Sightsong

自縄自縛日記

浦邊雅祥@キッド・アイラック・アート・ホール

2016-03-29 07:09:59 | アヴァンギャルド・ジャズ

明大前のキッド・アイラック・アート・ホールに足を運び、浦邊雅祥のソロを観る。

Masayoshi Urabe 浦邊雅祥 (as, 笛、三線、鎖)

凶悪なる何ごとかを呟きながらパフォーマンスがはじまった。琉球民謡のようなコードで三線(バンコクで手に入れたという)を爪弾くとき、覗いてはならない過去を少しずつ目の前に広げられたような怖ろしさを感じる。その怖ろしさは、鎖と金具が床を叩く音によって増幅される。

ネックから引き抜いたサックスの音色は、擦音から突き刺すような音に変わってゆく。そして肉体は壁抜け男のように丸まった。身体を滅ぼしながら、そのことによって肉体そのものから目を背けることができなくなるのだった(フランシス・ベーコンを想起させる)。

「たっくるせ!」と小さく叫び、またアルトサックスを吹いているとき、さっきまで晴れていたはずの空が嵐となり、窓を叩き始めた。氏は窓を開け、外に飛び出ていく。凄まじいパフォーマンスが呼んだとしか思えない霙と稲光だった。

やがて、また三線を手に取り、「十九の春」をゆっくりと歌い、1時間半をゆうに超えるパフォーマンスが終わった。

浦邊さんは消耗し、寒さに震えていた。雨がやまず、里国隆の話などを伺ったりしていて、そのまま数人で駅前の居酒屋に移動。ちょっと書けないような話もあったりして、もっと居たかったのだが、電車の時間が迫ってきて残念ながら失礼した。『浦邊雅祥ソロ』(1996年)にサインをいただいたところ、ジャケットの裏面に書いてくださったそれは、見事なカリグラフィーのようなものだった。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●参照
直に聴きたいサックス・ソロ、柳川芳命と浦邊雅祥


アーロン・チューライ@新宿ピットイン

2016-03-29 01:16:36 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ピットイン昼の部にて、アーロン・チューライ・トリオを観る(2016/3/28)。かれらのプレイ目的で、そのうちに下北沢のApolloにでも行こうと思っていたから、1,400円はお得。

Aaron Choulai (p)
Hideaki Kanazawa 金澤英明 (b)
Shun Ishiwaka 石若駿 (ds)

アーロン・チューライのピアノは細やかで、何かの幹を中心に組み立てるのではなく、まるで無数の蟻を群れとして動かしているようなイメージを妄想した。時折その中に、異質で独立に動く左手を挿入し、驚かされた(キース・ジャレットの「All The Things You Are」のイントロを聴いたときのような)。

それに対し、石若駿のドラムスのアタックは軽快で、ノッてくると見事な動き。このふたりで俊敏な空中戦を繰り広げているようだった。