Sightsong

自縄自縛日記

アンソニー・ブラクストンとテイラー・ホー・バイナムのデュオの映像『Duo (Amherst) 2010』

2016-03-13 13:07:04 | アヴァンギャルド・ジャズ

アンソニー・ブラクストン+テイラー・ホー・バイナム『Duo (Amherst) 2010』(2010年)を観る。

Anthony Braxton (as, sopranino sax, ss, bs)
Taylor Ho Bynum (cor, flh, pocket cor, tb, piccolo tp, bass tp)

45分ほどのデュオを2セット。

ブラクストンは、いつもの微分的なピロピロ音によって、情感を込めることやブルース的なものを追及することをはなから放棄している。次々にサックスを持ち替えては、ヘンな音ばかりを発する。ソプラニーノで「ンギョー」と音にならない音を出したりして、何のためのソプラニーノか。

かたやバイナム。ブラクストンが痙攣しながらバリトンサックスを吹く前で、ロケット花火のような音を連発。ペットボトルの水を朝顔から注ぎ入れて、こぼれないように上を向いて泡立たせる。変態か。

隙間だらけの、隙間しかないような音楽的時空間である。森順治さんと橋本英樹さんとが、このふたりのデュオに触発されて行ったライヴを観て、それは楽しい時間だった(森順治+橋本英樹@Ftarri)。この有り余るほどの自由度の高さゆえかもしれない。

●アンソニー・ブラクストン
アンソニー・ブラクストン『Ao Vivo Jazz Na Fabrica』(2014年)
アンソニー・ブラクストン『Trio (Victoriaville) 2007』、『Quartet (Mestre) 2008』(2007、08年)
ブラクストン、グレイヴス、パーカー『Beyond Quantum』(2008年)
ブラクストン+ブロッツマン+バーグマン『Eight by Three』(1997年)
アンソニー・ブラクストンはピアノを弾いていた(1995年)
映像『Woodstock Jazz Festival '81』(1981年)
ムハール・リチャード・エイブラムス『1-OQA+19』(1977年)
アンソニー・ブラクストン『捧げものとしての4つの作品』(1973年)
デイヴ・ホランド『Conference of the Birds』(1973年)
ジャズ的写真集(2) 中平穂積『JAZZ GIANTS 1961-2002』

●テイラー・ホー・バイナム
アンソニー・ブラクストン『Ao Vivo Jazz Na Fabrica』(2014年)
Book of Three 『Continuum (2012)』(2012年)
アンソニー・ブラクストン『Trio (Victoriaville) 2007』、『Quartet (Mestre) 2008』(2007、08年)


ドレ・ホチェヴァー『Collective Effervescence』

2016-03-13 09:34:40 | アヴァンギャルド・ジャズ

ドレ・ホチェヴァー『Collective Effervescence』(clean feed、2014年)を聴く。

Lester St.Louis (cello)
Bram De Looze (p)
Dre Hocevar (ds)
Chris Pitsiokos (sax)
Philip White (electronics & signal processing)

演奏は静かに、しかし、暴れだそうとする潜在力を禍々しくも誇示しながらはじまる。ドレ・ホチェヴァーのドラムスも、レスター・セント・ルイスのチェロも、フィリップ・ホワイトのエレクトロニクスも、フローとしてのサウンドではなく、表面の棘があちこちを引っ掻き、引っ掛かっては、その刺激をまたサウンドにする。

ここでのクリス・ピッツィオコスのサックスは、小鳥と猛禽との間で変化を続ける。かれのエンジンと精神は驚くべきものである。聴いていて動揺がとどまることなく増幅していく。録音は2014年。この次の年の春に、ニューヨークのShapeshifter Labにおいて「Lester St. Lewis Large Ensemble」でのピッツィオコスの演奏を観たのだったが、既にルイスはこの異物感が突出した化け物と共演し、そのうえで自身のユニークなアンサンブルに呼んでいたということになるわけであり、それはそれで驚きだ。

最後の曲にいたり、我慢のリミッターを棄て去ったかのように各人が飛翔しまくる。タイトル通り、集団即興ならぬ集団沸騰。

●参照
「JazzTokyo」のNY特集(2015/8/30)(クリス・ピッツィオコス)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/7/26)(クリス・ピッツィオコス)
「ニューヨーク、冬の終わりのライヴ日記」(2015年)
スティーヴ・リーマン@Shapeshifter Lab(2015年)(ドレ・ホチェヴァー参加)
クリス・ピッツィオコス@Shapeshifter Lab、Don Pedro(2015年)
クリス・ピッツィオコス『Gordian Twine』(2015年)
ウィーゼル・ウォルター+クリス・ピッツィオコス『Drawn and Quartered』(2014年)
クリス・ピッツィオコス+フィリップ・ホワイト『Paroxysm』(2014年)
クリス・ピッツィオコス『Maximalism』(2013年)