(大河のほとりの隠れ里@神尾駅前)
大井川SL2本目。1本目は家山の鉄橋→返しは高熊の踏切→2本目は神尾の駅前へやって来ました。撮影者は基本的に桜が沿線に植わっている場所に展開していたようですが、さすがにここで撮る人はいなかったと見えて私一人。神尾は、大井川を遡って来た線路が地蔵峠のトンネルに入る直前にある駅で、並走する国道は線路の遥か上。国道から細い山道をクネクネクネクネと降りた集落のどん詰まりにあって、アクセス的にもあまり宜しい場所ではありません。忘れ里のような神尾の最奥にある駅は、山の木々の芽吹きとともに、ひっそりと春を謳歌していました。
果たしてこの駅を日常的に利用しているのは何人くらいいるのだろうか。テレビの番組じゃないけど、篠山紀信の息子が思わず調査しに来そうな秘境駅である。千頭に向かって右側は大井川、そして前にぽっかりと穴が開いているのが地蔵峠のトンネル。国道が走っているのはトンネル上の峠の尾根のさらに上の方なので、かなりの高低差がある。金谷から家山に向かって走る国道473号も地蔵峠の隘路がネックになっていて、改良工事はやってますけど単純に走るだけだったら対岸の県道64号の方がスムーズだったりしますね。
大井川を渡る風に木々がざわめく神尾の駅。お昼時になって光線の方はトップライト、SLを撮影する条件としては難しい感じのコンディション。2本目のSLは千頭まで行くかわね路号、タッタカタッタカタッタカタッタカ…という独特の走行音が聞こえてきました。仔馬のギャロップと呼ばれる独特のブラスト音はC56、焦げ茶色の旧客を引き連れて地蔵峠のトンネルに向かいます。
青空に透ける神尾の桜。そこそこの老木と見えて花付きに勢いはない様子ですが、それでも今年も精一杯咲いて神尾の里の春を彩っている。相当テングスやツタにやられて栄養取られちゃってるっぽいから、取り除いてやるだけでももう少し見栄えも花付きも良くなるのかもしれないけど、なかなか手入れまで難しいのかな。雑木を刈り、暮らしの近くにある里山を保全する人たちがいないのが現在の日本の中山間地の現状でしょうか。
川風に汽笛一発、地蔵峠の上り勾配に挑むかわね路号。最後尾のE101の大きな吊り掛け音がトンネルに消えて行きます。
さあ、次はどこで撮ろうか。