MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『チャッピー』

2015-06-10 20:30:08 | goo映画レビュー

原題:『Chappie
監督:ニール・ブロムカンプ
脚本:ニール・ブロムカンプ/テリー・タッチェル
撮影:トレント・オパロック
出演:シャールト・コプリー/ヒュー・ジャックマン/デーヴ・パテール/シガニー・ウィーバー
2015年/アメリカ

年代が不鮮明なSF作品について

 どうもストーリーの流れが上手く掴めない。冒頭でテレビ出演している専門家たちが「チャッピー」と名付けられたロボットの凄さを解説している様子が映し出され、それから18カ月前の出来事が描かれることになるのであるが、ラストでチャッピーとチャッピーから「メイカー(創造主)」と呼ばれるディオン・ウィルソンが「生き返る」ところまでは彼らの「意識の移植」という物語の設定通りである。しかし既に亡くなったヨーランディの「思い出」までが別のボディーに移植できてしまうと何でもありになってしまいストーリーの「強度」が保てなくなってしまうと思うのだが、チャッピーからマミーと呼ばれていたヨーランディが3Dプリンターによって精確に生前と同様にロボット化されるのを見た時、時代設定によっては既にそこまでテクノロジーが進化している可能性はあるものの、年代に関する言及が無いために一年半後の話なのかあるいはもっと経っているのかはっきりさせないまま終わってしまっており、SF映画としては致命的だと思う。それとも未解決な問題は全て続編に委ねられたのであろうか。


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『予告犯』

2015-06-09 23:40:25 | goo映画レビュー

原題:『予告犯』
監督:中村義洋
脚本:林民夫
撮影:相馬大輔
出演:生田斗真/戸田恵梨香/鈴木亮平/濱田岳/荒川良々/宅間孝行/小日向文世
2015年/日本

努力も才能の一つであることの悲劇について

 主人公のゲイツこと奥田宏明が「ピットボーイ」というネットカフェの六本木店にいることを突き止めた警視庁サイバー犯罪対策課のキャリア捜査官である吉野絵里香が店内に入るなり大声で捜査することを宣言することは既に犯人が使用している部屋まで突き止めているのだからから常識としてはありえない。だから新聞紙を被った犯人に逃げられるのであるが、その犯人を追っている途中で、吉野はどこかで見おぼえのある顔を見つけ、その顔がネットカフェの監視カメラで見た犯人の顔だと気がつき後を追う。その吉野に気がついたゲイツは逃げるのであるが、なかなか吉野を撒けない。この追いつきそうで追いつけない追跡劇の長いシークエンスは、吉野がようやくゲイツに追いついた時に吉野がゲイツの屍を抱きしめなければならないことで悲劇の増幅に貢献することになる。
 東京大学の法学部を卒業している吉野がエリートであることは間違いないが、小学生の時にはイジメられていたのである。それでも努力の結果、「勝ち組」になれたという自負があるのだが、それは努力できる「才能」と「余裕」があるから成し遂げられたのであって、ゲイツだって頑張っていたはずなのだが、努力し過ぎて体を壊してしまってはどうしようもないのである。
 かつてのATG映画を彷彿とさせる青春映画の傑作を久しぶりに観たように思うが、それはあくまでも努力が報われない現代の若者たちの挫折の物語である。


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『泣いてたまるか 先生週刊誌にのる』

2015-06-08 21:37:00 | goo映画レビュー

黒木姉妹さん『正調 刈干切唄』の歌詞

原題:『泣いてたまるか 先生週刊誌にのる』
監督:深作欣二
脚本:深作欣二/北野夏生
撮影:森隆吉
出演:渥美清/石山律/中原早苗/高松英郎/小柳徹/名古屋章/沢田雅美/河内桃子
1967年/日本

 「正々堂々」という厳しすぎる倫理観について

 主人公の高校の生物教師の石田倉吉の周囲には2人の問題を抱えた人物がいる。元教え子の滝田慎一は2年でメインイベンターを務めるほどのプロボクサーになってはいたが、いわゆる「ジム・チャンピオン」で相手を追い詰めるまではいくのであるが「ガラスの顎」と言われるように不用意なパンチをもらって負けてしまい、生活が荒れていた。もう一人は石田が現在担任をしている今井和夫で、彼は大学に進学するつもりだったが、受験生になると仲間は全員敵となり、大学を卒業した後も不公平の上にあぐらをかいて学歴の無い年寄りを相手に威張り散らすだけだと人生に絶望して自殺未遂の騒ぎを起こしていた。
 石田は滝田が所属している「A・О・ボクシングジム」の会長の黒木を訪ねて話を聞き、滝田が試合に勝てない原因は素質はあるのだが憎しみが足りないからだと言われるのであるが、食事も満足に取れなかった極貧の生活から抜け出そうとしている滝田に世間に対する憎しみが足りないというのはどうも個人的には納得しかねる。
 2人に対して石田が身上とする「正々堂々と戦え」という教えに説得力があるとは思えないが、滝田は東京五輪優勝者の城南大学の高橋仁のデビュー戦の相手に選ばれ、ダウンを奪われながらも10ラウンドを戦い抜き、もちろん判定で敗れはするものの、その試合を石田と一緒に観戦していた今井にも勇気を与えて、今井は再び通学するようになる。
 何の勝算も無いままただ「正々堂々と戦え」を貫くという厳しい倫理観が描かれる本作は深作欣二の演出によるものであるが、それは写真にも写っているような「水飲み鳥」になれというメッセージである。とても理解しがたい話である。


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『新宿スワン』

2015-06-07 21:24:25 | goo映画レビュー

原題:『新宿スワン』
監督:園子温
脚本:鈴木おさむ/水島力也
撮影:山本英夫
出演:綾野剛/山田孝之/沢尻エリカ/伊勢谷友介/金子ノブアキ/豊原功補/山田優
2015年/日本

成人映画に追い込まれる風俗嬢の生態について

 そもそも主人公の白鳥龍彦と南秀吉の「因縁」の経緯がよく分からなかった。龍彦は中学生の時には番長という立場であり、一方秀吉は喧嘩に縁の無い生活をしていたようであるが、他のグループと大乱闘になり、秀吉が龍彦をナイフで刺そうとした際に龍彦を守ろうとした仲間が代わりに刺され、秀吉は少年院に入ることになったのである。そして久しぶりに龍彦と遭遇した秀吉は龍彦に敵愾心を持つのであるが、普段から龍彦が秀吉をいじめていたわけでもなく殺そうとしたのは秀吉の方なのにその異常とも見える敵愾心がどこから来るのかよく分からず、クライマックスのビルの屋上で2人が友情を確認するシーンがいまいちピンと来ないのである。
 それはそうと『東京難民』(佐々部清監督 2014年)や『闇金ウシジマくん Part2』(山口雅俊監督 2014年)同様に本作においても本来は風俗嬢の物語が男性の主人公の「成長物語」に変換されて描かれていることが気になる。そういう意味で『赤線地帯』(溝口健二監督 1956年)がNHKBSプレミアムでわざわざ6月1日に放送されたことに何らかの「批評」を感じたのである。


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『鏡の中の笑顔たち』

2015-06-06 00:25:45 | goo映画レビュー

原題:『鏡の中の笑顔たち』
監督:喜多一郎
脚本:喜多一郎/瀬古千裕
撮影:高間賢治
出演:白石隼也/夏菜/中尾明慶/松下由樹/ミッキー・カーチス/松原智恵子
2014年/日本

謎のまま残される息子と母親の関係について

 『種まく旅人 ~くにうみの郷~』(篠原哲雄監督 2015年)で淡路島の歴史が学べるように、本作においては訪問美容の様子を垣間見ることが出来るとしても、ストーリーそのものに驚きはない。2010年に全国理容美容学生技術大会札幌地区のコンクールで金賞を取ったり、全国大会で優勝したりしている「カリスマ美容師」の主人公の井上遼が自分の才能を過信し、周囲と不和になりせっかく採用された東京の美容室をクビになって札幌に戻ってきてから、訪問美容を経験したことで仕事の楽しさを知ることになるというストーリー展開は悪くはないが、想像できる範囲内であるだろう。何よりも、早くに父親を亡くした遼が母親の井上由紀を札幌に残して東京に行くことに関して由紀と喧嘩してしまうのであるが、20歳で独立して都会で働くことを決意した息子と母親が何故喧嘩してしまうのかがよく分からない。帰って来て一緒に住むようになった遼がお詫びとして母親の髪をセットすると約束しておきながら結局母親の髪をセットするシーンが映されることはなく、最後までこの息子と母親の関係は謎のままで終わってしまう。この親子の関係の悪さが遼が周囲と上手くいかなかった原因であるはずなだけに残念だと思う。
 だから本作の映画としての見どころは終始明るい雰囲気を振りまく夏菜の演技にあると思う。キラキラと目を輝かせながら東京の美容室には芸能人が来るのかと遼に訊ねる高橋まりを演じる夏菜こそ立派な芸能人である。


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『種まく旅人 ~くにうみの郷~』

2015-06-05 22:00:41 | goo映画レビュー

原題:『種まく旅人 ~くにうみの郷~』
監督:篠原哲雄
脚本:江良至/山室有紀子
撮影:阪本善尚
出演:栗山千明/豊原功補/三浦貴大/桐谷健太/谷村美月/音月桂/根岸季衣/山口いづみ
2015年/日本

 山と海を取り持つ「淡路人形」について

 一応『種まく旅人〜みのりの茶〜』(塩屋俊監督 2012年)の「続編」らしいのであるが、監督が代わったためなのか前作よりも本作の方が断然に良くなっている。農林水産省の地域調査官である主人公の神野恵子がタマネギ農家の四代目である豊島岳志と彼の弟で海苔の養殖場の従業員として働いている豊島渉の仲を取り持つ有様が、渉の恋人で淡路人形座で淡路人形浄瑠璃の昇格試験に臨んでいる麻衣が人形の右と左を受け持つ男性2人を支える様子とリンクしており、物語の構成が上手いと感じるのである。
 「きれいな海は痩せた海」という事実や「かいぼり」という、農家が灌漑用のため池の水を抜き、堆積した草木や土砂を取り除き海に流す作業の様子なども上手く描かれており、淡路島の歴史を知る上でも良質の映像と言える。
 神野が近所のスーパーで買い物をする際に「WAONで」と言って払うあからさまな宣伝もギャグとして面白いと思うが、栗山千明の前髪が不安定なところがどうも気になった。


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『ブラックハット』

2015-06-04 23:22:18 | goo映画レビュー

原題:『Blackhat』
監督:マイケル・マン
脚本:モーガン・デイヴィス・フォール/マイケル・マン
撮影:スチュアート・ドライバーグ
出演:クリス・ヘムズワース/ワン・リーホン/タン・ウェイ/ヴィオラ・デイヴィス
2015年/アメリカ

負け戦を敢えて戦う「ブラックハット(悪役)」について

 どうやらハッキングにより香港の原子炉を爆破し大豆の価格高騰を導いた理由は、マレーシアの錫の鉱山地区を破壊して錫の価格高騰によって儲けようと企んだ者たちの予行演習らしいのであるが、鉱山と原子炉を同等に扱うこと自体が間違っているとしても、ハリウッド映画の放射能に関する認識の甘さは今に始まったことではないから置いておくとして、それでもハッキングの様子の描写はおざなり過ぎると思う。主人公のニコラス・ハサウェイとチェン・リエンがハッキングによって敵から7000万以上の大金を盗み取ったにも関わらず、そのまま逃げずに敵の仲間に加えるように要求した理由は、彼の友人であり彼女の兄であるチェン・ダーワイを殺された仕返しをするためだったと思うが、そのような意図が上手く描かれていないように思う。
 本国では興行的に大失敗に終わった本作であるが、全体的に終始画面から漂うどこか乾いた諦念は見逃せないと思う。


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『ピッチ・パーフェクト』

2015-06-03 00:41:45 | goo映画レビュー

原題:『Pitch Perfect』
監督:ジェイソン・ムーア
脚本:カイ・キャノン
撮影:ジュリオ・マカット
出演:アナ・ケンドリック/スカイラー・アスティン/レベル・ウィルソン/アナ・キャンプ
2012年/アメリカ

既製の素材で「新しい物語」を生み出すDJについて

 主人公のベッカ・ミッチェルの特異な言動が気になる。彼女はバーデン大学に入学したものの、勉学には興味がなくDJを目指して寮に機材まで持ち込んでいる。同級生のジェス・スワンソンは映画音楽の作曲家を目指しており、彼のお気に入りの作品である『ブレックファスト・クラブ(The Breakfast Club)』(ジョン・ヒューズ監督 1985年)を見せようとするのであるが、ベッカはストーリーが予想できてしまうものには全く興味がなく、映画もラストシーンを観るだけで済ませてしまう。
 やがてジェスと喧嘩別れしてしまい、アドリブを入れたことからリーダーのオーブリー・ポーゼンに叱責され所属していたガールズアカペラグループ「バーデン・ベラズ(Barden Bellas)」を退部してしまったベッカが改めて『ブレックファスト・クラブ』を観直し感銘を受けて、自分が何でも分かっているつもりになっていたことに気がつく。
 改めてメンバーたちと腹を割って話し合うことで絆を深め、得意のDJの才能を駆使し、全国大会では「Price Tag」(Jessie J, featuring  B.o.B)「Don't You (Forget About Me)」(Simple Minds)「Give Me Everything」(Pitbull)を組み合わせて「物語」を演出し優勝する。
 だからシンプル・マインズの曲はベッカとジェスとの仲を取り持つものとして重要なのではあるが、「バーデン・ベラズ」のメンバーたちの絆を強めることに貢献したブルーノ・マーズ(Bruno Mars)の「Just The Way You Are」に字幕が付いていなかったことに違和感を持った。以下、和訳しておきたい。

「Just The Way You Are」 Bruno Mars 日本語訳

彼女の瞳の輝きで
まるで星が輝いていないように見える
彼女の髪は彼女が何もしなくても完璧になびいている
「君は何て美しいんだ」と僕は毎日彼女に言っている
僕が彼女にお世辞を言っても彼女が信じないことは分かっている
僕が見ているものが彼女には見えないと考えるととても悲しくなってくるけれど
彼女が僕に見栄えはどうかしらと訊ねてくるたびに
僕は言うよ

君の顔をみても僕が変えようと思うところがない
だって君はありのままが素敵なのだから
君が笑顔になるだけで
世界が止まってしばらく見つめている
だって君はありのままが素敵なのだから

もしも彼女が僕に許しをくれるのならば
僕は一日中彼女の唇にキスすることができる
彼女は自分の笑い声が嫌いだと言うけれど
僕はとてもセクシーだと思うよ
「君は何て美しいんだ」と僕は毎日彼女に言っている

僕が君に変わって欲しいと頼んだことなど一度もないだろう?
もしも君が完璧さを求めているのならば
ただそのままでいいんだよ
だから君の見栄えがどうかなんて訊ねて煩わさないで欲しいんだ
僕の答えは分かっているだろう?

君の顔をみても僕が変えようと思うところがない
だって君はありのままが素敵なのだから
君が笑顔になるだけで
世界が止まってしばらく見つめている
だって君はありのままが素敵なのだから

ありのままの君が
ありのままの君が
君はありのままが素敵なのだから

君の顔をみても僕が変えようと思うところがない
だって君はありのままが素敵なのだから
君が笑顔になるだけで
世界が止まってしばらく見つめている
だって君はありのままが素敵なのだから

Bruno Mars - Just The Way You Are [Official Video]


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『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~』

2015-06-02 00:35:34 | goo映画レビュー

原題:『Get on Up』
監督:テイト・テイラー
脚本:ジェズ・バターワース/ジョン=ヘンリー・バターワース
撮影:スティーブン・ゴールドブラット
出演:チャドウィック・ボーズマン/ネルサン・エリス/ダン・エイクロイド/ヴィオラ・デイヴィス
2014年/アメリカ

孤高を逃れた「ファンクの帝王」について

 言うまでもなくジェームス・ブラウンの半生が描かれている本作は時系列に沿っていないために決して分かりやすいものではない。例えば、アポロ・シアターで行われたショーの後に、楽屋にいたジェームスに会いに来た人物は長らく音信不通だった彼の実の母親のスージー・ブラウンなのであるが、ストーリーは急にジェームスの幼少時代に戻り、ジェームスが声をかけても兵隊の相手をしていたスージーが息子を無視する光景が映し出される。ストーリーはそのまま進行していき、ジェームスと長年仕事のパートナーとして付き合ってきたボビー・バードがソロで活動したいと言い出したことで喧嘩になり袂を分かったシーンの後に、ようやくジェームスとスージーの楽屋での会話が描かれることになる。
 つまりにジェームス・ブラウンが周囲との関係が上手くいかない原因は彼と母親とのこじれた関係にあることが暗に示されているのである。だから冒頭でも描かれ、再びラストでも観られる1993年の楽屋からステージへ一人で向かうジェームスを見て、私たちは彼は一人で生きていく決心をしたのだと感じるはずであるが、ジェームスは客席にいたボビーを見つけるとセットリストを無視して「Try Me (I Need You)」をアカペラで熱唱する。それはジェームスのボビーに対する「ラブソング」であり、ようやくジェームスが「人情」を理解した瞬間だったのではなかっただろうか。そしてそれは間違いなく「ソウル」を理解したジェームスが名実ともに「The Godfather of Soul」になった瞬間でもある。その時のニュアンスを取り入れて和訳してみたい。

「Try Me (I Need You)」 James Brown 日本語訳

俺を試してみて欲しい
どうか教えて欲しい
俺には君が必要なんだ
俺を試してみて欲しい
君の愛はいつだって真実であるはず
俺には君が必要なんだ
俺を抱きしめて欲しい
俺は君に俺のすぐ傍にいて欲しいんだ
俺を抱きしめて欲しい
君の愛を俺たちが隠すことはないんだ
俺には君が必要なんだ
俺と一緒に歩んで欲しい
語り合おうじゃないか
俺の心が泣き止むようにして欲しいんだ
俺と一緒に歩んで欲しい
語り合おうじゃないか
君の愛は死にそうな俺の心を救ってくれる
俺には君が必要なんだ

 白人の女性記者がジェームスに「グルーブ(groove)とは何か?」と訊き、満足いくような答えが得られなかった後に「好きな食べ物は何か?」とどうでもいい質問をするところなど、まだ人種差別があからさまに残っている様子が上手く描かれている。
 『ジャージー・ボーイズ』(クリント・イーストウッド監督 2014年)同様に主人公のジェームスがカメラ目線で観客に語り掛けるシーンがあるところが興味深い。


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『明烏 アケガラス』

2015-06-01 00:05:14 | goo映画レビュー

原題:『明烏 アケガラス』
監督:福田雄一
脚本:福田雄一
撮影:工藤哲也
出演:菅田将暉/城田優/吉岡里帆/佐藤二朗/新井浩文/若葉竜也/ムロツヨシ
2015年/日本

グラスを交わすシーンについて

 『イニシエーション・ラブ』(堤幸彦監督 2015年)同様に本作もラストのネタバレは避けた方が良いと思うが、この密室劇は明らかに『イニシエーション・ラブ』とは正反対の作りであるにも関わらず、何故かよく似た部分もあり、例えば、本作のラストでホストクラブ「明烏」に集った仲間たちが乾杯して交わすビールが真上から撮影されているのであるが、『イニシエーション・ラブ』においても合コンのシーンで乾杯するグラスを真上から撮っているのである。
 想像の域を出ないが、このカットは『イニシエーション・ラブ』の主人公の鈴木と本作の主人公のナオキが「大人」になるためのイニシエーションとしての記号として機能しているように見えるのである。もっとも結果的には、同じイニシエーションではあっても天国から地獄に落ちるパターンと地獄から天国に昇るパターンの違いはあるのだが。


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