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「宗教国家アメリカのふしぎな論理」森本あんり

2018年06月22日 20時29分10秒 | 読書(英・米)

「宗教国家アメリカのふしぎな論理」森本あんり

「富と成功」「反知性主義」、この二つのキーワードを基に、アメリカを読み解いていく。
著者は国際基督教大学(ICU)学務副学長で、神学レベルで初期の伝道形態から掘り起こす。
興味深い内容で面白く感じた。

1872年ジョン・ガスト「アメリカの進歩」。
P112 左隅の薄暗いところに、羽根飾りをつけた先住民の姿が描き込まれています。大股で歩みを進めるアメリカの文明開化の影におびえ、逃げてゆく姿です。「アメリカの原罪」とも言うべき先住民排除の事実が記録されていることに、ご留意ください

ライプニッツ「神義論」
P52
「神義論」とは、善人が苦しみ悪人が栄えることは神の義に反しているのではないか、というテーマを論じるものです。(中略)
アメリカのキリスト教には、このような経験を熟考する歴史的機会がなかったようです。(中略)
ちなみに、「苦難の神義論」の未発達は、イスラムにも共通しています。(中略)
その意味で、アメリカとイスラムは似た者同士であり、両者は共に原理主義の産みの親と言えるかもしれません。

P78
「政教分離」というと、日本では政治から宗教性を脱色して、非宗教的な社会を作ることであるかのように解釈されます。しかしアメリカではまさにその反対です。政教分離は、むしろ宗教的熱情を確保するために定められたのです。つまり、各人が自由に、自分の信ずる宗教を実践するための制度として政教分離があるのです。

トランプ大統領
P99
「聖書は好きな本だ」と言いながら、「では、聖書のどこが好きですか」と記者に尋ねられると、まったく答えられない。新約聖書の引用をしようとして、聖書を読んでいるキリスト教徒なら「コリント第二(second)」というところを、「コリント二つ(two)」と言ってしまう。
 こうした言動を見る限り、彼はとてもキリスト教的な人間とは言えないでしょう。にもかかわらず、得票率を分析すると白人福音派の八割が彼を支持したという結果が出ていました。それはなぜでしょうか。
 その答えが、第1章で挙げた「富と成功」の福音です。

過去にトランプのような大統領はいたのか?
P103
対するアイゼンハワーは、ノルマンディー上陸作戦の指揮をとった名将軍ですが、知的には凡庸、演説も下手、政治経験はゼロです。(中略)
政治的には、トランプに勝るとも劣らぬほどズブの素人だったのです。(中略)
「反知性主義」という言葉は、この1952年の大統領選挙を背景に生まれたものです。

さらにもうひとり
P104
ジャクソンは、西部開拓地の貧しい家の出身です。学校の勉強もろくにせず、本もほとんど読んだことがない。(中略)
ジャクソンは、対立候補の陣営からjackassと呼ばれました。これは「ロバ」という意味ですが、「間抜け」とか「とんま」という侮蔑語としても使われます。そのロバがいまや民主党のキャラクターになっていることは、みなさんもご存じでしょう。

P111
ジャクソンの言動を見ると、トランプ大統領がことあるごとに唱える、反ワシントン、反ウォールストリート、反エスタブリッシュメントといったスローガンとじつによく似ていることがわかるでしょう。

【ネット上の紹介】
なぜ進化論を否定するのか?なぜ「大きな政府」を嫌うのか?なぜポピュリズムに染まるのか?あからさまな軍事覇権主義の背景は?歴史をさかのぼり、かの国に根づいた奇妙な宗教性のありかたを読み解き、トランプ現象やポピュリズム蔓延の背景に鋭く迫る。ニュース解説では決して見えてこない、大国アメリカの深層。これがリベラルアーツの神髄だ!
序 アメリカを解きほぐすカギは宗教にあり
第1章 「富と成功」という福音―アメリカをつらぬく「勝ち組の論理」
第2章 「反知性主義」という伝統―アメリカ史にさぐる「ふしぎな宗教性」の原点1
第3章 何がトランプ政権を生み出したのか―アメリカ史にさぐる「ふしぎな宗教性」の原点2
第4章 ポピュリズムをめぐる三つの「なぜ」―トランプ現象を深層で読む
終章 「正統」とは何か
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