高橋知己『Lady in Satin』(Aketa's Disk、2011年)を聴く。
Tomoki Takahashi 高橋知己 (ts, ss)
Kazuhide Motooka 元岡一英 (p)
Satoshi Kosugi 小杉敏 (b)
Fumio Watanabe 渡辺文男 (ds)
最近までこの盤のことを知らなかった。ビリー・ホリデイの名盤『Lady in Satin』の収録12曲がすべてプレイされている。思い出してビリーのそれを改めて聴くと、それは涙が出そうに素晴らしいものだが、この再演もまた良い。
尖ったものを求めてばかりいたせいか、高橋知己さんのプレイにしばらく接していなかったのだが、今年のライヴ同様、この盤の音にもやられてしまう。ゆったりとして焦らず、エッジが丸い様は、『In London』や、マット・ウィルソンのリーダー作『As Wave Follows Wave』におけるデューイ・レッドマンの晩年の発酵ぶりを想起させるものがある。「Glad to be Unhappy」なんてグッとくる。
そしてフィーチャーされている渡辺文男もまた、たぶん同じような理由でしばらく聴いていなかった。実に味のあるドラミングなのだ。本田竹広の『Minton Blues』の音が脳裏に蘇ってくる。あれもまぎれもなく渡辺文男の音であったことに、今ころ気づいている。
●高橋知己
本多滋世トリオ@駒澤大学Bar Closed(2017年)
高橋知己『Another Soil』(1980年)
●ビリー・ホリデイ
ビリー・ホリデイ『At Monterey 1958』(1958年)