明大前のキッド・アイラック・アート・ホールに足を運び、浦邊雅祥のソロを観る。
Masayoshi Urabe 浦邊雅祥 (as, 笛、三線、鎖)
凶悪なる何ごとかを呟きながらパフォーマンスがはじまった。琉球民謡のようなコードで三線(バンコクで手に入れたという)を爪弾くとき、覗いてはならない過去を少しずつ目の前に広げられたような怖ろしさを感じる。その怖ろしさは、鎖と金具が床を叩く音によって増幅される。
ネックから引き抜いたサックスの音色は、擦音から突き刺すような音に変わってゆく。そして肉体は壁抜け男のように丸まった。身体を滅ぼしながら、そのことによって肉体そのものから目を背けることができなくなるのだった(フランシス・ベーコンを想起させる)。
「たっくるせ!」と小さく叫び、またアルトサックスを吹いているとき、さっきまで晴れていたはずの空が嵐となり、窓を叩き始めた。氏は窓を開け、外に飛び出ていく。凄まじいパフォーマンスが呼んだとしか思えない霙と稲光だった。
やがて、また三線を手に取り、「十九の春」をゆっくりと歌い、1時間半をゆうに超えるパフォーマンスが終わった。
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浦邊さんは消耗し、寒さに震えていた。雨がやまず、里国隆の話などを伺ったりしていて、そのまま数人で駅前の居酒屋に移動。ちょっと書けないような話もあったりして、もっと居たかったのだが、電車の時間が迫ってきて残念ながら失礼した。『浦邊雅祥ソロ』(1996年)にサインをいただいたところ、ジャケットの裏面に書いてくださったそれは、見事なカリグラフィーのようなものだった。
Fuji X-E2、XF60mmF2.4