青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

川根小山櫻屏風

2019年04月20日 17時00分00秒 | 大井川鐵道

(暗き森に鮮やかに咲く@川根小山)

朝方訪れた川根小山、この駅に咲く桜の雰囲気が忘れがたく、再び戻って参りました。朝方の光に照らされた華やかな雰囲気とはまた違って、山影の薄暗がりに沈む森をバックに咲くその姿も良いコントラスト。見方を変えると、朝の光よりも暗い森をバックにしたほうが印象としては強いような気もします。簡素な丸太で組まれた待合室のみが残る川根小山の駅ですが、ここも沢間の駅みたいに昔は駅舎があったのかなあ。ここで狙うのは井川線の最終列車。17時前でもう最終列車になってしまうのが井川線。


列車接近を告げる構内のブザーが鳴り、トンネルの向こうから千頭行きの最終列車が川根小山の駅に進入して来ました。大きな桜を暗い森に沈めると、その姿がまるで花札のように浮かび上がります。DDのヘッドマークと合わせれば、それはまさに奥大井櫻屏風、といった風合い。


最終列車は井川線らしいDD先頭の客車5両の基本編成。小さくても機関車先頭の客レと言うのは風格を感じるものですが、残念ながら車内にほとんど乗客の姿はありませんでしたね。最終に乗っても千頭で金谷行きが1時間待ちになってしまうのがツライところ。本線の普通列車も減便するんであれば、もう少し井川線の接続には気を配ったダイヤがあっても良いと思うのだけど。ちょっと前までこの後にもう1本接岨峡温泉発17時台の最終区間列車があって、秋から冬の日の短い時期にはバルブっぽい撮り方が出来た覚えがある。まあ完全に観光鉄道と化した井川線に、景色の見えない日没後に列車を走らせる意味があまりないのかもしれない。

ただ、本線ではSLナイトトレインなんて銘打って「SL&旧客で夜汽車の旅」を味わうツアーも開催されてたりするんですよね。割とナイトアドベンチャー的な趣向で、夏の夜の井川線ツアーとかやってみても面白いのではないでしょうか。さすがに宿泊はしないと日程的にきつそうなので、そこは寸又峡温泉の旅館とタッグを組んだりしてね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

さくら、沢間で黄昏て

2019年04月19日 22時00分00秒 | 大井川鐵道

(千頭森林鉄道の跡@沢間駅)

千頭から井川線で2つめ、集落の最奥にひっそりと佇む沢間の駅。簡素なアスファルト敷きのホームがあるだけの、いかにも井川線らしい中間駅です。ちょっとホームから引っ込んだ位置に駅名標が立っていて、ホームと駅名標の間のスペースに若干の余裕があるのは、ここから千頭森林鉄道が分岐していた名残りでもあります。今の沢間の駅から林鉄の栄華の時代を偲ぶにはあまりにも静かすぎて、いささか想像力を巡らすのは難しいような気もしますが、それでも駅の奥には人知れず林鉄で使われていた骨材輸送用のホッパーの跡があったりもします。寸又峡の山奥深く、古くは帝室御用林とされた南アルプスの広大な山林から切り出される木材の積み出しのために、千頭森林鉄道は昭和44年まで運行されていたそうです。


そう言えば、沢間の駅には一応まがりなりにも駅舎があったのだが、いつの間にか取り壊されて、駅舎の跡地には無造作な屋根掛けの駐輪場を兼ねた待合場所のようなものが建てられていた。在りし日の沢間駅の駅舎の姿をご紹介しておきますが、この小さな可愛らしいピンク色の駅舎が好きだったんですよね。使ってる人はほとんどいなかったんだろうけど、いつもきちんと管理されていたように思う。


満開の沢間桜をくぐるように、千頭行きの列車が沢間の駅に進入して来ました。前照灯を輝かせたDDには「さくら」ヘッドマークが取り付けられていて、SLにもELにも負けないDDならではの魅力を振りまいていますねえ。線路に沿って続く桜並木に挟まれた道路が昔の千頭森林鉄道のレール跡で、そのまま町道に転用され、それが現在も沢間の駅への唯一のアプローチ路になっています。


思えば、この日はSL・EL・DDと大井川の機関車全部にさくらカンが取り付けられたんですね。この緑地に大きな桜の花弁をあしらったカンは「若葉カン」と呼ばれているのだそうだ。早くも山影に沈む沢間の集落、ちょっと甘く切ないような桜満開の春の夕暮れを、さくらカンのDD客レが行く姿。これが絵になる姿でなくて何と言うのだねと思ったりする。本線でSLとELを撮影していた人は多かったけど、井川線になると全く撮影している人がいませんでしてね。この景色を独り占めするのが申し訳ないような、素敵な時間を過ごさせていただきました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アプト陰陽

2019年04月18日 22時00分00秒 | 大井川鐵道

(光と影の中を@長島ダム~アプトいちしろ間)

午前のSL急行、午後のEL急行の撮影を終えて、再び井川線。家山から一気に大井川の谷を遡り、久しぶりに長島ダムのアプト区間まで行ってみました。家山を中心に桜と人でごった返していた沿線に比べて、井川線沿線の何と静かな事か。春の陽が山に隠され渓谷に深い影を刻む頃、山の向こうからホイッスルの音が聞こえて、桟道をED90にエスコートされたトロッコ列車が下って来ました。


長島ダムの堤体を望む、アプト区間の光と影。午後の遅い時間の列車ということもあり、車内に乗客の姿はまばら。それでも山峡に大きな電制の音を響かせて、慎重に列車は谷を降りて行く。このカットはアプトいちしろ駅へ向かう崖に沿った林道から撮影しているのですが、昔に来た頃よりだいぶ木が伸びてしまって撮影出来る構図がかなり少なくなって来ているように感じますね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ELさくら花舞台

2019年04月15日 17時00分00秒 | 大井川鐵道

(お立ち台のコーヒーブレイク@大和田・お茶ぼっこ)

大井川鐵道の大和田の駅から福用にかけて、ちょうど国道の下に茶畑と線路を俯瞰出来るポイントの横に、不思議なピラミッド型をした喫茶店があります。地元の方がのんびりと経営する「お茶ぼっこ」という喫茶店ですが、目の前がお立ち台になっていてこの日も代わる代わる同業者が三脚を立てています。かくいう私も午後のEL急行の際にここでアングルを作ったのですが、アングルも整えたし待ち時間もそこそこあったし、目の前を利用させてもらってるのもあるしでちょっと一服させてもらいました。


窓から入って来る大井川の川風を感じながら、ガリガリとご主人が挽いてくれるコーヒーと手作りのシフォンケーキ。正直撮り鉄に出てしまうとロクな飯も食わないので、すきっ腹にこの熱いコーヒーとふんわり甘いシフォンケーキは沁みる。値段も見ずに頼んだら、これでお代は300円というのだからビックリした。あんまりコスパばかり追求する人生も人のためになんないなあなんて思う昨今だけど、これで利幅とか大丈夫なのか若干心配になるのでありました。


さ、2本目のさくらまつり臨の回送。再びE34先頭。家山から新金谷まで客扱いをしないで回送で走るのだから別にE34に特別なあしらいをしなくてもいいのだけど、そこは天下の大井川鐵道。この「さくら」カンを付ける事によって、回送列車をただの回送にはしないのである。さくらまつりを盛り上げる、E34のさくらカン。そうまで舞台を作られたら、ガツンとヘッドマークを強調して正面打ちにするのがマナーというものでありましょう。大井川らしい木製の架線柱を絡めて回送客レの妄想列車・特急さくら号新金谷行き。


零れ落ちそうな家山の桜を合わせて。下から煽って構図にグッと広角でハメるのってなかなか難しいんだけど、通過速度がそこまで速くないので助かりました。平成22年くらいに西武から移籍して、どうなるのかどうするのか分からないまま千頭の側線で放置プレイとなっていたのを知っているので、一昨年に劇的に復活してからの活躍には胸が躍る。早くも大井川のスター軍団の仲間入りを果たしたE34の「29-7 35-7 新金谷車両区」の書き文字に、今後一層の活躍を期待しましょうか。


C108+E34のコンビはこの日、新金谷~家山を3往復したのですが、午後の1往復はSLの位置を付け替え新金谷→家山間をEL急行として運行。EL先頭の客レを見るのは去年の夏に南海ズームが検査に入って車両不足に陥った際、SL急行の補完として走った時以来です。さくらカンは金谷側にしか付けていなかったと見えてスッピンのいでたち、パンも金谷側だけの片パン状態で走って来ましたが、これはこれで交流電機の客レと割り切ればそれはそれ。まずは最後尾に付いたSLを森陰に隠して、あたかもEL単独牽引的な構図で一枚。


広角側は、川根のお茶畑と茶農家を入れてもうワンショット。このお立ち台には平日にもかかわらず最終的には20人くらいのマニアが並びました。五和を出ると西側に山のある大井川の右岸を走って来ますから、家山止めの列車は午後の光線を考えるとこのポイントが人気になるのも分かるような気がしますね。GWはお茶畑に新芽が伸びてグリーンもより一層鮮やかになると思うので、またEL急行をやるなら参戦したいところです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

桜川根の煙路

2019年04月14日 17時00分00秒 | 大井川鐵道

(桜花薫煙立ち昇り@家山橋から)

神尾で撮影したかわね路号は、家山で若干の停車時間を持ちます。SL通過に観光客が盛り上がる、家山のさくらまつり会場を慎重に抜けて先回り。後続のさくらまつり臨を考えるとあまり深追い出来ないので、追っつかなかったら諦めるくらいのイメージで家山橋へ。幸いにも橋の上に到着したのがちょうど家山を発車するタイミング、駅の方角から大きな汽笛が聞こえて、空に向かって高々と黒煙が上がりました。


桜の里に薫煙をたなびかせ、SL列車が家山を後にします。発車したかわね路号が、家山の杉田屋旅館前のストレートへ差し掛かったところがシャッターチャンス。元々C56は地方ローカル線向けに作られた小回りの利く機関車。そんなに多くの車両を牽引する事は出来ないのですが、後ろの補機の力を借りながら、精一杯の力を振り絞って獅子抜里の勾配へ。


かわね路号が行った後は、新金谷を20分後に出たさくらまつり臨が続行で走って来るので忙しい。朝に比べていくらか開花が進んだような気がする家山川でもう一度。何度も同じ場所で撮影するのは能がないのだが、何だかんだ川っぷちの桜が一番ボリュームがあったんだよなあ。春の陽射しのトップライトに桜が輝く中、家山川の橋梁を渡って行くC108。寝台特急さくらの佐世保行きは、早岐から佐世保までをC11が牽引していた時代もありましたからね。本日はお休みだったようですが、C11が牽引すれば我々世代より上のオールドファンが涙ちょちょぎれる姿になったのではないかと…

色んな世代の鉄道ファンの涙腺を緩めさせる所蔵品を持っている大井川鐵道、唯一無二の会社です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする