2年前に観た土田ヒロミさんの写真展『フクシマ2』では、原発事故の被災地である福島を撮った写真のスライドショーとともに、東北の民謡が流されていた。妙に強い印象があって、あとで調べてみると、福島県民謡「相馬二遍返し」であり、美鵬成る駒という唄者の声なのだった。
最近、この音楽でピアノを弾き、和声付けを行っている中村力哉さんから、ライヴとCDのご案内をいただいた。ちょうど繁忙期で時間がまったく捻出できずライヴには行けなかったのだが、CDは届いてから繰り返し聴いている。ユニット名は「あわいびと」、タイトルは『ひと粒のちから―里景色―』(AWAI Records、2015年)。
まあ、生きていればまた機会だってあるだろう。
美鵬成る駒(唄、和太鼓、三味線)
佐藤錦水(尺八、篠笛、唄囃子)
中村力哉(和声付け、ピアノ、鍵盤ハーモニカ、タブラ、唄囃子)
「和声付け」がこの音楽のひとつの肝である。ご本人の解説によれば、ハーモニー(和声)という要素を持たない単旋律音楽である日本の民謡に、元の姿を壊さないようにして和声を付けていくこと。これによる響きと声の強さとが印象に残った理由だったか。そういえば、沖縄民謡にも、モダンサウンドとのチャンプルーの例がいくつもある。
「相馬二遍返し」はやはり素晴らしい。差し挿まれる囃子の間で、美鵬成る駒が「花は相馬で、実は伊達に」と朗々と唄う。透き通るような「ハァ」という掛け声も、コブシもいい。
他の唄も面白いのだが、とりわけ愉快な「九十九里大漁木遣り唄」(これだけ東北ではなく千葉の民謡)。「ハ、ナンダコリャ」と囃子がいちいち入って吹き出しそうになってしまう。アレンジもサンバ風で愉快。そして「小原庄助さん」で有名な「会津磐梯山」。朝寝朝酒朝湯で身上を潰してはいけません。「ハァモットモダー、モットモダ」と囃されても困る。道楽で身を持ち崩さぬようにせねば。
震災と原発事故から5年。