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大和郡山の金魚(産経新聞「なら再発見」第88回)

2014年08月11日 | なら再発見(産経新聞)
産経新聞奈良版・三重版ほかに好評連載中の「なら再発見」、今回のタイトルは《大和郡山の金魚 夏の一大イベント「金魚すくい選手権」》、執筆されたのは、NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」会員で、大和郡山市生まれの石田一雄さんである。では、全文を紹介する。
※トップ写真は、柳澤神社の金魚品評会(大和郡山市城内町)

 大和郡山市のキャッチフレーズは「平和のシンボル、金魚が泳ぐ城下町」。金魚は大和郡山市のシンボルだ。
 金魚池の並ぶ風景は他では見られない独特のものだ。電車で郡山駅を通り過ぎる際に車窓から目をこらすと、駅の前後で水田より小さくコンクリートで区切られた金魚池をいくつも眺めることができる。
 実は、私は「わたしは、あんたの命の恩人や」といとこから言われ続けてきた。



 私は近鉄郡山駅からほど近い台所町(現在の南郡山(みなみこおりやま)町)で生まれた。家の裏庭からは仕切りもなく、地続きで隣家の金魚池に行けた。庭で遊んでいて誤って池に落ちた私を、近くにいた8歳上のいとこがひっぱり上げて助けてくれたらしい。当時私は3歳ぐらいでほとんど記憶にないが、祖母に怒られながら真っ裸にされ、急いで沸かされた風呂に入れられたことを、かすかに覚えている。
 金魚池が町中にも数多くあった頃には、大和郡山の子供は1度や2度は同じような洗礼を受けていたようだ。池は水深40から80センチと浅いのだが、小さい子供にとっては危険な存在で、緑色の藻で濁り臭いのする池に落ちると、ケガはなくても服も体も大洗濯という一大事になった。
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 中国原産の金魚が日本に初めてやってきたのは室町時代(1502年頃)といわれる。大和郡山へは江戸時代、柳澤吉里が甲斐から国替えされた際に家臣が持ってきたと伝えられる。
金魚の養殖は幕末の頃からはじまり、明治維新後は収入を失った藩士や農家の副業として盛んに行われるようになった。最後の藩主、柳澤保申(やすのぶ)は養殖を奨励するとともに、金魚の研究所を設立し、品種改良を行うなどの支援を行った。
 自然条件としても周辺に農業用溜池(ためいけ)が数多くあり、そこで発生するミジンコ類が金魚の稚魚の餌に適していたことなど、有利な条件が備わっていた。



金魚池の広がる風景(大和郡山市新木町)

 昭和40年代には、全国の金魚生産高のうち50%とトップシェアを占め、全盛期を迎えた。最近は都市化に伴う水質汚濁などの環境悪化などで生産量は減少したものの、生産高は全国第1位、養殖農家約60戸、養殖面積約90ヘクタールで、年間金魚約6千万匹、ニシキゴイも約2万匹が販売されている。
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 金魚の町で実際に泳いでいる金魚はどこで見られるかというと、近鉄郡山駅周辺ではまず市役所だろう。庁舎内にいくつも置かれた水槽の中でさまざまな種類の金魚が悠然と泳いでいる。柳町商店街の「きんぎょCafe柳楽屋(りゅうらくや)」では、水槽の金魚を眺めながらランチが味わえる。郡山八幡神社の近くには「金魚電話ボックス」が立っている。ボックスをそのまま利用した水槽の中を色とりどりの小さな金魚が大量に泳ぐ姿が見られる。
 やまと錦魚(きんぎょ)園が設置した「郡山金魚資料館」(新木(にき)町)では金魚に関する歴史資料やさまざまな種類の金魚、養殖の様子が見学でき、その場で買うこともできる。周辺を散策すれば、金魚池が広がる風景も見られる。
 金魚に関する行事としては、毎年4月上旬郡山お城まつりの時期に柳澤神社(城内町)で開かれる「金魚品評会」で、養殖家自慢の逸品が出展される。夏には全国的にも有名な「全国金魚すくい選手権」がある。今年は市制60周年と20回目を記念して参加者の定員を4200人と大幅に増やし、8月23、24両日の2日間にわたって開催される。
 会場は市総合公園施設多目的体育館「金魚スクエア」(矢田山町、見学自由)。小赤(こあか)という小さな金魚をそれぞれ1千匹入れた水槽がずらっと並び、それを囲んで選手たちが熱戦を繰り広げる会場を一度のぞいてみてはいかがだろう。(NPO法人奈良まほろばソムリエの会 石田一雄)


うーん、なるほど。石田さんが大和郡山の「金魚」をテーマに「なら再発見」を書かれると聞き、「金魚だけであの1300字のコーナーが埋まるのだろうか」と心配していたが、全くの杞憂だった。金魚が楽しめるカフェや電話ボックス、資料館。品評会に金魚すくい選手権。幼いときに金魚池に落ちたというエピソードなど、楽しい話が満載だった。

石田さん、興味深いお話、有難うございました!

コメント
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