MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『リンカーン』

2013-04-20 22:53:43 | goo映画レビュー

原題:『Lincoln』
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:トニー・クシュナー
撮影:ヤヌス・カミンスキー
出演:ダニエル・デイ=ルイス/サリー・フィールド/ジョゼフ・ゴードン=レヴィット
2012年/アメリカ

迫真の演技頼みのストーリー展開

 『リンカーン/秘密の書』(ティムール・ベクマンベトフ監督 2012年)とは別の意味で、驚くべき作風に仕上がっている。1863年11月のリンカーンによって行われたゲティスバーグ演説の「人民の、人民による、人民のための政治」というフレーズは、リンカーン本人ではなく、若い黒人の兵士によって唱えられ、ラストもリンカーンが狙撃されたフォード劇場ではなく、四男のタッドが『アラジンと魔法のランプ』を観賞しているグローヴァー劇場で行われたアナウンスで私たちは知らされ、ドラマ性の部分が排除されている。もちろん冒頭もラストも呆気なくても、その間で感動を得られれば問題ないのであるが、クライマックスのアメリカ合衆国憲法修正第13条を巡る共和党と民主党の攻防は、残り6票の争いになった後に、呆気なく賛成票が6票投じられてしまう。この徹底的に物語の盛り上がりを避ける演出は、リンカーンという人物像にスポットを集中させるという点においては有効であるとしても、エンターテインメントとしてはどうなのかという疑問を払拭することはなかなか難しいように感じる。


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京都府立大の甘い体質

2013-04-20 20:40:38 | Weblog

父「危篤」の知らせで酒気帯び運転の大学職員、事情考慮し「停職」に(産経新聞) - goo ニュース

京都市にある自宅で焼酎約1合を飲んだ後で父親の「危篤」の知らせを受け、病院に向かう

途中、別の車と接触事故を起こし、駆けつけた警察官による検査で呼気から基準を超える

アルコールが検出されたため、道路交通法違反(酒気帯び運転)の疑いで摘発された係長

級の男性職員に対して、京都府立大が事情を考慮して原則として懲戒免職となるところを

今回は停職に留めたという話は、一見すると良さそうに見えるが、職員は入院中の父親の

容体が悪化したため仕事を休んでいたのだから、いつでも駆けつけられるように酒など

飲むべきではなかったはずで、自己管理が徹底されていなかったことは明らかで、寧ろ

原則通りに懲戒免職にするべき事案だと思う。


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洗脳とコーチングの違い

2013-04-19 21:04:45 | Weblog

 

元オセロ中島「ローソンでバイトしたい」(日刊スポーツ) - goo ニュース
中島知子、認知科学者・苫米地英人氏を窓口に - 期間は所属先が決まるまで(マイナビニュース) - goo ニュース

 オウム真理教信者を「脱洗脳」した事でも知られる認知科学者苫米地英人は「中島さんに

対しては『脱洗脳』はしておらず、『コーチング』(人生の目的を達成するための心の使い方

などの指導)をしてきた」と釈明しているようであるが、それならば何故脱洗脳しないのかが

疑問として残り、結局、脱洗脳に失敗したからコーチングと言い訳しているようにしか聞こえ

ない。洗脳とコーチングの違いは「日常生活で行う行動をクライアント自身が決める」という

ことらしいが、松竹芸能を辞めてしまい、女占い師を選んだのであるならば、中島知子の

達成したい人生の目的とは一体何なのか分からず、明確な人生の目的を持っていない人に

コーチングをしても意味はなく、これでは占い師が認知科学者に交代しただけでしかない。


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『カルテット! 人生のオペラハウス』

2013-04-19 20:38:26 | goo映画レビュー

原題:『Quartet』
監督:ダスティン・ホフマン
脚本:ロナルド・ハーウッド
撮影:ジョン・デ・ボーマン
出演:マギー・スミス/トム・コートネイ/ポーリン・コリンズ/ビリー・コノリー
2012年/イギリス

実力不足のラストシーンについて

 友人のウィルフ・ボンドを見舞いに行ったままそこへ居ついてしまったレジー・パジェットと、軽度の認知症で身に危害が及ぶと両親の家に帰ると言い出すシシー・ロブソンの3人の仲良しグループが身を寄せるイギリスのビーチャム・ハウスは他にも引退した音楽家たちが楽しく暮らしている。みんなが集うフロアーに貼られている「D‘OYLY CARTE」というポスターで分かるようにここでは喜歌劇(comic opera)が扱われる。そんなある日、ジーン・ホートンが終の棲家としてビーチャム・ハウスに入居するのであるが、それを快く思わないのはレジーで、彼はかつてジーンと「9時間」だけ結婚していたことがあり、ジーンが共演者のテナーの男性と浮気をしたことを告白したことでレジーは立腹し、その後ジーンは2度の結婚をしたが、レジーは独身のままでジーンとの共演は避け、仕事にも支障をきたしていたため、ジーンを許せないでいたのである。
 レジーが学生たちにオペラを説明している最中に、ジーンが入ってきたり、庭にある長椅子にシシーと語っているジーンのところへシンディという幼い女の子が来ることなどで、自分たちが別れずにいたらこのような子供がいたであろうという彼女の後悔の念を思わせる。
 アメリカの女優、ベティ・デイヴィスの「老人になるためには弱虫ではいられない」という言葉通りに、ビーチャム・ハウスの住人たちはヴェルディ生誕祭によるハウス存続の寄金獲得のために練習に余念がないのであるが、既に引退すると決めていたジーンは他の3人とカルテットを組んで歌うことにものすごく抵抗を感じていた。しかしやがてライバルとなるアン・ラングレーに対抗するために、4人はカルテットを組んで歌声を披露することになり、4人の練習風景は映され、確かにジーンは手応えを感じた様子を見せたはずなのであるが、何故かラストのクライマックスに至るまで、アンは見事な歌声を披露するものの、取りで舞台に登場する4人は、実際に歌うことはなく、ビーチャム・ハウスの外見に既製の歌声がかぶせられて終わってしまう。確かに、アンを演じたギネス・ジョーンズはプロのソプラノ歌手であるから、その後に4人に実際に歌わせることにはレベルの違いが顕著に現れてしまうために避けたのであろうが、肝心のシーンが口パクではストーリーとして冴えず興ざめしてしまうのは避けられないと思う。


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駅の利用の仕方

2013-04-18 23:40:57 | Weblog

駅階段で男性つまずき、前の女性が転倒し死亡(読売新聞) - goo ニュース

 駅の階段は決して高齢者だけが注意すればいいようなことではなくて、若い人でさえ足を

踏み外す事はあるわけで、ぶつかる側にもぶつかられる側にもなる可能性はあるのだから、

健康のためにエスカレーターを使わずに階段を利用している私はなるべく人を避けるように

して階段を上り下りしているが、人と接触せざるを得ない状況の場合はゆっくり歩くように

心がけている。階段のみならず駅のホームにおいてもなるべく端の方に立たず、真ん中に

立つようにしている理由は、別に誰かに命を狙われているわけではなく、やはりアクシデント

で誰かと接触してホームから転落することも転落させることも避けているからである。自分は

大丈夫と思い込んであまりそのようなことに気を使っていないように見える人は意外と多く

見かける。


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『コズモポリス』

2013-04-17 20:16:17 | goo映画レビュー

原題:『Cosmopolis』
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
脚本:デヴィッド・クローネンバーグ
撮影:ピーター・サシツキー
出演:ロバート・パティンソン/ポール・ジアマッティ/サマンサ・モートン/ジュリエット・ビノシュ
2012年/フランス・カナダ・ポルトガル・イタリア

読みにくいエンターテインメント

 『アウトレイジ』(北野武監督 2010年)の冒頭のパロディのような、オープニングの連なる白いリムジンの映像で、かなりの期待を持たせるものの、一般のSF作品のような派手さを最後まで見せない本作に我慢できずに途中で席を立ってしまった観客に対してかける慰めの言葉は持ち合わせていないが、‘味読’してみれば見えてくるものはある。
 主人公で投資家のエリック・パッカーは、28歳にして大富豪で、ニューヨークの街を走る白いリムジンの中に最先端のハイテク装備を施して仕事場にしているが、国際通貨が中国の人民元になったことから、‘読み’が難しくなり、もはや通貨は人々に楽しみをもたらすことのない「ネズミ」と呼ばれるようになっていた。エリックにはエリーズ・シフリンという妻がいるのであるが、エリックがエリーズに出会えるのは彼女のタクシーの中や本屋であり、一緒に食事はするものの夫婦関係が無い原因はエリックが浮気を疑われているからであろう。代わりにエリックは絵画のコンサルタントを務めているディディ・ファンチャーやボディガードのキンドラ・ヘイズとひと時の‘逢瀬’を楽しんでいる。エリックは投資の代わりになるような楽しみを探していたが、ロスコーチャペルの購入はディディに反対される。そのような時に友人でラップミュージシャンのブラザ・フェズが死んだことを教えられる。何とフェズはラップミュージシャンらしい事件や抗争に巻き込まれて死んだのではなく、普通に病気で死んでしまっていた。やがてエリックはアンドレ・ペトレスクという反資本主義者に顔面にパイを投げつけられる。アンドレは4、5人のパパラッチを引き連れており、その一部始終を写真に撮らせることでシニカルな享楽を満喫している。エリックは毎日のようにメディカルチェックを受けているのであるが、ある日、医師から前立腺の歪みを指摘される。
 命が狙われているということで、通りの向かい側にあるにも関わらずなかなか馴染みの床屋に行かせてもらえず、様々な鬱屈が溜まっていたエリックは、ボディガードのトーヴァルを銃殺して運転手と共に父親の世代から馴染みの床屋を訪れる。食事をして髪も右半分を切ってもらった頃、銃を持っていないことを知った理髪師は、護身用にとエリックに自分の銃を渡す。エリックは散髪の途中で運転手と帰宅し、リムジン置き場で銃撃を受ける。ベノ・レヴィンという名の暗殺者はかつてエリックの会社で働いていた男だった。自分で左手の甲を撃ち抜いたエリックにベノは人民元に関しても前立腺に関しても完璧を求めるから却って上手くいかなくなることを教え、最後にエリックの頭に銃口を突きつけながらも、救いを求める。その救いとは金銭では手に入らないエンターテインメントであるはずなのだが、高度資本主義を止められない中で、エンターテインメントはシニカルにならざるを得ず、それは‘完璧’の本作も免れてはいないと思う。


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北朝鮮の“言うだけ番長”

2013-04-17 00:19:02 | Weblog

「予告なしの報復行動」通告=正恩氏写真焼却を非難―北朝鮮(時事通信) - goo ニュース

 てっきり私は北朝鮮はケリー米国務長官が日本から帰国する際に乗るチャーター機を

中距離弾道ミサイル「ムスダン」で撃ち堕とすのかと思っていたが、何もしなかった。要は

アメリカが北朝鮮の4月の記念日に合わせて国務長官をアジアに送り込んだ時点で、

もしもロケットを撃つような事になれば、アメリカの国務長官が狙われたと見なされかねない

ために、この“詰将棋”は既に詰んでしまっていたのである。しかし“御真影”まで公の場所で

燃やされているのだから、そろそろ本当に撃たないと金正恩(ジョンウン)第1書記は世界的

に有名な“言うだけ番長”になってしまうと思うけれど。


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『HK 変態仮面』

2013-04-16 20:08:31 | goo映画レビュー

原題:『HK 変態仮面』
監督:福田雄一
脚本:福田雄一(脚本協力:小栗旬)
撮影:工藤哲也
出演:鈴木亮平/清水富美加/片瀬那奈/ムロツヨシ
2013年/日本

変態を巡る考察

 敏腕刑事だった色丞張男と、「ソドム」というSMクラブの「ドSの女王様」として働いていた魔喜との間に生まれた主人公の色丞狂介は、紅游高校の拳法部に所属する冴えない高校生であったが、ある日、同じクラスに転校してきた姫野愛子が銀行強盗に巻き込まれ、人質に取られている現場に偶然遭遇し、愛子を救うためにビルに忍び込み、覆面をするつもりが間違えて女性用パンティを被ってしまい、脱ごうとしたものの脱げなくなり、それどころか今まで経験したことのないエクスタシーを感じ、潜在能力を100%引き出された「変態仮面」に変身することになる。
 変態仮面はもちろん変態なのであるから、彼が被る女性用パンティの‘クオリティ’によって強さのレベルも変わることになり、実際に、未使用よりも使用済みの方が、表よりも裏の方が、もちろん赤の他人のものよりも愛する人のものの方がレベルアップにつながるのであるが、数学教師の戸渡による、敢えて裏側よりも表側を顔にフィットさせ、その‘渇望感’によって却って興奮するという理屈は、変態というよりも、逆にノーマルに向かってしまう倒錯であり、変態を貫こうとするならば、寧ろ裏側の‘シミ’などに拘るべきであるとしても、そこまで行ってしまうと笑えなくなるレベルになることは間違いなく、「変態度合いの高さと強さとは比例しない」という正論と同様にその倒錯も諾うべきであろう。
 ‘蜘蛛の糸’の代わりにSMで使用されるロープによるスパイダーマンのパロディもよく出来ており、クライマックスの呆気なさは、さすがにそこまでCGにつぎ込む予算がなかったであろうから仕方がないが、片瀬那奈の怪演を伴う脚本はとても上手く、いわゆるヒーローものとしては同時期に公開されている『仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z』(金田治監督 2013年)を超える近年稀にみる佳作である。


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映画の原作使用料について

2013-04-16 00:18:00 | goo映画レビュー

「テルマエ」原作使用料100万円 妥当な金額?安すぎる?(産経新聞) - goo ニュース

 この記事で映画の原作使用料が売上高に応じて支給される歩合制ではないことを初めて

知ったのだが、60億円の興行収入を稼ぎ出した『テルマエ・ロマエ』の原作使用料が

100万円しかないということはヤマザキマリ本人ではなくても不思議に思うだろう。例えば、

無名の役者によるインディーズレベルの低予算作品であるならば、興行収入も最初から

期待できないだろうから、100万円は妥当と言えるであろうが、主演を阿部寛で、上戸彩も

加わった役者を揃え、フジテレビと東宝が製作委員会に加わっているためにプロモーション

も派手に行えるという好条件の中での原作使用料の100万円はどうだろう 品田雄吉の

「リスクを考えれば妥当」という意見は説得力が無い。せめて興行収入の0.1%という契約

であっても600万円も収入があったのに。もちろんヒットしなければヤマザキマリは使用料

が雀の涙程度でも文句は言わなかったと思う。


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『舟を編む』

2013-04-15 21:24:39 | goo映画レビュー

原題:『舟を編む』
監督:石井裕也
脚本:渡辺謙作
撮影:藤澤順一
出演:松田龍平/宮崎あおい/オダギリジョー/黒木華
2013年/日本

言葉に対するこだわり不足について

 評判は良い作品のようであるが、主人公の馬締光也が営業部から異動してきた、新しい辞書『大渡海(だいとかい)』の編纂を進める玄武書房の辞書編集部にリアリティが感じられない。もちろん見出し語24万語という大辞書の編纂過程をメインとして描いているのであるから、早雲荘の大家さんであるタケが亡くなる様子も、馬締光也と林香具矢の結婚シーンも、松本朋佑が亡くなる様子も敢えて描かないということは理解しつつも、ところでこの辞書編集部の部長は誰なのかと考えると、やがて他の部署に異動してしまう西岡正志であるはずはないし、人事異動に松本朋佑が関わっている風にも見えず、頼りなさそうな馬締に部長の職まで託されているようにも思えず、原作では気にならなかったことが気になってしまう理由は、意外と小説ほどには本作が言葉にこだわっていないためである。例えば、馬締が香具矢に認めたという巻紙に書かれた恋文は余りにも達筆で読めないということで香具矢は口頭で馬締の愛を確かめようとするのであるが、巻紙に書かれた恋文の内容が明らかにされることがなく、これではいわゆる「エクリチュール」と「パロール」の比較の妙など楽しませられるわけもなく、馬締が辞書編纂に苦しむ様子を、辞書のタイトルにかけて‘海’の中で溺れるというイメージの作り方もチープで、本作よりも三浦しをんの小説の方が言葉に関するネタが多いだけ面白いと思う次第である。


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