「チョンキンマンションのボスは知っている」小川さやか
香港に生きるタンザニア人たちの生活を描いている。
2020年 第51回 大宅壮一ノンフィクション賞受賞
2020年 第8回 河合隼雄学芸賞受賞
P10
世界各地から有象無象の交易人と労働者が中国・香港になだれこみ、模造品や偽物、コピー商品を含む中国製品を買いつけ、コンテナやエアカーゴで母国へ輸出する。(中略)私は、このような21世紀初頭に台頭した国境を超えるインフォーマルな経済の台頭そのものに胸を躍らせてしまったのだ。
P58
タンザニア人の難民認定の理由は様々だ。例えば、性質(たち)の悪い金融業者から多額の借金をしており帰国したら追い込まれる、民族的な小競り合いのある地域の首長の息子であり帰国したら復讐される、妖術師であると冤罪をかけられたが晴らす方法がない等々。
P198
香港の金融街・オフィス街でもある中環は、ビジネスマンや観光客、最先端の若者たちが楽しめる「垢抜けた」「クール」な雰囲気のクラブやバーが多いのに対して、湾仔は、フィリピン人歌手が洋楽のライブ演奏をするクラブやトップレスバーなど「何だか懐かしい」「アットホーム」な雰囲気の遊び場が多い。タンザニア人たちは、純粋に遊びに行くならば、湾仔のほうが圧倒的に好きなようだ。
【閑話休題】
私が香港に行ったのは1997年2月。
これは、「返還」の年。(返還される前に行っておきたかった)
ドラゴン航空に乗るとき、號外をもらったのを思い出す。
『鄧小平逝世』と書かれていて「えっ!」となった。
【ネット上の紹介】
香港のタンザニア人ビジネスマンの生活は、日本の常識から見れば「まさか!」の連続。交易人、難民、裏稼業に勤しむ者も巻きこんだ互助組合、SNSによる独自のシェア経済…。既存の制度にみじんも期待しない人々が見出した、合理的で可能性に満ちた有り様とは。閉塞した日本の状況を打破するヒントに満ちた一冊。
序章 「ボス」との出会い
第1章 チョンキンマンションのタンザニア人たち
第2章 「ついで」が構築するセーフティネット
第3章 ブローカーとしての仕事
第4章 シェアリング経済を支える「TRUST」
第5章 裏切りと助けあいの間で
第6章 愛と友情の秘訣は「金儲け」
最終章 チョンキンマンションのボスは知っている