「彼女がその名を知らない鳥たち」沼田まほかる
今年の読書は、この作品から始めよう、と思っていた。
期待どおりの「濃度」であった。
前半が恋愛小説、後半がミステリ。
後半から俄然面白くなってくる。
ヒロインが、かつて付き合っていた男性の妻に電話する。
それで、その男性が失踪している、と分かる。
ここからミステリ全開、となる。
なぜ?いつから?
そして、途中から、「もしかして・・・」と答えが頭をよぎる。
「でも、まさか・・・」と否定する。
振り子のように振幅を繰り返し、エンディングへと突入していく。
文章はかなり巧いし、人物造形もすぐれている。
桐野夏生さん、永井するみさんの読者とかぶる部分も多い、と思う。
でも、内容はもっと下世話な感じ。
大阪を舞台に大阪弁で展開するので、余計そう感じてしまう。
「身も蓋も無いやんけ」、と。
著者は人気上昇中。
さらに、他作品も読んでもいいけど、少し私の趣味とずれる。
私は、桐野夏生さんも、永井するみさんも好き。
だけど、そのまま移行して沼田まほかるさんが好きになれるか、と言うと、ちょっと微妙かな。
PS
このエンディング・・・ちょっと納得いかない。
私のように「ひっかかり」を感じる者と、感涙、感極まる方の二極分離が起こる、と思う。
私がひねくれてるだけか?・・・とりあえず、読んでみて。
9割くらいの方が感激する、と思うから。
【参考リンク】
【ネット上の紹介】
八年前に別れた黒崎を忘れられない十和子は、淋しさから十五歳上の男・陣治と暮らし始める。下品で、貧相で、地位もお金もない陣治。彼を激しく嫌悪しながらも離れられない十和子。そんな二人の暮らしを刑事の訪問が脅かす。「黒崎が行方不明だ」と知らされた十和子は、陣治が黒崎を殺したのではないかと疑い始めるが…。衝撃の長編ミステリ。