「心淋(うらさび)し川」西條奈加
2020年 第164回 直木賞受賞。
古びた長屋を舞台にした連作時代小説。
次の6編が収録されている。
心淋(うらさび)し川
閨仏
はじめましょ
冬虫夏草
明けぬ里
灰の男
P117
捨子の処遇には、お上が口を出す。あつかいが悪ければ、寺や町内の顔役が咎めを受ける。まず夫婦者であることが条件になるのだが、るいには強い後ろ盾があった。
P156
「子どものためと口にする親ほど、存外、子どものことなぞ考えてないのかもしれないな」
【感想】
西條作品にハズレなし。
今まで、けっこう読んできたが、どれも面白かった。
直木賞受賞は当然、と思う。
今回も面白かった。
もし忙しくて1編しか読めない、というなら「閨仏」を読んでみて。
六兵衛は妾を囲っているが、不美人ばかり。
一つ屋根の下に妾を全員集めてるから、確執も生まれる。
りきはその中のひとり。
あるとき、小刀で仏像を彫りだす。
・・・奥が深く、最後に泣かせる技は見事。
【ネット上の紹介】
不美人な妾ばかりを囲う六兵衛。その一人、先行きに不安を覚えていたりきは、六兵衛が持ち込んだ張形に、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして…(「閨仏」)。飯屋を営む与吾蔵は、根津権現で小さな女の子の唄を耳にする。それは、かつて手酷く捨てた女が口にしていた珍しい唄だった。もしや己の子ではと声をかけるが―(「はじめましょ」)他、全六編。生きる喜びと哀しみが織りなす、渾身の時代小説。第164回直木賞受賞。