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「絵本遠野物語」勝又進

2011年12月14日 23時34分41秒 | 読書(絵本)


「絵本遠野物語」勝又進

勝又版「遠野物語」。
絵本、となっているが、文字量かなり多い。
勝又進さんは、もともと東北・桃生郡河北町(現・石巻市)の生まれ。
だから、すごく雰囲気をつかんで表現されている。
とても味わい深い作品。
いくつか文章を紹介する。

P22
雪女について
愛媛県のある地方では雪女のことを「ゆきんば」といい、鹿児島では「ゆきばじょ」と呼ぶそうで、暖かい地方に行くにつれて雪女も老け込んでいくらしい。雪女は、雪の結晶のように、寒くなるにつれ美しく成長していくのだろう。


P28
河童について
松崎町宮代の道端に飢饉の碑が建っている。これは1755(宝暦5)年の大凶作で餓死した人々の供養塔で、この時は遠野領内の人口1万9千人のうち、実に1割が失われたという。
凶作の年には間引きが行われ、河童の子どもが生まれたから殺した、ということもあったのだろう。


P34
ヨバヒトにつて
遠野地方に電気が灯る昭和の初めまでは、このような闇の中で夜這いもさかんに行われていたようだ。平安時代の昔、夜ごとに女御、更衣のもとにしのんでいった光源氏のように、村の男たちは土淵の夕顔や附馬牛の末摘花に通っていったものらしい。見習いの褌もちを従え、時には火縄銃で武装して熊や狼の出る山を越え、遠くの村まで出張することもあったそうだ。

P58
天狗について
早池峰山(1914メートル)は北上山地の最高峰で、日本列島が誕生したとき、いち早く海中から姿を現した山だという。
たえず湧き上がる霧の中に、奇妙な形をした巨岩があちこちにうずくまり、霊気をただよわせている。雨風が1億年もの長い歳月、硬い蛇紋岩を刻みつづけ、荒々しい岩肌にやがて神が宿るようになったのだ。この山の峰々を、山菜を主食として肉をそぎ落とした山伏たちが、修行に駆けまわっていたのだろう。麓の早池峰神社から神楽の囃子が聞こえてくると、岩場にハヤチネウスユキソウやナンブトラノオなどが咲きそろい、岩かげでモウセンゴケが羽虫をとらえていたりする。


PS
「RDG」で深行君が、東北の山に登ったと言うのは、たぶん早池峰山のことでしょうね。
機会があれば、私も登りに行ってみたい。(関西から遠いけど)
初冬の早池峰山.jpg
六角牛山石上山と共に「遠野三山」と呼ばれる。
山頂は宮古市、遠野市、花巻市
3つの市の境界となっている。(写真・文章共にウィキペディアより)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A9%E6%B1%A0%E5%B3%B0%E5%B1%B1

【ネット上の紹介】
独自の作風で06年日本漫画家協会賞大賞を得た異色の漫画家が、「おしらさま」「雪女」「ざしきわらし」「河童」「サムトの婆」など14話を選び、遠野につづく北上山地に育った少年期の記憶を核に描き出した、夢と現実の接点に広がる遠野物語のイメージ!物語とあわせ、それを生んだ当時の人びとの心象風景を伝える。