青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

「天空」その価値。

2016年05月19日 19時00分00秒 | 南海電鉄

(「58」は「コーヤ」の58@観光列車・天空)

橋本~極楽橋間を走る南海電鉄の観光列車「天空」。2代目ズームカー21000系を祖とする改造形式である2200系を用いた車両ですが、高野山の山の緑をイメージした深緑に塗り直されています。勾配をモチーフにした意匠がシャープ。ズームカーと言うのは「険しい山岳区間から平坦区間まで、広い範囲をカバーする車両」を「広角から望遠まで、広い範囲を捉えるズームレンズに見立てた」愛称なのだそうですが、デビューした当時にはカメラのズームレンズはそこまで普及していなかったりとかで諸説あるようです。

 

駆け足での高野山参拝を終え、ケーブルカーで極楽橋の駅まで降りて来ました。ここで乗り換えるのが橋本行きの天空52号。普段は1号~4号の2往復体制ですが、GWですから臨時便も走ります。乗車には座席指定券(510円)が必要なので、極楽橋の駅の出札口で指定券を求めようとしたのだが、なんと当日券は山の上の高野山駅でしか扱っていないらしい(笑)。先に言ってくれよ。まあ発車まで席が埋まらなかった場合は車内のアテンダントから整理券を買う事は出来るので事なきを得ましたが。整理券っていうか車補だね。

 

発車間際までバタバタしながら乗り込んだ天空。2号車のほうは予約の団体さんが貸し切り状態なので、1号車に通されたのだがこちらはガラガラ。眺めの良い西側の窓に向かって並ぶ横掛けの椅子、なんだか伊豆急のアルファリゾート21みたいですね。通路を挟んで奥が一段上がっているのは映画館のようでなかなか気が利いています。アテンダントさんは若い女性車掌、案内もたどたどしいですがそこはまあ若いから良しとしてあげなきゃ(笑)。

  

天空ご自慢の「ワンビュー」と呼ばれる大きなワイドガラス。窓の外の高野の森を一枚の絵のように見せてくれます。五月の抜けるような青空へ向かって伸びる山腹の笠木集落、よくもまああんな場所に住んでいるものだ。ボンヤリと外を見ていたら、さっきのたどたどしい若い女性車掌さんがグッズの販売をしに来たので、ご挨拶がてら子供へキーホルダーをお土産に買う事にする。

 

とりあえず橋本まで行くと戻るのが面倒なので、九度山駅で下車。関ヶ原の戦いで西軍に付き、徳川家康の怒りを買った真田一族が流されたのがここ高野山九度山の地。折しも大河ドラマ「真田丸」にて観光需要の掘り起こしに一旗揚げようと九度山町も頑張っちゃってるようで、駅も真田一族のマークである六文銭に彩られてたり。近くに「真田ミュージアム」なんてーのも作っちゃってやる気満々ですが、アタクシそーいうのにはあまりキョーミないですね(笑)。


九度山の駅は、紀ノ川が作る僅かな河岸段丘上の平野から高野山へ向かっての登り口にあたります。駅を出ると真っすぐに丹生川の谷に沿って高度を上げていく高野線の線路。特急こうや3号が30‰に迫る坂道を上がって行きます。九度山は真田一族の歴史を持つ土地である他には富有柿の名産地でもあり、秋になると車窓からも鮮やかな色をした柿が実る光景が見えるのだそうな。


九度山駅を出る天空52号。天空車両の併結側のドアは展望デッキとして整備され大きな窓扱いになっているのですが、ここの許可を国交省にもらうのが大変だったんだとか。この天空用車両の改造については南海電鉄のHPに詳しいですが、某水戸〇センセーの車両ほどは大改造をしてませんし、内装もゴテゴテと凝ってませんし、クセの強いモノを置いていない分シンプルな良さはあると思うのだけど…正直ね、正直510円を払うのはビミョーかなあと(笑)。この天空を見てしまうと、〇戸岡センセーの車両も色々言われるけどあれはあれで客がカネを払うのに納得する何かは作ってたんだなあと。

橋本まで途中は九度山と学文路の2駅しか停車しないんですけど、他の駅にも停車して何らかのアトラクションを絡ませたり出来ないのかな。駅で停車して物販(飲食系)と絡めたり、もうちょっとスローに走ってくれてもいいと思うんだけどね。意外とこの区間もダイヤが詰まってるからスジが寝かせられないっぽくて難しそうなんだけど。せっかく特別な車両を作ったからには、もっと沿線と有機的に結合して価値を高められるような仕掛けがあったらいいんじゃないのかなあ。今のままだと「橋本と極楽橋の間を走ってるちょっと変わった電車」で終わってしまうような気がしますけど。
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