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「RDGレッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴」荻原規子

2017年12月31日 15時19分02秒 | 読書(小説/日本)
 
 


「RDGレッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴」荻原規子

今日は大晦日。
今年最後の紹介は「RDG」で締めくくりたい。
5年ぶりの新刊。
次の4編が収録されている。

影絵芝居 相良深行・中三の初夏
九月の転校生 相良深行・中三の秋
相良くんは忙しい 相良深行・高一の秋
氷の靴 ガラスの靴 宗田真響・高一の冬

短編+中編、ってのが珍しい。
短篇3作、中編1作が収録されているが、このような構成の作品は初めて。
いかに荻原規子作品が長篇ばかりなのか、って思う。
「氷の靴 ガラスの靴」は、ウエブ上で読了済みだけど、
一気に読み返し、とても楽しめた。
短篇では、「九月の転校生」が、特によかった。
高等部になったら、泉水子が転校してくる。
その前に、深行が学園情勢を探っている。
(そんなことをするキャラだったの?と驚く)
既に、それほど泉水子に入れ込んでいたのか、と。
でも、そんなそぶりはおくびにも出さない。
さらに本作では、深行が真響や高柳に初めて出会うシーンがあり、とても重要。
こんなやり取りがあったのか、と感慨深い。

いくつか印象に残った文章を紹介する。

P20
ふと、どうして泉水子は、美沙のような高飛車な女子にならないのだろうと考える。
あれほど大事にされていたら、女王様でもよさそうなものを、みそっかすになって隅でしょんぼりすごしているのは、どういうわけだろう。

P55
「相良くん――だっけ?高柳にかまわないほうがいいよ。そして、高柳がきらいな、この私にもかまわないほうがいい。もしも無事に高等部に進学したいならね。三年二学期転校してくるからには、そのつもりがあるんでしょう?」
「忠告ありがとう。肝に銘じるよ」
(中略)
(あいつら、何かある……)

P242
(オーロラ姫だのシンデレラ姫だの、今回のスケート教室では、妙に昔話のお姫様ばかり引き合いに出されたな……)
 ふと思った。昔話のお姫様たちは、本当に王子様と結婚することを望んだのだろうか。ただ、自分の現状を打開したかっただけではないだろうか。


ちなみに、「シンデレラ 中野京子特別授業 読書の学校」によると、次のように書かれている。
(学術的な解釈では、こうなのか…)
P55
――昔話における「王族」は、特になんらかの説明がない限り、完璧さの象徴です。人は誰しも心の中に各々の王国を持っており、不遇から脱して上昇すること、ないし精神的成長を遂げることが、王や女王になる、ないし王子や王女と結婚する、という形で表現されているのです。


【ネット上の紹介】
宗田真響の視点で描く、「最終巻」その後の物語。冬休み明け、泉水子と深行の関係が強まったことを知った真響は「チーム姫神」として不安を抱く。折しも大がかりなスケート教室が開催されるが、そこに現れたのは真響の従兄弟克巳だった。彼は、自分こそ真響に最もふさわしい相手だと宣言、彼女に手を差し伸べるのだが…!?(他短編三本収録)