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【寄稿文】カリムノス(ギリシャ) クライミング日記『後編』

2012年01月19日 22時40分14秒 | クライミング(寄稿文)

【寄稿文】カリムノス(ギリシャ) クライミング 日記 『後編』

             京都府勤労者山岳連盟 チームクラマグチ by iida


 1月1日(日)晴れ

今日は,クライミングの最終日。昨日の天気予報は雨だったが,いつも通り宿を出発。真っ黒い雲に覆われているが,雨が落ちてくる様子はない。アップにTaz 6c 。続いてTufantantastic 7b+にトライ。ガバホールドの豪快なルート。次に2日前にRPできなかったSpartacus 7b+へ。同じルートに取り付くのは,このルートが初めて。ポケット部分で,アウト!寂しい敗退。気を取り直し,Priapos 7c へ。どっかぶりのガバルート。中間部が細かかった。40mの壁を1時間あまりかけて登った。

 夜は,いつものレストランへ。ラストデイを楽しく過ごした。このレストランは,安く美味しかった。ギリシャ料理は,最高だった。ビール・ワイン・スープ・肉料理・デザート付き・・・。なんと,6~8ユーロだった。

GRANNDE GROTTA】       
Taz  6c  OS
Tufantantastic 7b+  F
Spartacus 7b+  2回目のトライ ×
Priapos 7c   OS

Priapos
 7c+を登る

1月2日(月)晴れ

 午前6時半,サキスの主人にお願いしておいたタクシーにて港へ。約9キロを15分あまりで到着した。マスティハリまでは5ユーロで大型船に乗車。タクシーでコスタウンへ。町の中には,多くの遺跡がある。ディオニソス神殿・西遺跡・古代劇場を見学後,昼食。お店は,ほとんど閉まっていて観光客の姿はほとんどなかった。          

コス島の港

 アテネ空港到着後,地下鉄に乗り宿泊予定のATHENS BACK PACKERS STUDIOSへ。6人部屋で一人当たり一泊16.5ユーロ。部屋は明るく美しい。バス・トイレを6人で使用するため,少し不便を感じた。

13日(火)晴れ

 アテネ観光のメインは何といっても古代ギリシャの光華を物語るアクロポリス遺跡だ。宿から徒歩10分。高さ10m周囲160mに及ぶ一大芸術作品のパルテノン神殿・古代アンゴラ・・・。感動の連続だった。アクロポリス遺跡や古代アンゴラ見学後,カフェへ。古代への思いをはせながら,お茶を楽しんだ。


パルテノン神殿

 次の目的地は,国立考古学博物館。その途中に山の店があったので入ってみる。クライミング用品は品薄でほとんどない。ウエアーもそろっているが,ノースフェースの商品が日本より少し安い程度だった。ギリシャ全土の遺跡が集められた国立考古学博物館へ。約2時間あまり見学。ギリシャの文化と歴史の偉大さを感じた。夕方,プカラ地区でお土産を購入。生演奏を聴きながら食事を取り宿へ。

 14日(水)晴れ


 昨夜お酒をちょいと飲みすぎたようだ。頭痛とはきけ。二日酔い。友人4人は早朝帰国。僕だけは一日遅い帰国のため,もう一泊しなければならない。10時,もう一軒のクライミングショップへ。フランスでは,テスタロッサが一万円程度ということで期待して訪れるが,靴は販売されていなかった。ギヤ類は,昨日の店より多いものの日本より少し安い程度。重い荷物をあえて持って帰る必要はない。

 昼過ぎ,宿に帰る。食欲なく,仮眠。二日間アテネに宿を取ったのには,理由がある。アテネに立ち寄らず日本に帰国すれば二日間カリムノス滞在が増える。そうしなかったのは,冬のエーゲ海の悪天候だ。風雨が強く船や飛行機が欠航するが多々あるらしい。余裕をもってアテネの空港に行くため,二日間の観光をした。

午後3時,二日酔いも回復し,散歩に出かける。友人が帰国したので,一人ぼっちの散歩,夕食となる。ゼウス神殿から国会議事堂へ。昨年10月のギリシャの財政危機に端を発した大暴動が起こった舞台だ。公共交通機関もゼネスト状態で,ギリシャツワーも危ぶまれたのを,思い出す。幸い,今回のツワーも無事終了したが,町を歩いていてもこの国が財政危機であることは,肌で感じ取ることはできない。ただ,国立考古学博物館のある通りには,浮浪者らしき人たちが多くいて,怪しい物を売買していた。

 その後,リガビストの丘へ。国会から30分の山も登りだった。夕暮れも近いので「行けるところまで行こう。」と思っていたが,17時頃頂上に着いた。丘の頂上からの眺めは最高。アクロポリスが夕日に染まっていた。日が沈むと道に迷いやすく,治安も悪くなるので急いで下山。シンタグマ広場を通ってプラカ地区で夕食にした。1人なので寂しい食事だ。グリークサラダとスープのみ。二日酔いをしたため,アルコールがほしくない。こんな事は,1年に数回しかない。2品でなんと12.5ユーロ。高い。カリムノスでは,飲んで食べてしゃべって,1人8ユーロ以下だったのに・・・。アテネ市内の物価は,日本と変わらない。やや高いかも・・・。 

1月5日(木)晴れ

 朝食を済ませ,散歩へ。チェックアウトが10時30分なので,1時間30分しかない。散歩コースは,アクロポリス一周。とても贅沢な散歩コースだ。でもよく考えてみれば,私も毎朝京都龍安寺の池の周りをジョギングしているので,日々の贅沢に感謝!

 10時30分にチェックアウト。二日間歩き回ったので,もう観光のモチベーションはない。地下鉄乗って空港へ。地下鉄の中での出来事。車内を小学生ぐらいの子どもが二人,トライアングルを鳴らし,何かを訴えながら歩き回っている。座席ごとに数秒間立ち止まって小銭をもらっている。何人もの乗客(一車両6人ほど)がお金を渡している。恵まれない子どもだろうか?学校は休んでいるのだろうか?驚いたのは,5mほど後を母親らしき人が歩いていたことだ。トライアングルの代わりにアコーデイオンを弾く子どもたちもいた。こんな光景は町の中でも良く見かけた。

 12時,空港着。フライトには約6時間ある。ビールを片手にこの記録を書いている。出発ロビーでは,別れを惜しむアテネ人?が熱い抱擁を交わしている。
アテネからドーハを経由して,1月6日午後4時,関空に到着した。 


夕焼けのアクロポリスとアテネの町

カリムノスでのクライミング
岩質は,石灰岩。コルネがたいへん発達していて,立体的なクライミングが楽しめた。冬は気温が低く(最高気温10℃くらい)雨も多いらしい。風が強いので,雨が降っても早く乾く。ただ,風の強さは半端でなく,岩は全体的に潮ぬめりしているエリアもある。宿に近いクランデグロッタなどのエリアは,午後2時を過ぎないと日が当たらないので,寒さに弱いクライマーには,おすすめできない。日の当たるエリアもあるが,遠出をしなければいけない。

 ロープは,80mあったほうが良い。長いルート(40m)がいっぱいあるので,安心して登れる。この時期,クライミングショップは一軒も営業していない。ギア類は,全て日本から持参のこと。島には,バスが走っている。1.5ユーロでカリムノスの港まで行ける。更に, レンタルバイクを使うと,遠くの岩場へ行ける。私たちは短期の滞在のため,遠くの岩場へはタクシーを利用しようと考えていた。岩場のグレードは,日本よりお買い得。

 宿は,サキススタジオを利用した。1日18ユーロ。シャワーのお湯が安定して出れば,申し分ない。

 コス島やアテネの観光もとても有意義だった。この地を訪れるなら,アクロポリスを始めとする,ギリシャの遺跡をぜひ訪れてほしい。

 「ギリシャ料理は,あまりおいしくないよ。」以前にこの地を訪問した人に聞いていたが,私にとっては,ギリシャ料理は美味しかった。野菜も肉料理もヨーグルトチーズなどをからめて食べると最高だった。ただ,魚料理は,エーゲ海に面しているにもかかわらず,非常に乏しかった。


費用
アテネ⇔関空(カタール航空)                  115,490
アテネ⇔コス島               13,190
サキススタジオ 一泊(暖房・お湯・タオル) 18ユーロ
コス空港→マスティハリ          7.5ユーロ
マスティハリ→カリムノス           6ユーロ
カリムノス島内バス            1.5ユーロ
アテネの宿(6人部屋1泊。1人当たり)        16.5ユーロ


1
ユーロ=約100

【寄稿文】カリムノス(ギリシャ) クライミング日記『前編』

2012年01月19日 22時34分45秒 | クライミング(寄稿文)

年末年始、京都のiidaさんがギリシャに行かれた。
そこで、寄稿文をお願いした。
次がその文章である。(読んでいて行きたくなる、そんな気分)
さっそく、読んでみて。

 【寄稿文】カリムノス(ギリシャ) クライミング 日記 『前編』

             京都府勤労者山岳連盟 チームクラマグチ by iida

 

数年前のロクスノに掲載されたエーゲ海をバックにしてのクライミング写真。それは衝撃的だった。登ってみたい!これがカリムノスツワーの原点だった。その後,友人たちが5月と11月にこの地を訪れ,様々な情報を提供してくれた。だが,正月休みにカリムノスに行ったという記録は,インターネットで検索してみても全くなかった。理由は簡単だった。①雨季に入る②気温が低い(最高気温10℃くらい)③岩場に太陽が当たらない(現地で発見)だった。更に,冬のエーゲ海は暴風のため船や飛行機が欠航することが多いらしい。条件が悪く登れないことも覚悟したが,カリムノスの岩峰はそれらを越える魅力があった。

 

2011年1223日(金) 晴れ 

 19時,あわただしく我家を出発。今回は,時間的に余裕があるので,JRを利用した。関西国際空港着,2140分。いよいよギリシャ・カリムノスへ出発だ。エーゲ海の青い海。どこまでも続く石灰岩の岩峰。

 

      1224日(土) 晴れ 

カタールのドーハで友人と合流。アテネ着12時,コス島着1450分。コス島の港は,波が高く,停泊中の船が上下に揺れている。出発まで1時間,レストランに立ち寄りお茶休憩。その後,波が荒い中を,カリムノス島に向け出港。港には,サキスの奥さんが迎えに来てくれていた。買物をしながら,宿泊地のサキススタジオへ。長い旅だった。日本を出発して,約24時だ。

カリムノスの港

   12月25日【日】晴れ


 
8時に出発して,宿から一番近いPOETSの岩場へ。岩の傾斜もなく,雨だれホールドが多い。Quando Tramonta il Sol 6aStyx 6aを登る。午後,PANORAMAへ移動。 Panselionos 6b+とAegean Sea 7A+を登る。 Aegean Sea は,上部の核心であえなくフォール。とても難しく感じた。コルネの洗礼にあい,サキスの宿へ。

【POETS】
Quando Tramonta il Sol 6a   OS

Styx 6a   OS

PANORAMA

Panselionos 6b+   OS
Aegean Sea 7A+  ×

 

 1226日(月) 晴れ


2
日目,GRANDE GROTTA へ。Monahiki Elia 6a  でアップ。長くておもしろい。次に,DNA 7aをトライ。以前のトポでは7a+だったが,新トポでは7aに格下げ。傾斜はあるが,ガバルート。楽しく登らせてもらった。Ivia+へ。このルートも7bから7a+に格下げ。やや細かいが,基本はガバだった。その日は,夕日がとても素敵だった。

 夕方,宿代1人あたり162ユーロを支払う。車のバッテリーを代えたいが,お金がないので早く支払ってくれとのこと。サキスの主人はとてもお喋りだ。チェルノブイリ原発事故の影響で,エーゲ海のサンゴや海綿が打撃的な被害を受けたこと。主人の父親が2000年前の宝を海から引き揚げたことなどを話してくれた。

GRANDE GROTTA
Monahiki Elia 6a   F  
DNA 7a        F

Ivia+         OS

 

GRANDE GROTTAの岩場 

1227日  晴れ

 今日は,レスト日。カリムノス観光と買出し。バスでカリムノスの港方面に行く予定だったが,いつまでたっても来ない。しびれをきらして歩くことにする。マスウリの町を抜け,急な上り坂。ヘェアピンカーブが続く。ジグザグ道路を登りきり,峠を越える頃,サキスの主人が車で通りかかる。大きく手を振ると,止まってくれたが,その車はバッテリーが弱っていたため,エンスト。車を主人の息子と3人で押して,エンジンをかける。車に便乗させてもらって,Chora Castleに到着。Castleの見学。予想していたより,広く高い。戦いが起こると町の人は城に上がり,終了すると町で生活していたらしい。

 見学後,カリムノスの町へ徒歩で行った。日本円をチェンジしようとしたが,セキュリティが厳しく,換金できない。港で博物館を訪問するが,休館日。買物と食事をして,バスでサキスへ。バス代は,1.5ユーロだった。
               

   1228日(水) 晴れ

 
 暖かいところで登りたい。
830分の船に乗り,隣の島TELENDOS ISLAND へ。船に乗っていると,船長から「どこに行きたいのか?」と聞かれる。トポを見せると,「25ユーロ出せば船でいけるよ。」とのこと。時間短縮を考え,お願いすることにした。結果的には,良い判断だった。CRYSTAL CAVE は,取り付きまでが非常に悪路で2級程度の岩登り。緊張の連続だった。Stalas 6bでアップ。

Nectarios 7bにトライした。ハンガーが腐っているうえ岩が非常にもろい。入山者が非常に少ないからだろう。ロングルートで,80mロープでぎりぎりだった。3時下山開始。我々が入山したルートよりやさしいルートを発見。ペンキでマーキングされていた。1時間20分あまりで港へ。アプローチも遠いので,おすすめできるエリアではない。

その後,後発隊とも無事合流。ロストバケッジにて,航空会社とすったもんだあったようだ。荷物が明日届く事を願って,レストランで乾杯!

TELENDOS ISLAND
Stalas 6b   OS
Nectarios 7b  ×

12月29日(木) 曇り

 後発隊の荷物が11時にカリムノス空港に到着するということで,一安心。我々は,一足先にPANORAMAエリアへ。Carpe Dlem 6bNeptum Kl 6cでアップ。Aeolia Extension 7a+ へ。下部フェースがとても細かい。右往左往しながら,右上コルネへ。この部分は快適だ。下部が終わり上部核心へ。コルネに身も心も果てながら終了点へ。

 続いてRastapopoulos  Extension 7b へ。7bになると心してかからねばならない。核心は上部だった。数ヶ所がんばればレストポイントなのだが・・・。パンプした腕を回復させながらの会心のクライミングだった。

 夜は,レストランへ。地元の人の忘年会だろうか?とてもお客さんが多い。日本からの土産,京ちよ紙を取り出し鶴と船を折った。レストランの娘さんがとても喜んでくれ,いつもちよ紙を握ってレストランをうろうろしていた。

 帰りにネットで天気予報を確認。明日は,雨。明後日は,雨の予報だっだ。


PANORAMA
Carpe Dlem 6b OS
Neptum Kl 6c  F
Aeolia Extension 7a+  F
Rastapopoulos  Extension 7b OS

1230日(金) 曇りのち雨

明日は雨予報なので,3連続のクライミングではあるが,登りに行くことにする。新しいエリア,SPARTACSへ。Harakiri 6b+でアップ。気温が上がり,エーゲ海からの潮の影響だろうか,岩がぬめっている。昨日までのコルネ中心のクライミングと変わり,ポケットホールドの連続。ガバポッケを楽しみながら終了点へ。

次に,Spartacus 7b+にトライ。下部コルネは,スムーズに登れたがポケットホールドが連続するころ頃からムーブが悪くなり,あえなくフォール。上部のポケットも難しかった。Kerveros 7aにトライ。核心部は突破したのに・・・上部でフォール。

午後3時頃から雨が降り始める。幸い傘を出すことなく,サキスへ。4時から熱いお湯でシャワーを浴びようと期待して帰ったが,水だった。主人にボイラーのスイッチをいれてもらったが・・・。やはり水だった。そこで,大鍋にお湯を沸かし,頭と顔を洗う。熱いお湯なので一息つける。夕食までにビールとワインで0次会。

夕方,雷雨。夕食後は,豪雨の中を帰宅。靴も服も靴下もびしょぬれ。カリムノスは側溝もなく,道路は滝のように水が流れていた。  

サキスの宿
 

SPARTACS
Harakiri 6b+  F
Spartacus 7b+  ×
Kerveros 7a   ×

1231日(土) 曇りのち雨

夜中に激しく降った雨は,朝には止んでいた。今日はレスト日で,カリムノスの町へ。帰りの船の時刻確認とショッピング。10時のバスに乗り港へ。子どもたちがサンタの帽子を被りレストランなどを回って,大人から小銭をもらっている。お年玉なのだろうか?

海綿をお土産にしょうと,お店に。世界の海綿は,カリムノスが原産らしい。昼食は,近くのレストランへ。魚料理がおいしいらしい。魚のフライと焼き魚・スープ・ワイン。魚のフライはからっとあがっていて,とても美味しい。昼食の途中から雷の音とともに激しい豪雨。近くのスーパーで買物をしながら雨宿り。15時のバスに乗り込むが,道路が水没して通行止め。町は下水の設備がないのだろうか?降った雨は,ほとんど地中にしみ込むことなく町に流れ込む。山には,木や草もほとんどは生えていないので,保水力もほとんどない。一気に流れ下った水は,町のメインストリートへ。30分余りの通行止めも解除され,バスの運転再開。深さ30m余りの水流の中を500mほど走りマスウリの町に帰ってきた。下車時に1.5ユーロ支払うと「迷惑をかけたので運賃はいらないよ。」とのこと。

(以下、『後編』につづく)