(御在所岳を仰ぎ見て@湯の山温泉)
2日目の宿泊は湯の山温泉でした。湯の山温泉って名前だけはそこそこ有名ですけどどんなもんかいな、って感じでしたがまあ寂しいですね。ちょっとどころか結構寂しい。明確な「温泉街」というものが形成されてないのもあるけど、御在所岳から流れる川に沿って宿がポツンポツンとあるような感じで、浴衣着た湯客がそぞろ歩くような感じでもないし…宿の窓から山の頂上に向かう御在所ロープウェイが良く見えた。中間にある61mの白い大鉄塔は伊勢湾からも見えるという御在所のシンボルで、ロープウェイの支柱としては今でも日本一の高さを誇っています。
夜半の雨も上がり、いい天気になりそうな最終日。相も変わらず朝食前にそっと宿を抜ける。朝焼けの湯の山温泉駅には夜間滞泊の列車が2本、社員さんが始発列車の準備を始めていました。ちなみに湯の山温泉は山の中、湯の山温泉駅は山の下という位置関係にあり、温泉街と駅はだいぶ離れていてその間をサンコーバス(三重交通バス)が結んでいます。近鉄の湯の山線は大正時代に軽便鉄道として四日市鉄道が敷設した路線。現在でも軌間762mmのナローとして存続している内部線・八王子線(現四日市あすなろう鉄道)と同じ出自を持っていて、近鉄と合併する前は三重交通でした。御在所ロープウェイも三重交通が作ったもので、湯の山・御在所周辺の観光開発には三重交通もかなり力を入れていたようです。
さて、湯の山温泉から朝早く出て来て何を撮りに行ったかと言うと、いなべ市内を走る三岐鉄道の貨物です。が、基本的に日中の3往復はだいたい走っていますが朝晩のそれぞれ1往復はその時の出荷状況次第という運任せのダイヤ。んで、その運転されるかどうかわからない朝5時台のセメント便(3710レ)を狙いに行ったんですが、まずは中間駅の保々へ。交換する炭カル便の電気機関車がパン上げして待機していたので、これは東藤原からのセメント1便が走るのではないかという事で丹生川の陸橋へ急ぎます。保々から丹生川の陸橋までは大安の神戸製鋼の裏を通って15分くらいでしょうか。
通称ミルクロードと呼ばれている県道140号線の丹生川の陸橋、三岐鉄道と言えばここ!という随一の撮影地で、陸橋の上には既にファンの方の姿。おそらく地元氏とお見掛けしますが、地元氏が張っていると言う事は運転確定の赤ランプでしょう。太陽に薄雲噛んでいるのがやや残念ながら、藤原岳と竜ヶ岳の稜線はクリアな見晴らし。鈴鹿山脈をバックにした定番の構図で陸橋の上でアングルを決めて待つ事5分。遠くから鼻の詰まったような独特の吊り掛け音が聞こえると、やがてジャガイモ畑の中を一直線に、ゆっくりゆっくり3710レが姿を現しました。
陸橋の逆サイから後追いで。朝もやの空気の中を、16両のタキを連ねて貨物列車が富田へ向かいます。かつては「3S(石油・セメント・石灰石)」と呼ばれ鉄道貨物の中でも重要な位置を占めていたセメント輸送ですが、平成22年に秩父鉄道のセメント輸送が終了し、それ以降はこの三岐の東藤原~四日市港間の運行が日本最後のセメント輸送になってしまいました。
いかにも私鉄電機らしい40トン級のED45(重連)と、あくまで無骨なタキ1900の渋い組合せは、私的ではありますが「いつまでも残したい鉄道風景」の一つでもあります。