「光秀の定理」垣根涼介
先日読んだ「室町無頼」が面白かったので、本作を読んでみた。
もともと現代小説を書いていた著者だが、本作が歴史小説第1作目。
こちらも面白かった。
著者は、アウトローを描くのが得意だが、本作でも生き生きと描写される。
兵法者の新九郎、辻博打を行う愚息という僧の2人を通して光秀が描かれる。
他の作家と一味違う歴史小説に仕上がっている。
P224-225
倫理や観念、一時の結果論だけで事象を判断しては、事の本質を見誤る――。
という、次に続いた愚息の言葉だった。
相反する二つの要素。自分にとっての、永遠の課題だ。
情念がなくては行動に移れない。行動がなければ、この時代における男の一生など、何の価値もない。
しかし情念があり過ぎる者、生い立ちから来る倫理観や観念に囚われ過ぎる者には、真の賢さは訪れない。この世を渡っていくことができない。
【ネット上の紹介】
明智光秀はなぜ瞬く間に出世し、信長と相前後して滅びたのか――。厳然たる「定理」が解き明かす、乱世と人間の本質。各界絶賛の全く新しい歴史小説、ここに誕生! 永禄3(1560)年の京。牢人中の明智光秀は、若き兵法者の新九郎、辻博打を行う破戒僧・愚息と運命の出会いを果たす。光秀は幕臣となった後も二人と交流を続ける。やがて織田信長に仕えた光秀は、初陣で長光寺城攻めを命じられた。敵の戦略に焦る中、愚息が得意とした「四つの椀」の博打を思い出すが――。何故、人は必死に生きながらも、滅びゆく者と生き延びる者に分かれるのか。革命的歴史小説、待望の文庫化! 解説・篠田節子