ドバイからの帰国便で、原田眞人『日本のいちばん長い日』(2015年)を観る。日本のポツダム宣言受諾、玉音放送、終戦を不満とする陸軍過激派のクーデター未遂を、主に描いている。
昭和天皇およびその取り巻きは、「戦争を止める実権がなかったために、東條たちの軍部による暴走を残念ながら止められなかった」という言説を戦後すぐに流布した。映画でもまさにその通りの描き方であり、実に薄っぺらい人物造形となっている。昭和天皇の最大の懸念と狙いは「國軆」を存続させることにあったわけだが、それが終戦によって可能となるという自信がどこから来るのかについては、まったく触れられていない。
また、もともとは「本土決戦」を主張していたはずの阿南陸相は、まるで、穏健で懐が深く、ただ昭和天皇の意向と「國軆」の護持のために、陸軍を懐柔して抑えおおせた存在として描かれている。
岡本喜八の映画は観ていないのだが、果たしてこのあたりはどうなっているのだろう。本作のようなだらしのないプロパガンダ娯楽映画ではないはずだ。
●参照
横山秀夫『クライマーズ・ハイ』と原田眞人『クライマーズ・ハイ』
豊下楢彦『昭和天皇の戦後日本』
豊下楢彦『昭和天皇・マッカーサー会見』
豊下楢彦『「尖閣問題」とは何か』
原貴美恵『サンフランシスコ平和条約の盲点』
古関彰一『平和憲法の深層』
吉次公介『日米同盟はいかに作られたか』
波多野澄雄『国家と歴史』
『9条を抱きしめて ~元米海兵隊員が語る戦争と平和~』
沖縄「集団自決」問題(16) 沖縄戦・基地・9条
ノーマ・フィールド『天皇の逝く国で』