(田舎と名の付く田舎@田舎館駅)
「都会」の対義語として「田舎」という言葉がある訳ですが、本来「田舎」は特定の場所を指すものではない。それにもかかわらず、自ら「田舎だで~」と名乗ってしまっているのが青森県は南津軽郡田舎館村。その中心地にほど近い、弘南線の田舎館駅。大きく目立つ駅の看板の上に、以前の旧字体の駅名が残されている。乗客の出入りする間口には雪を落とさないよう配慮した片流れの屋根が優しいモルタル造り。かつては駅員がいたようですが…現在は無人駅です。
駅前にあってひときわ目立つのが、田舎館村の農業倉庫。見事に駅とマッチングした色合いは、駅と同時期に建てられたものなのだろうか。津軽平野の南部に位置し、八甲田山の南麓を源とする浅瀬石川沿いに広がった肥沃な耕土を持つ田舎館村は、遠く縄文の時代から人類の定住が確認出来るほどの豊かな土地であったようです。黒石にも弘前にも平川市にも合併せず暮らしていけるのは、お米・リンゴ・その他諸々の豊かな実りのおかげでしょうか。物流の主役が鉄道だった時代は、当然この駅からも農産物の積み出しが行われていたのでしょうね。
田舎館の駅は、30分ヘッドの時間帯は必ず列車交換が行われるダイヤ上のポイントとなる駅でもあります。30分ヘッドの時間は館田と田舎舘で交換があり、60分ヘッドの時間は館田のみで交換が行われる分かりやすさ。朝の4連の片割れであるペタンコ顔の7155編成が黒石側から進入して来て、黒石行きの原型顔7013編成と交換のワンシーン。
黒石行きから降りて来た女性一人。ローカル私鉄の駅での交換シーンと言うのはもうちょっとゆったり目で行われるもんじゃないのかな、という勝手な思い込みがあるのですが、弘南鉄道はホームの列車の停止目標の手前にATSを置いているらしく、信号が開通するのがめっぽう早い。黒石行きがホームに止まる前に、先に入線していた弘前行きはドアを閉め、そそくさと発車して行ってしまった。
田舎館の駅は、農業地域と集落のちょうど狭間のような場所に位置しており、駅の北~西側は田園地帯ですが、東側には住宅とオリンパスの大きな工場があって、内視鏡カメラの部品なんかを作っているようです。徒歩10分程度の場所には「道の駅いなかだて」とJRAのウインズ津軽があり、待合室には徒歩での行き方が掲示されていましたね。道の駅は「縄文の里」の愛称で親しまれていて、夏から秋にかけては見事な田んぼアートを見る事が出来ます。