「南極風」笹本稜平
森尾正樹は国際ガイド。
ニュージーランドを舞台に活動していた。
不幸な自然条件が重なった中、奇跡の生還を果たすが、保険金殺人の容疑で逮捕される。
冤罪を晴らすことができるのか?
物語は、山と法廷を舞台に交互に展開する。
P111
ニュージーランドは料理に関しては美食とは縁遠いイギリスの系統に属していて、街中で美味い料理に出会う機会にはなかなか恵まれない。(ピューリタンの系統に属する方は、美食は悪徳と思っているのだろうか?オーストラリアもアメリカも、基本、食事は不味い。逆に、カトリック系の国やその旧植民地の料理は美味い。フランス、イタリア、ベトナム…。)
P197-198
自分がつくった目標に向かって必要以上に自分を駆り立ててしまう人々がいる。伊川はそういう几帳面で妥協を嫌うタイプの典型のように思えた。得てして遭難するのはそういう人々なのだ。
P230
「必ずしも動機が解明されなくても、未必の故意は成立すると、湯沢さんは言っていましたが」
「ケースによります。例えば和歌山毒物カレー事件では、動機の解明がないまま未必の故意が認定されました。直接証拠もなければ自白もなかった。死刑判決の出た事件としては異例でした」
P233
「検事というのは、実は大使館経験者が多いんです。大半が中堅の時代に一定期間、一等書記官として赴任するようなケースなんですが、退任した大物検察官が大使や領事として赴任するようなことも珍しくありません」
【ネット上の紹介】
奇跡の生還を果たした英雄から殺人容疑者へ──。ニュージーランドの名峰アスパイアリングに、鎮魂と再生の祈りが谺(こだま)する愛と希望の感動作! ニュージーランドの名峰アスパイアリングで起きた遭難事故が、森尾正樹(もりおまさき)を奈落(ならく)の底に突き落とした。登山ガイドの彼は悪天候のなか瀕死(ひんし)のツアー客を救出し一躍(いちやく)英雄となるが、突如、保険金殺人の容疑で逮捕されたのだ。冤罪(えんざい)を主張するも検察の取り調べはあまりに作為的で──眺望絶佳(ちょうぼうぜっか)な山の表情と圧巻(あっかん)の雪山行、そして決して諦(あきら)めない男の法廷対決を描く愛と奇跡の感動作。
【参考】
笹本稜平作品を読むのは、これで4作目。
実力ある作家、と言うのが私の印象だ。
「春を背負って」笹本稜平
「駐在刑事」笹本稜平
「尾根を渡る風 駐在刑事」笹本稜平