Sightsong

自縄自縛日記

ミラン・クンデラ『The Festival of Insignificance(無意味の祝祭)』

2016-03-18 20:52:13 | ヨーロッパ

飛行機の中で読むものがなくなってしまい、ドバイの空港で、ミラン・クンデラ『The Festival of Insignificance』(Faber & Faber、原著2014年)を買った。そのときは未邦訳の新作かなと思っていたのだが、実は、『無意味の祝祭』という題で既に邦訳されていた。わたしは余っていたカタールリヤルを使って、さらに残り20米ドルを払ったのだが、邦訳版は2千円未満。それに、もともとフランス語であるから、英訳版を読むことの意味はまるでない。まあ、買ったものは仕方がないし、「無意味」と題されていることでもあるから、だらだらと読んだ。

人生に幻滅する男たち。『不滅』(1990年)がそうであった以上に、読む者をひらりひらりとかわし続ける対話と思索である。

道ですれ違う女の子たちはヘソを出している。なぜヘソに魅せられるのか。ある男は言う。ほら、女性の胸や尻のあり様はひとりひとり違って、その人の記憶と結びつくだろ。でもヘソはみんな同じようなものだろ。無意味だけどそんなもんだろ。

スターリンは、得意になって自身の考えを披露する。見えるものの背後には何もないんだよ。無意味なんだよ。それでは哲学の意味はどこに?

無意味の意味がなんであろうと、無意味が無意味であろうと有意味であろうと、それが人生。そんな達観なのだろうが、残念ながら今のわたしには余裕がないため、文字通りエクリチュールが脳の表面をつるつるすべっていくだけ。読むタイミングが悪かった。

●参照
ミラン・クンデラ『不滅』(1990年)
ミラン・クンデラ『冗談』(1967年)


守谷美由貴トリオ@新宿ピットイン

2016-03-18 20:07:46 | アヴァンギャルド・ジャズ

多忙と風邪とが重なってしまうという嵐がひとまず過ぎ去り、振休を取って、久しぶりに新宿ピットイン昼の部(2016/3/18)。

Miyuki Moriya 守谷美由貴 (as)
Mamoru Ishida 石田衛 (p)
Sonosuke Imaizumi 今泉総之輔 (ds)
Guest:
Tamaya Honda 本田珠也 (ds)

オーネット・コールマン「Lonely Woman」のアルトソロで静かにはじまり、やがて、力強いブルースも、「Cat Nap」といったしっとりしたバラードも演奏した。テンションの高いときのブロウでは、マウスピースからキュッキュッという音も聴こえてとても快感。うねうねとした長いソロでは多様なフレーズがつぎつぎに繰り出されて、おおっカッコいいと思ったらドラムスの今泉さんも楽しげに反応した表情だったりして。

ベースレスのサックス・トリオのためか、サウンドから錨が取り払われていて、パーカッシブなピアノと、斧で断つような力強いドラムスとが一体となりながら火花を散らし、エキサイティングな演奏だった。今泉さんのドラムスは多彩でもあり、またとくにマレットを使った演奏ではリズムの複雑さが目立ったりしていた。

途中、「Body and Soul」の1曲で、休憩時間にDJをやっていて(デイヴ・ホランドとバール・フィリップスとのデュオなんかをかけていた)、夜の部に出演する本田珠也さんが参加した。最初は手で叩いていたが、やがてスティックを持つと、鞭のようにしなるドラミング。やはり凄い。


チェス・スミス『International Hoohah』

2016-03-18 08:18:36 | アヴァンギャルド・ジャズ

チェス・スミス『International Hoohah』(fortune、2012年)を聴く。

Ches Smith (ds)
Mary Halvorson (g)
Andrea Parkins (accordion)
Tim Berne (as)
Tony Malaby (ts) 

メアリー・ハルヴァーソンの歪みギターとともにはじまり、いきなりエンジン全開。トニー・マラビーの倍音テナーは豊かを通り越して快感であり、ティム・バーンのアルトはじっくりと爪を床に立てて獰猛さを隠しながら進んでいく。それにしても、このふたりがフロントで並んで吹くなんて。

チェス・スミスのドラムスのテンションも常時高い。ヴァーサタイルで、前のめりな感覚でとても力強い。ノリノリになってきて、バーンの背後で猛然と駆けるところがあって、耳が吸い寄せられる。

この個性的な面々のプレイの中で、ふと気が付くと、ハルヴァーソンがそのあたりに浮上している。まるで鋸の鏡面に全員を映して、それをぐにゃりぐにゃりと歪めては戻すようである。

●チェス・スミス
ティム・バーン『You've Been Watching Me』(2014年)
ティム・バーン『Shadow Man』(2013年)

●メアリー・ハルヴァーソン
イングリッド・ラブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
メアリー・ハルヴァーソン『Meltframe』(2014年)
アンソニー・ブラクストン『Ao Vivo Jazz Na Fabrica』(2014年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
『Plymouth』(2014年)
トム・レイニー『Hotel Grief』(2013年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
イングリッド・ラブロック『Zurich Concert』(2011年)
メアリー・ハルヴァーソン『Thumbscrew』(2013年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ステファン・クランプ+メアリー・ハルヴァーソン『Super Eight』(2011年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
アンソニー・ブラクストン『Trio (Victoriaville) 2007』、『Quartet (Mestre) 2008』(2007、08年)

●ティム・バーン
イングリッド・ラブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafe(2015年)
イングリッド・ラブロック『ubatuba』(2014年)
ティム・バーン『You've Been Watching Me』(2014年)
ティム・バーン『Shadow Man』(2013年)
ティム・バーン『Electric and Acoustic Hard Cell Live』(2004年)

●トニー・マラビー
アイヴィン・オプスヴィーク Overseas@Seeds(2015年)
ハリス・アイゼンスタット『Old Growth Forest』(2015年)
ジェシ・スタッケン『Helleborus』(2014年)
クリス・ライトキャップ『Epicenter』(2013年)
トニー・マラビー『Scorpion Eater』、ユメール+キューン+マラビー『Full Contact』(2013、08年)
トニー・マラビー『Adobe』、『Somos Agua』(2003、13年)
リチャード・ボネ+トニー・マラビー+アントニン・レイヨン+トム・レイニー『Warrior』(2013年)
アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas IV』(2011年)
ポール・モチアンのトリオ(2009年)
ダニエル・ユメール+トニー・マラビー+ブルーノ・シュヴィヨン『pas de dense』(2009年)
トニー・マラビー『Paloma Recio』(2008年)
アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas III』(2007年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』(2007年)