tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

奈良市職員養成塾(10年度第3回)で講話

2010年08月24日 | 観光にまつわるエトセトラ
8/18(水)午後6時30分から、奈良市役所6階の研修室で、講話をさせていただいた。市の職員さんを対象とした自主参加の研修会「奈良市職員養成塾」の本年度第3回である。受講者は20人あまり。約80分の講話のあと、約1時間のグループワークがあり、終了予定は午後9時だという。忙しい勤務のあと、またせっかくの早帰り日(水曜日)に研修とは、奈良市の職員さんは大変だ。

市長公室人事課のS係長の司会で、予定通り研修がスタート。まずは私の講話(基調講演)で、タイトルは「再発見!奈良の魅力…『近き者よろこび、遠き者来たる』の奈良へ」だ。私の講話は、たいてい同じタイトルだが、内容はリクエストに応じて変えている。話の概要は以下の通りである。


写真は、人事課のMさんの撮影。有り難うございました!

・平城遷都1300年祭は絶好調。この調子で、来年以降も奈良に観光客を引きつけよう。
・1300年祭のアンケートで、ボランティアや職員の応対、つまり「奈良のもてなし」が高い満足度を得ていることが分かった。
・シルバー層 や市民ボランティアは地元の宝(人財)であり、かくれ資産。これを活用しない手はない。
・奈良の魅力は奥深い。観光客にきちんと紹介できるよう、もっと地元のことを勉強しよう。当面の目標は、奈良まほろばソムリエ検定(奈良検定)2級だ。
・「歩いて巡る奈良」の魅力、「奈良に うまいものあり」を前面に打ち出そう。
・ブログやツイッターで、奈良の見どころ・食べどころを情報発信しよう。
・奈良県民は謙虚すぎて損をしている。もっと 奈良の魅力を積極的にPRしよう。
・講話のサブタイトル「近者説 遠者来」(近き者よろこび、遠き者来たる)は、論語(孔子)の言葉で、最近、同僚に教えてもらった。地元の人が楽しんでいると、遠くの人もそれを聞きつけてやってくるという意味だ。2011年以降も楽しいイベントを展開して、遠くから観光客を引きつけなければならない。

東京からわざわざ史跡頭塔(ずとう・特別公開)に来られた方が、「頭塔のことを、町の人は誰も知らなかった」と苦言を呈していたという事例も紹介した。そこで「奈良市の職員さんなら、せめて奈良検定2級程度の知識は身につけよう」とハッパをかけた。

市の観光パンフレットには良いものが多いのに、ネットに載っているものは少ない。「観光客はインターネットを見てやって来る。もっとネットで情報発信しよう」と呼びかけた。

絵とき「大和名所図会」という副題のついた『奈良名所むかし案内』(創元社)という本を読んでいると、今の観光地は江戸時代の『大和名所図会』とほとんど変わっていなくて愕然とした、というエピソードも披露した(個人的には、大仏前ではなく、大極殿と朱雀門のある「平城宮跡」こそがポスト1300年の奈良市観光のメッカになりうると考えている)。

「奈良にうまいものなし」という言葉は、奈良の人間が言い出した言葉である。「『昔から奈良はうまいものなしですので、こんなものしかありませんが…』と言って、美味しいものを出したのだ。今の時代、そんな謙遜は、百害あって一利なし。もっと奈良の良さを前面に、ストレートに打ち出すべきである…。



いくつか質問もいただいたので、ここでまとめて紹介する。
Q.観光について「市役所にこうしてほしい」という要望は?
A.観光交流課と観光協会がタッグを組み、率先して「おすすめプラン」を作って売り込みに行ったり、観光情報を発信したりと、もっと積極的に動いてほしい。

Q.奈良の良いものは、なぜ埋もれている?
A.それはひとえに私たち地元民が、発掘も情報発信もしないから。阿修羅像だって正倉院宝物だって、最近まで埋もれていた。

Q.奈良の豊かな観光資源と新しい観光(ニューツーリズム)は、どのように組み合わせれば、魅力を創り出すことができるか?
A.観光の「コーディネート役」が必要だが、組み合わせは無限にある。県全体だと、奈良→飛鳥・藤原→葛城→吉野という歴史めぐり。春日山原始林→大台ヶ原→十津川の自然体験。奈良市内だと唐招提寺、喜光寺、法華寺、般若寺という花の寺めぐりなど。禅寺(松と砂の庭)の多い京都と違い、奈良には花の寺が多い。これを活用しない手はない。

Q.ブログを書くのに気をつけていることは?
A.奈良の悪口を書かない、不確かな引用はしない(きちんと調べてから引用する)、「身辺雑記」は書かない、少なくとも1日おきに記事を更新する。

Q.奈良検定1級受験者用の「仏像」「古墳」の参考図書は?
A.仏像のお薦めは、紺野敏文著『奈良の仏像』アスキー新書。写真中心の本では『奈良大和路の仏像』JTB刊。しかし最近では『平城京の仏たち』東京美術刊をはじめ、たくさんの仏像本が出ているので、書店で実際に手にとり、フィーリングの合うものをお求めになるのが良い。古墳では『大和の古墳を語る』六興出版刊が、分かりやすいし多くの古墳をカバーしている良書だが、絶版なので古本屋で探すしかない(私はアマゾンの古本屋で見つけた)。

あとになって保育社の『日本の古代遺跡シリーズ』を思い出した。奈良は北部(4)、中部(5)、飛鳥(7)の3冊。一冊2000~2500円だが、ソムリエ合格まで使える本である。なお奈良検定1級は、公式テキストを隅々まで読むのが一番良い勉強法だ(発展学習として、またソムリエを視野に入れて詳しい本を読んでおくのは良いが)。過去問からも2~3割出題されるから、こちらも押さえておいてほしい。主催者の「認定支援セミナー」は、必ず受講すること。



さて、5分間の休憩をはさみ、午後8時から「ワールドカフェ」というグループワークが始まった。いただいた資料には《メンバーの組み合わせを変えながら、4~5人単位の小グループで話し合いを続けることにより、あたかも参加者全員が話し合っているような効果が得られる会話の手法》とある。オープンカフェでコーヒーを飲みながらダベるように、メンバーの組み合わせを変えながら、気軽にブレーンストーミングをするのである。

奈良の観光振興に関し、3つの切り口から話し合い、最後に全員がカード型のポストイット(付箋)にキーワードを書き、ホワイトボードに貼りつけて発表する。私の目に止まったカードは


紙に落書きを残しておくと、メンバーが変わった場合に便利なのだ

・顧客(観光客)のターゲットを絞る(富裕層とか若い女性とか=マーケットセグメンテーション)
・京都と明確な差別化を図る(商業の街と文化の町)
・「祇園祭を見て、奈良に泊まろう!」キャンペーン
・2011年に、せんとくんと全国ツアー
・「奈良の語り部」を育てる
・地元民しか知らない奈良の顔(早朝、夜など)を地元民がガイド
・暗闇を楽しむ(夜の何もない奈良公園を楽しむ)
・寺で(精進料理を)食べる夜のツアー
・ガイドツアーと「奈良のうまいもの」の店のコラボ
・若手シェフを誘致し、奈良の「食」をアピール
・東大寺より、「平城宮跡」を目玉に
・奈良の花の名所めぐりツアー
・「恋がかなう仏像」など、ストーリーを作る
・鹿の赤ちゃん抱っこ体験(※小鹿に人の匂いがつくと親鹿が面倒を見なくなるので、これはダメだそうだ)
・歩く前に荷物を置いたり、歩いたあと汗を流せる施設
・レトロな銭湯をPRする
・ウンチクが楽しい奈良(大人向けに)
・小学生向け「奈良検定ジュニア版」


意外と、他市町村に住んでいる職員さんが多かった

楽しいアイデアが、こんなにたくさん集まった。さすがに奈良市には、素晴らしい職員さんがいらっしゃる。お開きは9時半を回っていたが、皆さん晴れ晴れとした表情で家路についていた。

翌日、人事課のMさんから、研修時のアンケート結果の一部(主なコメント)を見せていただいた(匿名)。かいつまんで紹介すると

・地元の悪口は言わない、良いところを見つけてPRしたい。その技術としてパソコンもっと活用できるようになりたい
・「奈良の悪口を言わないで」には同感
・tetsudaさんは本当に奈良が好きで、それを多くの人に発信されていて、感動しました
・「奈良の寺には花がある」という言葉が印象的。今あるのものに、違った角度から光を当てることが大切
・「差別化」「奈良の独自性」という言葉が印象的
・「奈良の観光地は、江戸時代から変わっていない」は印象に残った
・奈良をもっとよく知る必要性を感じた
・市の職員として、奈良検定2級は取っておこうと思った
・ブログの『奈良検定の要点整理』を見ながら、奈良検定2級に挑戦します



私にとっても収穫の多い研修会となった。若い人や、観光の仕事をされている職員も多かったので、ぜひ今後の参考としていただきたい。

このような機会を与えてくださった人事課のS係長、Mさん、観光交流課のSさん、有り難うございました。

※トップ写真は浮見堂(奈良公園内)。05.7.24撮影
コメント (2)
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