(島根半島を望む@出雲市多岐町)
いつもは旅に出かけても、駅前の安い地元のビジネスホテルであったり、自分の車であったなら、どこかの道の駅の片隅にでも車を止めて、後部のトランクにでも入れてある毛布にくるまって寝てしまう。どうせ朝早くから夜遅くまでカメラを握っているのだから、宿に対する意識というか役割はどうしても薄くなる。ただし今回の旅は、かねてから泊まってみたい街があったので宿を取っている。そのため、夕方前に一畑電車の沿線を離脱することになるのであった。大社の街を一瞥し、日本海沿いの道に出た。風力発電の風車が立ち並ぶシーサイドロード、レンタカーを駆ってすいすいと走ると、太陽が次第に黄色味を帯びてくる。
大社の街から日本海を西へ西へ。夏だし、西の国だし、夕日が沈むのはまだまだ先の時間。それでも、日本海の夕景を見ながら、どこかでなにか一枚持って帰りたい思いはあるもの。国道9号線は山陰本線を右に左に見ながら日本海の海岸線を行く。中国地方の「陰」の部分を担う日本の偉大なローカル線とも言える山陰本線、小田駅の先で海に面したアウトカーブがあったので、路側帯に車を止めて列車の通過を待ってみることに。
昔々はキハ181系の気動車特急おき・いそかぜ・くにびき、急行さんべ、そして寝台特急出雲、普通列車もDD51が旧客を引いて走っていた山陰本線。それこそ小学生時代にモノの本で見たあの時代にこのカメラを持って帰りたいけれど、甘美な山陰本線の黄金時代に思いを馳せながら列車を待つ。現在のこの区間の主役はスーパーまつかぜ、振り子式気動車キハ187系での運用。特急列車といえども、たった2両で済んでしまうのが現在の山陰本線西部の流動ということか。
時刻は午後6時の15分前、まだまだ日の高い島根県日本海沿岸。漁火には早過ぎる風景の中、ジョイントの音がしたと思ったら瞬く間に目の前を通過して行ったスーパーまつかぜ。大田市と出雲市間を22分で走り抜けているのですが、かつての特急まつかぜが同区間を30分くらいかかっていたことを考えると驚異のスピード。キララの海をバックに、パリダカみたいにかっ飛んで行きました。