(画像:玄関)
「旅館伊藤」の玄関。
典型的な…と言っては失礼かもしれませんが、スタンダードな和風旅館でした。
特に目新しいものはなくても、トイレはきれいだったし、周辺の環境は静かだったし…
落ち着いた雰囲気の、すごく一人旅向きの旅館だと思います。
食事も広間じゃなくて別室だったしね。
翌朝は5時に起きて、旅館の前の道を矢岳高原へ向けて登る。
最近夜明けは早くなってきたとはいえ、朝5時はさすがにまだ真っ暗。
灯り一つない真っ暗の山道を車のハイビームを頼りに上って行ったのだが、
途中で野ウサギやカモシカが路上に出て来るのが怖い(笑)。
ライトがヤツらの目に反射してピカピカ光るのも怖いw
矢岳高原ベルトンオートキャンプ場からの展望。
時刻は朝6時、若干空も明るくなって来た。
条件はISO200、絞りF8で30秒露光。
夜明けの雰囲気を出したくてホワイトバランスを調整してます。
正面の霧島連山は雲の中ですが、川内川にかかる橋の灯りとえびの市の夜景を一望。
真ん中を貫くのが九州自動車道で、左側が加久藤トンネル方面。
ひとしきり撮影を楽しんで一時間ほど経つと、山を隠していた雲が下に降りて行く。
えびの盆地は雲海の中に入り、霧島連山が姿を現した。
吉松方面はとっぷりと霧に隠れ、山並みがあたかも霧に浮かぶ島々のように見える。
あ~、霧に浮かぶ島のように見えるから霧島なんだね。なるほど。
吉田温泉の朝。
吉田温泉のある昌明寺の集落は、南側に開けた里山の風景が続く。
山霧に朝陽がほのかに射すと、昨夜の雨に水を湛えた田園が朱色に染まる。
後ろは矢岳の山に向かって段々に棚田が伸びている。
まだ田植えには早いのだが、青苗の頃に来れば素晴らしい景色になっているんだろう。
棚田を見守る「田の神さぁ(たのかんさぁ)」と呼ばれる道祖神。
鹿児島県から宮崎県の西部に多い、農村信仰の一つだそうだ。
「田の神は冬は山の神となり、春は里に降りて田の神となって田を守り、豊作の神様として信じられて来ました」
(えびの市ガイドブックより)
古くより霧島の噴火に悩まされた農民が、豊作を願って作り始めたものなんだって。
どの田の神さぁもこんな感じの、適当に緩い感じのいでたちをしている。
あんまり石像に色を付けると威厳がなくなるように思えるのは気のせいか(笑)。
いかにもみうらじゅんとか「ワンダーJAPAN」あたりが好みそうなフォルムだと思うがいかに。
朝食を頂き宿を辞す。
別れ際に、今朝がたの矢岳高原からの雲海について話題に。
そりゃあ朝の5時から宿の玄関を開けて出て行くなんて何があったのかと思うよなw
申し訳ありませんでした(笑)。
「我々も見よう見ようと思うんですけど、なかなか時間がないですね」
一泊ゆっくり貸切で、お代は8,000円でした。
今日は昼までに宮崎空港へ戻ればいいんで、まずはのんびりと朝湯を楽しむこととする。
この宮崎県から鹿児島県にかけての県境付近は、どこを掘っても温泉が出るようだ。
国道268号線沿いはそれこそ温泉街道で、冗談じゃなく200mに1軒くらいのペースで温泉がある。
そのうちの一つがこの鶴丸温泉。
吉都線の鶴丸駅から徒歩30秒の好立地は、これからの時期18きっぱーにもオススメでしょう。
鹿児島県にはテイエム温泉もあれば、ツルマル温泉もあるのですね。
鶴丸温泉は、名前の通りに濃い茶色をしたツルツルの温泉が丸い湯船に引かれている。
常連同士が朝の挨拶と情報交換。
飛び交うお国言葉は、何言ってるか正直全く分からないがな(笑)。
だいたいの語尾に「~じゃ」とか「~っちょが」とか付いてるのが分かるくらいで。
話は分からなくても、「旅をしている」と言う非日常のアウェイ感が感じられていいものだ。
海外に行かなくても味わえる異国情緒だよなw
北の青森、南の鹿児島。
どちらも都から遠く離れた場所だが、
リーズナブルな街の温泉銭湯の充実と、そこに形成された温泉文化には共通点がある。
この鶴丸温泉も入浴料はたったの200円。
しかも最近350円から値下げをしたらしい…
儲け出るのか??
山はまだきの 春なれど 里は柳の 青めるを
ローカル気動車 薩摩路を トコトコ渡る 川内川
栗野~吉松間の川内川橋梁。
柔らかに柳が青く芽吹き始める様を詠んだのは、北上川を見た石川啄木でしたっけね。
青める柳と川内川と、詠み人は私。
吉松駅近くの線路際をフラフラしていたら見付けた「田の神さぁ」。
豊作の神様らしく、しゃもじとご飯茶碗を持って微笑んでいるのが分かります?
「シキ(甑)を被り、右手にメシゲ、左手にはお椀」と言うのが、
えびの市や湧水町周辺の田の神さぁのスタイルなんだとか。
あ、こっちの方ではしゃもじを「メシゲ」と言うらしいです。
田の神さぁの横を、吉都線の都城行きが走って行きます。
田の神さぁが願うのは、きっと今年も豊かな実り。
おあとがよろしいようなよろしくないような、肥薩日向の境旅です。