原題:『Alice in den Städten』
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース/ファイト・フォン・フェルステンベルク
撮影:ロビー・ミューラー
出演:リュディガー・フォーグラー/イエラ・ロットレンダー/リザ・クロイツァー
1974年/西ドイツ
テレビと写真
主人公のフィリップ・ヴィンターはドイツの出版社と旅行記を出版する契約を交わしていた。アメリカ東海岸の風景をポラロイド・カメラで撮り続け、旅行記の資料だけは収集していたものの、全く書けていないことを告げると担当編集者は契約を打ち切ってしまった。ニューヨーク市クイーンズ区のフラッシング・メドウズ・コロナ・パークの近くにある「Willets Pt. Shea」駅から、ドイツに戻ろうとして航空に行ったが、ドイツ行きは全便欠航になり、翌朝の午後に出航するアムステルダム行きに乗るために、そこで偶然に知り合った、再婚した夫を残してドイツに帰国しようとしていたリザと9歳の娘のアリスと一緒に一晩ホテルの泊まることになる。
翌朝、リザはメモを残して一人で夫に会いにいったようであるが、約束場所に指定されていたエンパイア・ステート・ビルの展望台には現われず、仕方なくフィリップはアリスを連れて飛行機に乗り、アリスの祖母を探すロードムービーが始まることになる。
『サーカス小屋の芸人 処置なし』(アレクサンダー・クルーゲ監督 1968年)におけるテレビの扱いと正反対に、フィリップは大のテレビ嫌いで、テレビで放送されていた『若き日のリンカーン』(ジョン・フォード監督 1939年)はおとなしく見ていたが、目が覚めて他の番組に変わっていたら癇癪を起こしてホテルのテレビを壊すありさまである。しかしテレビはどこにでも存在し、アリスは好んでテレビを見ている。つまりフィリップにとっては写真は信じられてもテレビは信用出来ないメディアと言えるだろうから、アリスが持っていた写真を頼りに探していたアリスの祖母の家をようやく探し出したものの、外見は写真通りでも、中身の住人が2年前からイタリア人に変わっていたという現実にフィリップはかなりショックを受けたに違いない。アリスの祖母とリザが待つミュンヘンへ向かう列車の中で、自分たちの行く末が分からずに2人で窓から顔を出して外を見つめるフィリップとアリスが印象的である。