「償い」矢口敦子
評判の高い作品。
なかなかレベルが高い、と感じた。
構成、伏線、共に見事である。
ネットを見ていると、多くの方が共感し、絶賛している。
なるほど、そうであろう、と思える内容。
文章を一部紹介する。(「P250-251)
「冤罪、なんでしょうか。夫はなんの罪も犯していないんでしょうか。罪を犯したけれど、罰する必要はないというんでしょうか。人の肉体を殺したら罰せられるけれど、人の心を殺しても罰せられないんだとしたら、あまりにも不公平です」(中略)
「それは、肉体におよんだ暴力は第三者にも見えるけれど、心におよんだ暴力は第三者には透視できませからね。罰を与えるといっても、裁くための基準にすべきものがない。それに、心に受けた傷はいつか癒えるけれど、肉体を滅ぼされたら二度と蘇らないことを忘れてはいけません」
「心に受けた傷がいつか癒えるなんて、どうして断言できるんです。心だって、致命傷を受ければ、死にます。死んでしまったら、決して蘇りません」(以下略)
いかがでしょうか?
ただ、私は登場人物に感情移入して読むタイプなので、
主人公の医師にも、少年にも感情移入できず、「ずれ」を感じながら読んだ。(どちらもストイックすぎるからだろうか?)
だから、他の方のように、手放しで絶賛はしない。
オビの文句「ごめんなさい!今までこんな面白いミステリを紹介していなくて」・・・これは褒めすぎ、と思う。
PS
なんとなく「モンスター」(浦沢直樹)を思い出しながら読んだ。
【ネット上の紹介】
36歳の医師・日高は子供の病死と妻の自殺で絶望し、ホームレスになった。流れ着いた郊外の街で、社会的弱者を狙った連続殺人事件が起き、日高はある刑事の依頼で「探偵」となる。やがて彼は、かつて自分が命を救った15歳の少年が犯人ではないかと疑い始めるが…。絶望を抱えて生きる二人の魂が救われることはあるのか?感動の長篇ミステリ。