色々な写真展を見ていて色々な点に感心するが、本展で面白いと思ったのは「動物のいない動物園の情景」という着眼点。泳ぐもののないプール(池)、遊ぶもののなお鎖のブランコ、くつろぐもののない木陰。すべてがパノラマサイズ横位置で撮影され、すべてが好天で鮮やかな発色。それだけに、「生」の気配のない不気味なほどの静けさが際立つ。
ご本人が居たので話を伺ってみた。撮影は好天の日、通常の入園者といっしょに開園時間内。動物が姿を消した瞬間を狙ってフェンス越しに撮るとのこと。うーん、てっきり休園日に撮ってるのだと思った。それくらい、生き物の気配がない。
この作品群で訴えたかったものがあるとすれば何だろう?「主役」のいない舞台の虚しさか、それとも普段は主役の影で目立たない「舞台」の見事さかチープさか。
今後、動物園に行くことがあったらきっと本展を見たことを思い出し、動物が姿を消し人波が切れる瞬間を待ってしまいそうだ。旭山や上野では到底ムリそうではあるけれど。
2011年1月30日 新宿・ニコンサロンにて鑑賞