(湖岸の駅@秋鹿町駅)
宍道湖の湖岸に建つ秋鹿町の駅。松江しんじ湖温泉から駅で言えばたった四つしか離れていないのだけど、周囲はローカルムードの濃いのんびりした雰囲気の中にあります。国道から背を向けた、おそらく旧道沿いに建つ駅舎。小さな車寄せに黒い瓦屋根のクラシカルで重厚な構えですが、駅舎は近年になって建て直されたものらしく、コンクリート造りの新しい建物です。そうそう、一畑電車全体に言えることですが、一部の歴史的な価値のある駅以外、いわゆる「地方鉄道らしい古い木造駅舎」ってあまり残ってないんですよね。まあ、日頃利用するユーザーである地元の人にとっては、古い隙間風吹くオンボロ駅舎より、気密性と断熱性が高く、きれいなトイレのある駅舎のほうがいいに決まっているのですが。
秋鹿町の駅はおそらく一畑電車の中では一番宍道湖に近い駅ではないかと思われ、ホームに立つと宍道湖がよく見える。島式ホーム1面2線の交換駅で、日中の電車はここか次の交換駅の津ノ森駅ですれ違うことが多いみたいですね。駅舎から、構内踏切を渡ってトントントン・・・とホームへ上がっていく、地方私鉄お決まりの構図。駅舎は改築された場所が多いものの、一畑電車の駅における構造物で一番目を引くのは、複数の駅でみられるやじろべえかカカシのような三角のホーム上屋。ガッシリとした太い柱と梁で支えられていて、これだけはおそらく開業当時か、それに近い時期から駅を見つめているのではないかと思われる。この真夏にはなかなか想像できないけれども、山陰地方ですから冬になれば雪も降るだろうし、それなりの耐久性が求められたのではないだろうか。
島式のホームに、先ほど湖岸ですれ違った東急1000系の「しまねっこ号」がやって来た。島根半島というのは少し変わった地形をしていて、中海や宍道湖のある内陸部は湖畔に沿った広く平坦な耕地が広がる地形ながら、北側の海岸線は急峻な山の稜線が海に連なるリアス式海岸が続いていて、海に近付くほうが平地が少ない。秋鹿町の駅からは、以前はそんな日本海側の集落である六坊や魚瀬(おのせ)といった小さな港町へ向けて系列の一畑バスが路線を差し向けていたそうですが、今は一畑バスも島根半島の日本海側に行く路線はだいぶ縮小されてしまったそうな。美保関とか日御碕灯台とか恵曇(えとも)辺りまで行くバスがせいぜいみたいですね。
今は鉄道の沿線からなかなか離れられないけど、時間があればそういう港町をめぐる路線バスの旅みたいなものもしてみたい。終点で降りたバス停で、予約してた漁港の前の民宿の主人に迎えられて、「こんなもんしかないんですけど」なんて言われつつもピチピチな大量の海の幸がジャンジャンお膳に出てくるような・・・(笑)。