、アコーディオン、ライアー、フレンチホルンなどの楽器を演奏する様を観ていると、映画音楽としての位置とはまた違ったたのしみがある。深夜ゆえ少しだけ齧って寝ようと思ったのだが、結局、最後まで観てしまった。
それにしても良い曲ばかりである。毎回シャンテにアンゲロプロスの映画を観に足を運んだことを、どうしても思い出してしまう。浮かんでくるのは、ヨーロッパで、寒風に耐えながら、孤独に耐えながら、取り返しのつかない人生を送る人びとの姿だ。ギリシャならではの小さなライアーや、俗を体現するようなアコーディオンがたまらなく響く。
アンゲロプロスの映画にとって、カラインドルーは不可欠な存在だったのだな。ちょうどフェデリコ・フェリーニにとってのニーノ・ロータのように。