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「死刑の基準」堀川惠子

2017年03月12日 20時04分00秒 | 読書(ノンフィクション)


「死刑の基準 「永山裁判」が遺したもの」堀川惠子

「永山基準」というものがある。
死刑の判断で、スタンダードとなるそうだ。
では、それは何なのか?
永山事件とは、どのような事件か?
膨大な資料と関係者からの取材により、掘り起こしていく。

P242
憎むべき犯人が、死刑になって処刑されることで癒やされる遺族も確かにいるだろう。他方、悲しみの分母に比べるとほんの僅かかもしれないが、犯人の真の更生が、遺族の慰藉に繋がる面もあることは否定できないのではないだろうか。
「犯人に償ってもらいたい」という言葉。その償いの方法は、「死」であるべきなのか、「更生」であるべきなのか――。深く、重い問いかけである。

「永山基準」とは何か?…最高裁判決の以下の部分を指している。
P349
 犯行の罪質、動機、態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性ことに殺害された被害者の数、遺族の被害者感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき……極刑がやむをえないと認められる場合には、死刑の選択も許されるものといわなければならない。

P393
過ちを犯した者を非難することはたやすい。しかし、過ちを犯した者に向き合うことは難しい。その先に、すべての人々を満足させる明確な答えが見つからないからだ。

あとがきより
P396
人は、人を裁けるのか。本書を書きあげた今も、私は明言することを躊躇します。この大きな問いの入り口に、やっと立ったというのが偽らざる実感です。

第32回講談社ノンフィクション賞受賞作。
受賞前は専門書コーナーに置かれて、殆ど売れなかったそうだ。
ところが、受賞後一般の人が手にとって読んでくれるようになった。
講談社ノンフィクション賞の選考委員の方達は、さすがプロである。
膨大な作品群から、埋もれていた宝石を見つけ出したのだ。
著者も文庫本あとがきで次のように書かれている。
――「書く」という世界で私自身が生きていく道を拓いてくれました。
こうして、「教誨師」「原爆供養塔」へと繋がっていくのである。

日本の戦争 BC級戦犯60年目の遺書 

【ネット上の紹介】
「永山基準」として名を留める、十九歳の連続射殺犯・永山則夫。本書は、彼が遺した一万五千通に上る膨大な書簡から、その凄惨な生いたちと、獄中結婚した妻との出会いにより、はじめて「生きたい」と願うようになる心の軌跡を浮かび上がらせる。永山基準の虚構を暴く、圧巻の講談社ノンフィクション賞受賞作。
第1章 生いたちから事件まで
第2章 一審「死刑」
第3章 二審「無期懲役」
第4章 再び、「死刑」
第5章 「永山基準」とは何か