【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「エデン」近藤史恵

2010年07月14日 16時17分21秒 | 読書(小説/日本)

まさか続編が出るとは思わなかった。
「エデン」は、「サクリファイス」の続編だ!
表紙を見て分かるとおり、ロードレースを扱っている。
(マイナーな話と思われるかもしれないが、少なくともクライミング・ファンより多い)
自転車に興味がある方はもちろん、一般の方が読んでも充分楽しめるでしょう。

今回の話は、あれから3年後、ツール・ド・フランスを舞台に展開する。
華やかな表舞台とはうらはらに、舞台裏では、スポンサー問題、監督とチームの関係、チーム内の軋轢、フランスで開催しながら、フランス人が活躍しないという現状・・・様々な裏事情を描いている。
主人公の白石は、その中で日本人として、一人の競技者として、どう考え行動するのか?
本作品は読者がツール・ド・フランスに参加しているかのような臨場感で展開する。

いくつか、興味深い文章を下記に引用する。

ヨーロッパにきて、知ったことがある。
こちらでは、自転車はスポーツとしての位置づけしかない。
日本の主婦や中高年のように、自転車を単に移動手段と捉えている人々はほとんどいない。

ロードレースは脚力や持久力だけではなく、回復力を競うスポーツでもある。
毎日二百キロ近く走るのは、どの選手も同じ。だからこそ、夜の間にきちんと体力を回復させた選手だけが勝利をつかむことができる。

マイヨ・ジョーヌ。ツールの総合リーダーが身につける黄色い特別なジャージ。
最終的にパリでそれを着た者が、ツールでの勝者となり、その歴史に名を残すことになる。だが、途中で脱ぐことになっても、たった1日だけでもそれを着れば、選手としての人生は一変する。それぐらい特別なジャージなのだ。

以上、引用終了。
さて、レースはどう展開するのか?
パリでマイヨ・ジョーヌを着るのは誰か?
日本人・白石は、レースでどう活躍するのか?

【ネット上の紹介】
あれから三年―。白石誓は、たった一人の日本人選手として、ツール・ド・フランスの舞台に立っていた。だが、すぐさま彼は、チームの存亡を賭けた駆け引きに巻き込まれ、外からは見えないプロスポーツの深淵を知る。そしてまた惨劇が…。ここは本当に「楽園」なのだろうか?過酷なレースを走り抜けた白石誓が見出した結論とは。

↑前作「サクリファイス」第十回大藪春彦賞を受賞し、第五回本屋大賞の第二位にも選ばれた。

「真夏の島に咲く花は」垣根涼介

2010年07月14日 16時17分01秒 | 読書(小説/日本)

フィジー島で起きたクーデターを背景にした群像劇。
著者は、以前から様々な角度からストーリーを展開する技巧を持っていた。
この作品では、特に顕著で、見事な群像劇となっている。
(群像劇得意なローバート・アルトマン監督「クッキー・フォーチュン」を思い出す)
フィジー島は、もともとイギリス領。
そこにはもともと住んでいた島民がいる。
また、インド人も多数住んでいて、潜在的な対立がある。
さらに、中国人、少数の日本人もいる。

普段、表だって対立することのない人々が、クーデターを背景に人間関係に微妙な変化が現れる。
複雑な経済事情と、微妙な人間関係を巧みに描いている。
しかも、舞台が美しい南の島・・・行ってみたくなった。

【ネット上の紹介】
この島には、今までの人生で知らなかったものが、絶対にある―。2000年のフィジークーデターで人種の違う四人の若者は、何を見つけたのか。日本から両親と移住してきた良昭、ガソリンスタンドで働くフィジアン・チョネ、父のお土産物屋を手伝うインド人・サティー、ワーキング・ビザでフィジーに来た茜。「地上の楽園」を探し始めた男女の青春群像。

「あらしのよるに」シリーズ

2010年07月14日 16時06分46秒 | 読書(絵本)





とても有名な絵本らしい。
でも、私は知らなかった・・・ジムで世間話をしていて、教えてもらった。
連作になっており、全7作+特別編1作。
シリーズの各タイトルは下記のとおり。 
  1. あらしのよるに
  2. あるはれたひに
  3. くものきれまに
  4. きりのなかで
  5. どしゃぶりのひに
  6. ふぶきのあした
  7. まんげつのよるに
  8. 特別編 しろいやみのはてで

内容は簡単に言うと、ヤギと狼の友情物語。
真夜中に二人は出会い、(真っ暗なので)お互いヤギと狼と知らず友達となる。
その後、お互いヤギと狼、と分かる。
お互いの部族に知れるとやっかいなので、「秘密」にしてつきあい出す。
しかし、とうとうバレてしまい、その時二人は・・・。
7巻目「まんげつのよるに」は、いきづまる緊迫感、感涙の最終巻、である。

このような、ヤギと狼という2極対立、シンプルでシンボリックな作品というのは、様々な解釈ができる。
あなたが平和運動家なら、アメリカと中東に例えるかもしれない。
もし、あなたが宗教家なら、キリスト教徒とイスラム教徒に例えるかもしれない。
もし、あなたがマルクスなら、資本家と労働者に例えるかもしれない。
もし、あなたがフロイトなら・・・・。

私の感じ方は、どちらかと言うとフロイト風。
幼年絵本なので、友情の形態をとっているけど、「愛」を描いている。
ヤギと狼でありながら、ほとんどロミオとジュリエット。
(このカップル、コミカルにするとトムとジェリー)
相手に食べられるかもしれない、あるいは逆に、相手を貪り食うかもしれないと言う恐怖を含んだ愛。
(私は純粋に物語を楽しむとともに、隠微な雰囲気も感じた)
子どもたちやお母さん達も、それを感じた、と思う。
21世紀、自由平等な社会になって、(タテマエとして)愛に壁と障害は無くなった。
この作品では、仲間から指弾され、社会からはみ出さざるを得ないくらい大きな障害がある。
ヒットした大きな要因、と思う。

【参考リンク】
きむらゆういち公式ホームページ

PS
以下の文庫版も講談社より出版されている。
文庫版 あらしのよるにI(第1部から第3部までを再編集)
文庫版 あらしのよるにII(第4部と第5部を再編集)
文庫版 あらしのよるにIII(第6部と第7部を再編集)


「少女椿」丸尾末広

2010年07月14日 16時06分23秒 | 読書(小説/日本)

海外での評価が高い漫画家である。
以前から知ってはいたが、読んでみようという気分にはならなかった。
なぜ、今回読む気になったかと言うと、「イタリア家族・風林火山」(ヤマザキマリ)P154の影響。
漫画家になる前のヤマザキマリさんが読んでいた作品が背景として描かれている。
・・・つげ義春、花輪和一、そして丸尾末広「少女椿」。

さて内容だが、とても一般受けするとは思えず、はっきり言ってマニア向けでしょう。
でも、見過ごすことのできない作品でもある。

【マニア向けネタ】(1)
「少女椿」の主人公・みどりちゃんは、『エヴァンゲリオン』ヒロイン綾波レイのキャラクターデザインに影響を与えた、らしい。

【マニア向けネタ】(2)
「ちびまる子ちゃん」のキャラクターの1人「丸尾末男」は、本作品の著者・丸尾末広氏から取られている。
ちなみに、同「ちびまる子ちゃん」のキャラクターの1人「花輪一彦」は、漫画家・花輪和一氏から取られている。
(さくらももこさんは、かなりマニアックな作品が好き、と分かる。普通の少女マンガ家で終わるかどうかは、本人の幅広い嗜好も大きい・・・これが資質・才能でしょうね)

【参考リンク】
丸尾地獄 - 公式サイト