Sightsong

自縄自縛日記

this cat、山田光&ライブラリアンズ@Ftarri

2017-12-03 10:37:55 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarriで、山田光さん主催のライヴ(2017/12/2)。

this cat (vo, synth)
Hikaru Yamada 山田光 (beat, sax)
Kaede Anasako 穴迫楓 (vo)

はじめはthis catによるソロ。打ち込みとキーボードのリズムが意図的にずれを生じてゆき、そこに囁くヴォーカルが乗る。鐘が響くような音色もあり、細野晴臣を思わせるコスミックな感じもあり、それらが朦朧として聴き手を包んでいた。最後に山田光がアルトで暴力的なブロウを入れた。

少々休んで、山田光&ライブラリアンズが1時間の演奏。バンド名は、ライブラリーから多くのサンプリングを行いサウンドを創り上げていくことから来ている。それも何かのコンセプトに沿っていて、たとえばこの日に演奏された「abroad is our backyard」には、「trouble」をキーワードにして、カシン+2、ホセ・ジェイムス、ダラー・ブランド、ピーター・フックの音源がサンプリングされている(あとでアンチョコを貰った)。演奏前にチャールス・ミンガスの「Orange Was The Color...」が聴こえたような気がした。

曲は『the have-not's 2nd savannah band』やその前のアルバムに収録されたものや新曲。穴迫楓がソフトなヴォーカルを聴かせる横で、山田光は、一緒に囁いたり、NumarkやMorgの機器を用いてサンプル音源を自在にコントロールしたり、アルトを吹いたりする。

1曲1曲は短めであり、そのことも相まって、サウンドの沼に沈んでいくのではなく、絶えず躁のなかにある世界が創出されている。楽園的であるということは根を持たないということか、それは、意図的に違うルーツのフラグメンツがサンプリングされているからなのかもしれない。しかし、浮遊するサウンドではなく、ピッチが変えられ歪み、異物がいきなり混入してきたりして、聴く者は油断することを許されない。

アルトも楔のような異物であり、ときに暴力的なそのフレーズと音色はとても面白いものだった。(そんなわけで、「abroad is our backyard」では、録音されたアルトとその場のアルトとがどのように共存するのだろうと思っていたら、失敗で中断されてしまった。)

山田さんは、来年にはヴォーカルなしのビート・アルバムを出すのだという。ちょっと楽しみである。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●山田光
Sloth、ju sei+mmm@Ftarri(2017年)
山田光&ライブラリアンズ『the have-not's 2nd savannah band』(2016年)
『《《》》』(metsu)(2014年)