Sightsong

自縄自縛日記

アダム・レーン『Oh Freedom』

2016-03-28 11:31:03 | アヴァンギャルド・ジャズ

アダム・レーン『Oh Freedom』(CIMP、2009年)を聴く。

Adam Lane (b)
Avram Fefer (ts)
Roy Campbell (tp, flh)
Vijay Anderson (ds)

テナーのアヴラム・フィーファーは同じアダム・レーンの『Full Throttle Orchestra』でも吹いていたが、何しろ大編成なのでその音を意識していなかった。あらためて小コンボで聴いてみると、乾いた音色でテナーの臭みもあって、好みである。かれとロイ・キャンベルとが熱気を前面に押し出してくる感じで、「Go Down Moses」や「Cotton Eyed Joe」などのトラディッショナルをひたすらに吹いている。

アダム・レーンのベースが聴きたくて入手した盤なのだが、半分は、カンフーのようにトリッキーに弾きこなしているサウンドを想像していた。実際には、昔からのアメリカの曲をそのように演奏することはしないのだろう。それでもあらゆるところでベースをぶんぶん弾いていて、音楽をかなり力強くドライヴしている。いや、「Oh Freedom」なんて十二分にアクロバティックか・・・。ベースに耳を貼り付けて聴けば気分は列車、馬、大陸。

●参照
アダム・レーン『Full Throttle Orchestra』(2012年)
アダム・レーン『Absolute Horizon』(2010年)
4 Corners『Alive in Lisbon』(2007年)(アダム・レーン参加)


エルマンノ・オルミ『木靴の樹』

2016-03-28 09:28:03 | ヨーロッパ

岩波ホールに足を運び、エルマンノ・オルミ『木靴の樹』(1978年)を観る。

これまでに映画館やヴィデオで何度も観てきた作品なのだが、わたしにとっては、また体験しなければならない特別な映画なのだ。

19世紀末、北イタリアの農村。農民たちは玉蜀黍を収穫し、みんなでその皮を剥いたり、粉にして地主からおカネをもらったり。家畜の鶏や豚をつぶしたり、牛を大事にしたり、牛の蹄の中に拾った金貨を隠したり。15にもなって小さい子供たちと一緒にかくれんぼをして遊ぶ、おねしょが治らない子がいたり。たまに街のお祭りで大騒ぎしたり。みんなを驚かそうと早生のトマトを育ててみたり。

農業収益の3分の2は地主に差し出さなければならず、土地も家畜も地主のもの。生殺与奪の力はただ地主にあった。恋が実り結婚した男女は、舟でミラノまで旅をして、修道院で養子を授かる。育てることで養育費がもらえるからだ。そのような貧しい環境の物語でもあった。

なんということもない風景と物語とが、新鮮な野菜や果物のように感じられる。


渋谷毅@裏窓

2016-03-28 08:52:29 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ゴールデン街の裏窓にて、渋谷毅のピアノソロ(2016/3/27)。

Takeshi Shibuya 渋谷毅 (p)

ゴールデン街だから当然ここも狭いバーで、渋谷さんのソロはいつもすぐ予約で一杯になる。客は10人、そのうち2人が立ち見、2人がバーカウンターの中で立ち見。わたしはというと、ピアノの真横に密着する席。至近距離で渋谷さんの指を視ながら、浅川マキの家にあったピアノから骨伝導のように音が伝わってくるという、これ以上ない条件である。

渋谷さんは、いつもの衒いのない態度で、いつもの曲を弾いた。「いつもの」であってもクリシェにならない、それが渋谷毅の魔術である。進んではゆるりと止まり、また進むピアノ。スムーズに動き、さまざまな和音を発する渋谷さんの指を凝視した。

曲は、「Misterioso」、「In a Sentimental Mood」、「Prelude to a Kiss」、「I Let a Song Go Out of My Heart」といったスタンダード。「Body and Soul」において洒脱に「Traumerei」を混ぜたりもした。そして浅川マキが歌っていた「My Man」。最後は「Lotus Blossom」で締めた、と思いきや、もう1曲「無題」または「Beyond the Flames」。こんな沁みる曲を弾くなんて反則である。

ゴールデン街は外国人観光客で溢れかえっていた。愉快というか不思議というか。

iphone 6s

●参照
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
渋谷毅+津上研太@ディスクユニオン(2011年)
渋谷毅+川端民生『蝶々在中』
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
渋谷毅のソロピアノ2枚
見上げてごらん夜の星を
浅川マキ『Maki Asakawa』
浅川マキの新旧オフィシャル本
『浅川マキがいた頃 東京アンダーグラウンド -bootlegg- 』
『ちょっと長い関係のブルース 君は浅川マキを聴いたか』
浅川マキが亡くなった(2010年)
浅川マキ DARKNESS完結
ハン・ベニンク キヤノン50mm/f1.8(浅川マキとの共演、2002年)
浅川マキ『闇の中に置き去りにして』(1998年)
浅川マキ『アメリカの夜』(1986年)
浅川マキ+渋谷毅『ちょっと長い関係のブルース』(1985年)
浅川マキ『幻の男たち』 1984年の映像
浅川マキ『ふと、或る夜、生き物みたいに歩いているので、演奏家たちのOKをもらった』(1980年)
オルトフォンのカートリッジに交換した(『ふと、或る夜、生き物みたいに歩いているので、演奏者たちのOKをもらった』、1980年)
『恐怖劇場アンバランス』の「夜が明けたら」、浅川マキ(1973年)
宮澤昭『野百合』