(水墨画の世界@国道403号・市川橋)
夜が明けても、北信国境の谷あいは、未だ暗がりの中にありました。雪の中を堂々と流れる、日本の大河・千曲川。触ると切れてしまいそうな、鋼(ハガネ)の色をしたその水は、何物をも寄せ付けないような不気味な迫力がありました。国道117号線から桑名川の照岡の集落を結ぶ市川橋。この橋も国道403号というローカル国道に指定されておるのでありますが、この国道403号、長野県は松本市を出て、麻績村から姨捨、千曲、旧屋代線に沿って須坂、中野と河東地方を行く裏国道。国道と言うにはちょっと格落ちの、古い街道筋を繋ぎながらここ桑名川で千曲川を渡り、人跡未踏の開田山地を伏野峠という名もなき峠で越えて安塚に至ります。
とっぷりと雪に沈む桑名川の集落。つい先日の秋の日に輝いていた駅のイチョウを遠くに。今や立派に枝々に雪を纏い、それはそれで美しい雪のオブジェと化している。立派な屋根を持つ、北信地方らしい旧家。寄棟の屋根のてっぺんに、家紋が付いているのがカッコいい。比較的桑名川の駅周辺の集落は消パイ(消雪パイプ)が入っている方だと思うのですが、それでも家々の路地には行き渡っておらず、家の周りに池から引いた水を流して積雪を防止しています。
雪に閉ざされた、茫漠たる千曲川の河岸段丘。時折通る除雪車の大きなモーター音の他は静謐極まりない、完全なるモノクロームの世界だ。この辺り、千曲川の右岸は野沢温泉村、左岸は飯山市になっていて、飯山線は飯山市側を、国道は野沢温泉村側を走っている。国道のバイパスが通じるまでは、飯山線側から千曲川の対岸に渡る橋は少なくて、対岸の七ケ巻や虫生の集落へは、渡し船を使っていたのはご承知の通り。
落雪覆いの下を、雪を蹴散らしながら163Dが走り去る。この日は日中の131Dと136Dを戸狩~森宮間で運休させて除雪を入れるという話になっていたので、この163Dが長野側から十日町に抜ける午前の最終列車。次の下り列車は午後1時過ぎになるのですが…除雪によって運休する列車の代行バスもないあたりが、この区間の流動が極めて少ない閑散区間である事の証なのかもしれません。
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