(地域の足を守る@上条駅)
山ノ内線の各駅は、それぞれに違う顔を持っていて撮り飽きる事がない。上条駅は、湯田中駅から続く集落の南の端にあって、駅の上は民家、坂の下に向かって果樹園が広がるという半農半住の境目のような場所にあります。雪降りしきる朝の上条の駅、駅の周りを歩きながらどう撮ろうかとアングルを固めていたら、駅の脇の民家から赤いスノースコップを持ったおじいちゃんが一人。「おはようございます」なんてお互いに声を掛け合ってその背中を追うと、駅に続く狭い路地の雪かきを始めるのであった。
雪の山ノ内。とは言え、やはり最近は暖冬の影響か降雪量も乏しく、クリスマス前後にはそれなりの雪もあったのだそうだが、あらかた溶けてしまったそうだ。この「気温が高いせいで降っても積雪は伸び悩む」という傾向はどこの雪国でもそうらしい。とはいえ、一介のおじいちゃんに駅のホームの雪かきはそれなりの重労働。雪を掻いては空を見上げて肩で息を付く様子。
上条駅。湯田中駅の手前の小駅に、日々どれくらいの乗降客がいるのだろう。古いデータで20人ちょっとという数字が出ているが、コロナ禍の今ではひょっとしたら20人も割ってしまっているかもしれない。それでも、こうやって毎日駅の事を陰に日向に守っている人達がいる事には、改めて頭が下がる思い。いわゆる「おらがムラの駅」を守る気持ち。 まことに地方公共交通というものは、地元の人々の地道な支援で支えられているのだと実感。
駅の傍らの踏切の鐘が鳴り、やおら手を止めて電車の到着を見守るおじいちゃん。降りしきる雪の中、山を降りて来た鯨が上条駅に滑り込む。お名残り乗車と思しき青年が一人現れ、車両に吸い込まれて消えて行きました。
ちなみに、記憶違いでなければ、この上条駅の駅守とも言えるおじいちゃんの事を私は結構前から知っている。この駅の利用者でもあり、集落の人達と連れ立って電車に乗って行くシーンなど、そのお姿を拝借したことが何度もある。そういう意味では、名も知らぬ駅守と私の勝手な片思いは、もう10年以上に亘って続いている事になる。いつまでも、お元気でいて欲しいものである。