米原万里さんの「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」(2001年刊)が紹介されている。
(2022年5月25日付朝日新聞夕刊より)
冷戦下の60年代、チェコ・プラハでともに過ごした3人の親友を30年後に訪ねる3編の交遊録からなる。激動の時代を乗り越え、再会を果たした彼女たちは抱擁のあとで何を語ったのか。ロシアのウクライナ侵攻で世界が揺れる今こそ、読み直したい。
文藝春秋・担当者、藤田淑子さんのコメント、
「米原さんが長編を書けることを証明した作品であり、『若草物語』や『赤毛のアン』のように女性に勇気を与える作品」
妹・井上ユリさんのコメント、
「万里らしい視点。アーニャに偽善があったのは事実」と前置きしたうえで、「でも、優しくて私は大好きだった。アーニャ一家はユダヤ人。さまざまな時代を生き延びてきて、国という概念もわたしたちとは違う。万里の視点で一方的に裁いてしまっているように感じて心に引っかかっている部分もある」
「万里が今生きていればプーチン大統領に対してはもちろん、『核保有』や『敵基地攻撃』を肯定する日本国内の声にも強い怒りで反発したと思う。万里の表現方法は独特のレトリック。どんな文章で、どんなたとえ話で怒ったり笑わせたりするかは分からない。それが一番知りたい」
佐藤優さんのコメント、
「3人の友人はルーマニア人、ユーゴスラビア人、ギリシャからの亡命者の娘で、ソ連社会主義の主流からするとマイノリティー。米原さん自身も日本共産党幹部の娘であり、つまりマイノリティーがマイノリティーを見つめた世界なのです」
「米原さんは私の恩人でもあります。(中略)『国家の罠』は米原さんの言葉なしには書けませんでした。作家としての私の生みの親の1人なのです」