tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

柿の葉ずしを極める(第13回なら観光サロン) by 平井宗助さん

2015年01月17日 | 奈良にこだわる
平城遷都1300年を迎えた2010年から、「なら観光サロン」という有志の会を開催している。初回のテーマは「県民は、奈良県が嫌い?」、そのあと「記紀・万葉プロジェクト」「天誅組とは何か」などのタイムリーなテーマで県内外から講師をお招きし、観光振興のモトになる知識を仕入れ、あわせてメンバー間の交流を深めてきた。
※写真は全て1/8の「第13回なら観光サロン」で撮影

メンバーは、地元で観光振興に携わる団体の関係者や、奈良県庁・奈良市役所の職員さん、南都銀行の行員やOBなどが中心だったが、最近はNPO法人「奈良まほろばソムリエの会」の会員にも声をかけ、たくさんのご参加をいただいている。先月(12/3)は、「奈良の醤油はおいしいらしいで」をテーマに御所市から片上裕之さん(片上醤油)をお招きしてお話をお聞きするとともに、いろんな醤油を梅本とうふ店の豆腐にかけて、試食させていただいた。

そして第13回となる今回(1/8)は、柿の葉ずし「平宗」の平井宗助さん(株式会社柿の葉ずし代表取締役社長)をお迎えし、「柿の葉ずしを極める」のテーマでお話をいただいた。当日の内容を星乃勝さん(NPO法人スマート観光推進機構 理事長)がコンパクトにまとめて下さったので、以下に紹介する。



8日は、なら観光サロンに参加して柿の葉ずし「平宗」の平井宗助社長のお話をお聞きしました。
【 要 旨 】
柿の葉ずしの「平宗」は、江戸時代末期、文久元年(1861年)に、奈良県は吉野上市村にて創業された歴史を持っておられます(幕末、天誅組が活躍した頃の創業です)。江戸時代中頃より夏祭りの「ごっつお」(ご馳走)として吉野の家庭で作られていた柿の葉ずしが、遠来のお客様に振る舞う吉野の名物として商品化されていったようです。

河瀬直美監督の「つつむという優しい文化」の映像もご覧ください。


熊野の鯖は吉野の山間では貴重な海の幸でした。腐らないように浜塩をされて「しょっかろう(塩辛ろう)」なった鯖をおいしく食べられるように、薄く切ってご飯に載せ、身近にあった柿の葉で包んだものが「柿の葉ずし」です。すし桶に入れ重石をして2~3日、サバの塩気や旨味がご飯の甘みと馴染むことでまろやかで優しい味になります。さらに柿の葉の香りとタンニンが鯖の生臭さを消し、殺菌作用もはたらく保存食となります。この過程の乳酸発酵が独特で芳醇な味わいを作るようです。

そもそも寿司は保存食の「なれ鮨」として生まれます。それが、生食の魚が食べられるようになり、江戸前寿司のような形のものに変化していきます。山深い吉野の里等には昔ながらの「なれ鮨」「柿の葉ずし」が残っていたそうです。谷崎潤一郎も「贅沢なもの」として絶賛しています。(説明を受けてなるほどと思うとともに、保存・流通の発展により、人の食味や嗜好も変化していることを実感しました。また「なれ鮨」を作るためには、手間ひまがかかっていることも知りました。)



平宗では、奈良県産のお米「ヒノヒカリ」を使い、鯖は11~12月に水揚げされる脂ののったものを厳選するそうです。鯖は、ある程度大きくならないと脂がのらず、最近は中韓の漁船も進出するため漁獲高も減っています。またノルウエー産の鯖は脂がのりすぎて旨味がでないそうです。柿の葉も8月以降は固くなるので、6~8月に取り入れたものを使用するなどこだわりを持って作られています。

今や「吉野のごっつお」は大阪や東京のスーパーでも購入できるようになり、発酵という部分はほぼその面影はなくなり、単に「柿の葉にくるまれた押し寿司」となってしまい、本来の柿の葉ずしの価値が伝わりにくくなったとのことでした。また、柿の葉ずしの具は鯖と鮭が多いですが他の具材も多いようです。九度山町(和歌山県伊都郡)の柿の葉ずしは、シイタケ、かまぼこ(ナルト)、干しエビなど最も具材の種類が多い地域とのお話もありました。



上が「こころ」(無添加。麹菌で糖化させている)、下はうま味調味料を使った通常の柿の葉寿司

昨日(1/8)は、一般に販売されているうま味調味料で調理された柿の葉寿司と、無添加で、麹菌で糖化させた鯖(糀鯖)を使った柿の葉寿司「こころ」を食べさせていただきました。「こころ」の柿の葉ずしは、甘みがあり、奥深い味わいだと感じました。食の原点の1つ「寿司」の歴史と味わいを学ぶ貴重な時間になりました。平井社長、良いお話と美味しい柿の葉ずしをありがとうございました。

ご講話のあとは、平宗さんの「倭膳たまゆら」から配達していただいた美味しいお料理に舌鼓を打ちながら、全員に自己紹介(自己PR)していただき、楽しいひと時を過ごした。NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」の啓発グループでは、「奈良のうまいものを極める会」と銘打ち、地元の名物を食べ歩いている。しばらくは、この会とタイアップして、「奈良のうまいものを極める観光サロン」として、「食」シリーズを続けることにしたい。

「第13回なら観光サロン」にご参加下さった皆さん、有難うございました!また次回をお楽しみに。
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