青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

憧れの街、温泉津へ。

2023年09月25日 17時00分00秒 | 温泉

(いい日旅立ち、西へ@大田市五十猛町)

小田のアウトカーブで珍しくJRの特急列車なんかを撮影した後は、国道9号線を日本海に沿ってさらに西へ西へ。夏の夕日は光線が強すぎて太陽がその像を結ばないけれど、雰囲気だけは日本海の海岸線沿いらしいトワイライト。山側には大田朝山道路など、ゆくゆくは山陰道になる地域高規格道路の無料供用区間はあるのだけど、この日本海に沈む夕日の雰囲気を眺めていたく、地道に国道を進んで行く。もとより渋滞などは考えられない人口稀薄地の山陰西部であり、そこそこの速度で流れて行くのでそうストレスはない。

レンタカーのハンドルを握りながら出雲市街から約一時間、国道9号線を看板の指示に沿って右に折れると、JAと同居した山陰本線の駅と駅前通りに「いらっしゃいませ 温泉津(ゆのつ)温泉」の看板がかかっていた。ここが私のアナザースカイ、じゃなくって(笑)、ここが長年「来たいなあ」と思っていた温泉地なんですよね。温泉津温泉。出来ればサンライズ出雲と気動車の普通列車で来たかったけど。

夕暮れ迫る温泉津温泉の駅前通り。なんつうか、「山陽」に対する「山陰」というのがすごくよく分かる。陰と陽の分かれ目なんて、中国山地に対してどっちにあるかだけじゃないかと思うのだけど、瀬戸内海と日本海、表日本と裏日本という俗称の例えを持ち出すこともなく、山陽と山陰は文字通りきっぱりと陽と陰に分かれている。陽光輝く山陽に対して、夕暮れにじっと押し黙るような人影薄い山陰の温泉地の街並み。仕出し屋、お宿、喫茶店。なんとも心の襞に染み込んでくるような街並みは、情緒と郷愁の坩堝のようでもある。

港へ向かう道すがらの造り酒屋と温泉街の路地。車を止めて見事な装飾の看板に見惚れていると、港の向こうに日本海の夕日が沈んでいく。そろそろ宿のチェックインの最終時間が近づいているというのに、なかなかに何もかもが趣深い温泉津の魅力に惹かれて進めないでいる。そこまでこの土地に憧れがあったのか・・・というのが自分でも驚くべきことで。

温泉津の温泉街のメインストリート。大きな伽藍のお寺の前にある、築150年の古民家を改装した宿が今夜のお宿。部屋の広さで言えば4.5畳もあるかないか、藍染めの布団が板の間の上に敷かれているだけのシンプルイズベストなお部屋。テレビもなく、荷をほどいて一息。窓の下の温泉街を眺めながら、ぼんやりと無聊をかこつような時間もたまにはいいものである。元々素泊まりしかやっていない宿ですし、食事も前もって調べたところ温泉津の街にはそう多くの大衆的な店がある訳でもなさそうだったので、夕飯は出雲市のスーパーで購入した和風弁当に地アジの刺身。プシュリとレモンサワーを開けながら、温泉津の街に夜の帳が降りて行きます。


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