僕が図書館で借りてくるのはたいてい、ルポルタージュやドキュメント、解説書の類であって、あってもエッセイで小説など久々な気がする。借りたのはたまたま、大石英司と言うシニカルなエッセイが印象に残った人の作品だったからであり、なおかつそれが航空関係を題材としていたからだ。
海上自衛隊のUS-1救難飛行艇が、洋上でYS-11とニアミスするところから話は始まる。なんでこんなところに民航(カラーリングからするに、どうやらTDAもしくはJAS、厳密にはJACのようだ)のYSが…それが、10年前に失踪したYS機が異端の物理学者の予言どおり「タイムスリップ」して羽田に到着し、見守る多くの人々の前から消える激動の3日間の幕開けだった。
パイロットの会話や関係者の用語、作中に出てくる事例など多くが、作者の航空関係の知識の豊富さを示している。読んでいて自然に感じられる。だが著者が書きたかったのは航空業界の10年間ではなく(会話の中に多分に皮肉は込められている)、「還ってきた」乗客たちと「遺族」の再会劇を通じた、家族や親族、肉親との繋がり。何組もの家族の再会の物語が同時進行するので少々読み疲れはするが、家族分だけ再会のドラマもあるということ。
せっかく10年後の世界に戻ってきたのに再び消えてい、今度こそ(行方不明でなく)永遠の別れとなった人々を描いているのに、エンディングは清々しい満足感さえ描かれるのは出来すぎの感もあるけど、歴史が曲げられずに済んで良かったなとも思う。そう思っているとエピローグでもう一捻り。
けっこう厚い文庫本だが、スリリングでスピーディーな展開のため一気に読んでしまった。
2013年7月19日 自宅にて読了
海上自衛隊のUS-1救難飛行艇が、洋上でYS-11とニアミスするところから話は始まる。なんでこんなところに民航(カラーリングからするに、どうやらTDAもしくはJAS、厳密にはJACのようだ)のYSが…それが、10年前に失踪したYS機が異端の物理学者の予言どおり「タイムスリップ」して羽田に到着し、見守る多くの人々の前から消える激動の3日間の幕開けだった。
パイロットの会話や関係者の用語、作中に出てくる事例など多くが、作者の航空関係の知識の豊富さを示している。読んでいて自然に感じられる。だが著者が書きたかったのは航空業界の10年間ではなく(会話の中に多分に皮肉は込められている)、「還ってきた」乗客たちと「遺族」の再会劇を通じた、家族や親族、肉親との繋がり。何組もの家族の再会の物語が同時進行するので少々読み疲れはするが、家族分だけ再会のドラマもあるということ。
せっかく10年後の世界に戻ってきたのに再び消えてい、今度こそ(行方不明でなく)永遠の別れとなった人々を描いているのに、エンディングは清々しい満足感さえ描かれるのは出来すぎの感もあるけど、歴史が曲げられずに済んで良かったなとも思う。そう思っているとエピローグでもう一捻り。
けっこう厚い文庫本だが、スリリングでスピーディーな展開のため一気に読んでしまった。
2013年7月19日 自宅にて読了