MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ハンガー・ゲーム FINAL : レジスタンス』

2015-06-20 00:08:55 | goo映画レビュー

原題:『The Hunger Games: Mockingjay – Part 1』
監督:フランシス・ローレンス
脚本:ダニー・ストロング/ピーター・クレイグ
撮影:ジョー・ウィレムズ
出演:ジェニファー・ローレンス/ドナルド・サザーランド/ジュリアン・ムーア
2014年/アメリカ

「The Hanging Tree」の歌詞の謎について

 最終章(ファイナル)として観にいったら「パート1」だったことに驚いた。「前半」だけを観ただけでは評価のしようがないが、本作でさらに驚いたことはジェームズ・ニュートン・ハワード(James Newton Howard)が作曲しジェニファー・ローレンス(Jennifer Lawrence)が歌った「The Hanging Tree」がヒットチャートの上位に入ったことで、あのような暗い歌がヒットしたことで、改めて『ハンガー・ゲーム』の人気の凄さがうかがえるのである。
 だからここでは意外と歌詞が難解な「The Hanging Tree」を和訳しておきたい。

「The Hanging Tree」 Jennifer Lawrence 日本語訳

あなたはその木に近づいてきている?
ある男が吊るし首にされた
3人も殺したそうだから
ここでは奇妙なことが次々と起こる
もしも私たちが真夜中にこの「吊り下げ用の木」の中で出会ったら
これ以上の奇妙なことはあり得ないでしょう?

あなたはその木に近づいてきている?
そこではその死んだ男が
恋人に逃げるように叫んだ
ここでは奇妙なことが次々と起こる
もしも私たちが真夜中にこの「吊り下げ用の木」の中で出会ったら
これ以上の奇妙なことはあり得ないでしょう?

あなたはその木に近づいてきている?
私があなたに走れと言った場所
だから私たちは二人とも自由でいられる
ここでは奇妙なことが次々と起こる
もしも私たちが真夜中にこの「吊り下げ用の木」の中で出会ったら
これ以上の奇妙なことはあり得ないでしょう?

あなたはその木に近づいてきている?
希望のネックレス(a necklace of hope)を身につけて
私と一緒にいてほしい
ここでは奇妙なことが次々と起こる
もしも私たちが真夜中にこの「吊り下げ用の木」の中で出会ったら
これ以上の奇妙なことはあり得ないでしょう?

 この歌詞を難解にしている原因は「If we met at midnight in the hanging tree」の部分で、「ハンギング・ツリー(the hanging tree)」の「中(in)」で出会うという言い回しが混乱を招くのである。その理解の手助けとなる絵がある。

 『Madonna of the Dry Tree』と呼ばれるオランダの画家のペトルス・クリストゥス(Petrus Christus)の作品は『エゼキエル書(Book of Ezekiel)』からインスピレーションを得たもので、「知識の木(Tree of Knowledge)」が描かれている。木に「吊り下がって(hanging)」いるものは「黄金の文字(golden letters)で、木の「中」にいる人物は母親のマリアと息子のイエスなのである。この懐妊を感じた聖母の告白のような歌詞にキリスト教が大きく関係しているとするならばヒットした理由も理解できる。
Read more: Soundtrack Artists - The Hanging Tree Lyrics | MetroLyrics


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『ストロボ・エッジ』

2015-06-19 00:29:18 | goo映画レビュー

原題:『ストロボ・エッジ』
監督:廣木隆一
脚本:桑村さや香
撮影:山田康介
出演:福士蒼汰/有村架純/山田裕貴/佐藤ありさ/入江甚儀/黒島結菜/小篠恵奈/松尾薫
2015年/日本

最後に転ばない主人公の不明瞭なキャラクターについて

 オリジナルストーリーがどのようになっているのか分からないが、同級生の一ノ瀬蓮と安堂拓海の友情を壊さないために蓮との関係を断つという主人公の木下仁菜子の心情が上手く理解できなかった。仁菜子と蓮がどのような関係であろうと蓮と拓海の関係は冷えることなく続いているからである。
 演出面に関して言うならば、大量の花火が打ちあがっている夜空を背後に仁菜子がほとんど花火に関心を示さずに歩いているシーンや、学園祭のポップな装飾やシャボン玉など目を引くカットも無論あるとしても、最後に蓮が一人で帰途につき、後から仁菜子が追いかけてきた時に、蓮が乗っているはずの電車が出発してしまい間に合わなかったのであるが、何故か蓮が列車から降りていてホームにいるというシーンは明らかに不自然であろう。それよりも追いかけてきた仁菜子が「いつものように」転んでしまい、それを目撃した蓮が扉が閉まる直前に車両から降りるという展開の方が自然なのである。もちろん女子学生をターゲットにした作品に細かいことを言っても仕方がないのではあるが、それまで仁菜子が転んでいた伏線が活かされないことがなんとも残念なのである。


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『映画 ビリギャル』

2015-06-18 00:03:28 | goo映画レビュー

原題:『ビリギャル 学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』
監督:土井裕泰
脚本:橋本裕志
撮影:花村也寸志
出演:有村架純/伊藤淳史/野村周平/松井愛莉/大内田悠平/奥田こころ/吉田羊/田中哲司
2015年/日本

余計にならない程度の「お世話」の仕方について

 努力というものを改めて考えさせられる。それは「努力は必ず報われる」というような類の話ではなく、努力をするにはそれなりの環境が整わなければならないということで、本作でいうならば主人公の工藤さやかが努力出来た理由は理解のある母親のああちゃんの存在と塾講師の坪田義孝との出会いと、本田美果、香川真紀と岡崎結衣の3人の親友が敢えて身を引いてさやかが勉強できる環境を作ってくれたからこそなのである。つまり国も環境も全く違うが『あの日の声を探して』(ミシェル・アザナヴィシウス監督 2014年)と同じように出会う相手次第で人生は変わってしまうのである。
 しかしそれ以上に気になったことは男性陣の「余計なお世話」で、さやかの父親は2人の娘は放っておいて長男の将来に全力を傾けているのであるが、その過剰な介入が長男を精神的に追い込むことになるし、さやかの担任の西村隆はわざわざ坪田を呼び出して無駄なことは止めろと忠告する始末であるのだが、その坪田にしても受験当日に合格祈願の缶コーヒーを渡したことでさやかが腹痛を催し、結果的にさやかは慶応大学の文学部には合格しなかったのであり、このあたりのさじ加減は意外と難しいのではある。


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『あの日の声を探して』

2015-06-17 00:33:00 | goo映画レビュー

原題:『The Search』
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
脚本:ミシェル・アザナヴィシウス
撮影:ギヨーム・シフマン
出演:アブドゥル・カリム・ママツイエフ/ベレニス・ベジョ/アネット・ベニング
2014年/フランス・グルジア

「演出間違い」を上手く利用する作品について

 本作の冒頭のシーンが気になる理由は、若いロシア兵たちがチェチェン人の夫婦と彼らの娘を尋問している最中に一人のロシア兵がその夫婦を次々と銃殺し、娘のライッサが倒れた2人をかばうようにした時、現場から少し離れた家から「やめて」と何度も声が聞こえてきて、ロシア兵がそちらに目を奪われて家の中に誰かいるのか探そうとしたことでライッサが助かったように見えるからである。
 ここで古いハンディーカメラの映像からヴィスタサイズのクリアな映像に変わるのであるが、家の中にいたのは主人公の9歳のハジと赤ん坊の彼の弟で、ハジは息を潜めて窓から見ていたのであるが、ロシア兵はその赤ん坊の泣き声を聞きつけて家に近づいてきているのである。それならば「やめて」と叫んだのは誰なのかということになると思うのであるが、敢えて「つなぎ間違い」をして残された「本物」のフィルムを元に構成された映画のように装う演出が上手い。
 もう一人の主人公である19歳のコーリャにしてもギターを抱えながらマリファナを吸っていたのだから、社会に対してそれなりの反骨精神があったのであろうが、軍隊に所属させられてからはロックどころではなくなる。結局、ハジとコーリャの違いは出会った人によるものだということであろう。ハジにはまだビージーズの「You Should Be Dancing」を踊れる余裕があった。


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『ザ・レジェンド』

2015-06-16 00:32:44 | goo映画レビュー

原題:『Outcast』
監督:ニック・パウエル
脚本:ジェームズ・ドーマー
撮影:ジョエル・ランサム
出演:ヘイデン・クリステンセン/ニコラス・ケイジ/アンディ・オン/リウ・イーフェイ
2014年/中国・カナダ・フランス

「リーアム・ニーソン物」と「ニコラス・ケイジ物」の違いについて

 「リーアム・ニーソン物」という「ジャンル」の話は既にした通りで、近年のそのクオリティーの落ち込みは深刻ではあるものの、それでも興行的にはヒットしているからまだ良いのである。寧ろ問題なのは近年の「ニコラス・ケイジ物」であろう。作品のクオリティーと共に興行収入も著しく低下しているからである。
 本作は『ラストサムライ』(エドワード・ズウィック監督 2003年)でスタントコーディネーターを担当したニック・パウエルの初監督作品らしいのであるが、12世紀の聖十字軍の戦士(クルセイダーズ)と中国の王族との「邂逅」がストーリーを面白くしているようには見えない。『ラストサムライ』において多少なりとも描かれていた西洋と東洋の文化の違いが本作においてはほぼ無視されており、子供や女性などの弱者が最初に戦争の犠牲になるというメインテーマは文化に関係なく普遍的なもので、興味深い時代設定は全く活かされておらず戦闘シーンは既視感に満ち溢れ地味に見える。
 ラストで完全に死んだと思われたジェイコブもリアンも生きており、それはどうやら続編を製作する都合によるものらしいが、製作国の一つであるフランスでは本作はビデオスルーになってしまっている。中国ではヒットしているのかもしれないが、どう観ても面白いとは思えない。しかしあの状況でニコラス・ケイジが演じたガレインも生きていたら逆にその徹底した荒唐無稽さが面白くなるかもしれないが、いずれにしても続編を観なければ分からない。


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『夫婦フーフー日記』

2015-06-15 06:32:04 | goo映画レビュー

原題:『夫婦フーフー日記』
監督:前田弘二
脚本:前田弘二/林民夫
撮影:伊藤寛
出演:佐々木蔵之介/永作博美/佐藤仁美/高橋周平/杉本哲太
2015年/日本

 「闘病物」というイメージを覆す試みについて

 いわゆる「闘病物」の作品だと思ってナメてかかると、いきなり小沢健二の「音楽と人」のインタビュー記事が話題になり虚を衝かれる。その後も主人公の清水浩太と優子の、出会ってから17年目で結婚し、妊娠、出産を経て入籍から483日後に優子がガンで亡くなるまでの慌ただしさでストーリーが暗くなる暇さえない。
 それどころか「シックスセンス」や「カズオ・イシグロ」などの細かいネタも的確で、例えば『あん』(河瀬直美監督 2015年)の樹木希林がはまり役だったように、「コメディアンヌ」としての永作博美の本領が発揮されているように見える。あれほどハンバーガーをおいしそうに食べる女優が他にいるだろうか。


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『あん』

2015-06-14 00:33:21 | goo映画レビュー

原題:『あん』
監督:河瀬直美
脚本:河瀬直美
撮影:穐山茂樹
出演:樹木希林/永瀬正敏/市原悦子/内田伽羅/浅田美代子/水野美紀
2015年/日本・フランス・ドイツ

特異な演出方法に相応しい特異な女優について

 作品冒頭で樹木希林が演じる主人公の徳江が歩いている時にすれ違った男性の帽子が飛ぶというただならぬ出来事があるにも関わらず、徳江も相手の男性も何事もなかったかのように振る舞うシーンは、その原因が世間の無視なのかあるいは患者の気丈さなのかはともかくとして、まるでハンセン病というものの存在のあり方を象徴しているように見える。
 河瀬直美監督作品を全て観ているわけではないが、いつもの河瀬の作品よりも本作が観やすいとするならば、それは河瀬の演出方法と樹木希林のキャラクターが上手くマッチングしており、なおかつ樹木希林がいつもシリアスな河瀬の作品に笑いをもたらしたからだと思う。


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『誘拐の掟』

2015-06-13 00:41:39 | goo映画レビュー

原題:『A Walk Among the Tombstones(墓石の間を散歩)』
監督:スコット・フランク
脚本:スコット・フランク
撮影:ミハイ・マライメアJr.
出演:リーアム・ニーソン/ダン・スティーヴンス/ブライアン・ブラッドリー
2014年/アメリカ

最後に丁寧に描かれたヒーロー像について

 『ラン・オールナイト』(ジャウマ・コレット=セラ監督 2015年)を観ていた者としては、冒頭でリーアム・ニーソンが演じる刑事のマット・スカダーが深酒で同僚に注意されているのを見て「また酔っているのか」と嘆息をもらしてしまい、その後現れた黒人少年のTJが『ラン・オールナイト』のレッグス同様に「狂言回し」を演じるのかと想像してしまい、終わってもいないのに既に観たような気分になってしまったが、本作は近年粗製濫造されている「リーアム・ニーソン物」とは一味違う。
 1991年に致命的なミスを犯したマットは刑事を辞職し、アルコール依存症更生プログラムを受けて社会復帰していた。マットがレストランで夕食を取ろうとしていた時に、妻を誘拐された弟を助けて欲しいとピーター・クリストが現れたことからストーリーが展開されていく。ピーターの弟のケニーの妻はキャリーという名前であるが、ここで注目したいのはケニーの家に飾られているキャリーの肖像画がバルテュス風に描かれていることで、キャリーの前に被害に遭っていたレイラは犯人の一人によって写真に撮られており、キャリーの次に被害に遭う14歳のルシアの実家には淡色で丁寧に描かれた彼女の肖像画が掲げられているのである。
 マットがTJと出会った場所は図書館なのであるが、その時マットはTJが描いた落書きを拾う。それはお世辞にも上手いとは言えないラフな人物画なのであるが、ラストで帰宅したマットがテーブルの上に置いてあったTJの絵を見ると、そこにはヒーロー像が丁寧に描かれている。そこに様々な描写で描かれた完璧な女性像を救うために完璧なヒーロー像を生み出そうとする成長した少年の強い意志が感じられ感動をもたらすのである。


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『ラン・オールナイト』

2015-06-12 00:09:35 | goo映画レビュー

原題:『Run All Night』
監督:ジャウマ・コレット=セラ
脚本:ブラッド・イングルスビー
撮影:マーティン・ルーエ
出演:リーアム・ニーソン/ジョエル・キナマン/コモン/エド・ハリス
2015年/アメリカ

 近年の「リーアム・ニーソン風」作品について

 一見上手いプロットのように見えるが、主人公のジミー・コンロンが息子のマイクを救うために親友のショーン・マグワイアの息子のダニーを銃殺した後に、ダニーたちの犯行とマイクの無実を証明するためにマイクと一緒にリムジンに乗っていた、マイクがジムでボクシングを教えているレッグスを探すのであるが、レッグスの存在がマグワイアたちにバレていて命を狙われているのならばともかく、自分の無実を証明するために誰が味方なのか分からない中を渡り歩いていることにストーリー展開の強引さが感じられる。
 ジョン・ハーディング刑事は証拠不十分で1996年にジミーを釈放しており、ようやく2014年のクリスマスに彼を捕えることができるチャンスを掴むのであるが、そこまでに至る困難な経緯は描かれておらず、最後に既に絶命しているジミーの手から暗殺者リストを入手したところで物語自体が盛り上がることもない。
 ところでジミーが見つけるパッチワークによる家族写真には「US BEFORE YOU」とロゴが貼られている。意訳するならば「あなたの目の前には私たちがいる」となり、それはジミーを大いに励ますと思うのだが、何故か字幕で訳されていなかったのが不思議だった。


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『トゥモローランド』

2015-06-11 00:16:21 | goo映画レビュー

原題:『Tomorrowland』
監督:ブラッド・バード
脚本:ブラッド・バード/デイモン・リンデロフ
撮影:クラウディオ・ミランダ
出演:ブリット・ロバートソン/ラフィー・キャシディ/ジョージ・クルーニー
2015年/アメリカ

「全体像」が見えてこない「テーマランド」について

 『チャッピー』(ニール・ブロムカンプ監督 2015年)同様に本作も物語の時系列が上手く掴めなかった。冒頭で既に大人になっている主人公のフランク・ウォーカーが自分が子供の頃の体験を語っている時には、「残り時間」が66日のように見えたが、後半で再び同じシーンが映し出された時には58日になっている。このデジタル時計がゼロに向けて「カウントダウン」されることはなく、スリリングさに欠けるのである。
 しかしそのような些末なこと以上に本作が抱える深刻な問題は、「トゥモローランド(Tomorrowland)」の全体像が見えないことで、例えば、ラストでギターを弾いている日本人のストリートミュージシャンがピンバッジに触れて、あのような草原に連れていかれても、本人は音楽を奏でて多くの人たちに聴いてもらいたいと思っているのだから逆に迷惑千万で、本作の良さが、実際にディズニーパークにある同名のテーマランド同様に最後まで分からなかった。アダルトチルドレンであるフランク・ウォーカーを含む子供たちの「夢」と大人の「将来設計」を一緒くたにしてしまうから訳が分からなくなってしまうのである。


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